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0.はじめに

 第1回コラムでは、ロイヤルリムジンタクシーの事件を振り返り、不況下における解雇が有効とみられるための「整理解雇の4要件」を確認しました。
 今回は、この4要件にロイヤルリムジンタクシーの事件を当てはめるとどうなるのか?を検証してみたいと思います。

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1.人員整理の必要性は、経営サイドの判断が尊重される

 4要件のうち「人員整理の必要性」は、倒産必至と思われる場面に限られません。
 企業の運営上やむを得ないという経営サイドの判断も認められるとされており、売上が激減する中で人件費を賄う余力に乏しかったロイヤルリムジンタクシーに関しても人員整理の必要性は認められそうです。

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2.解雇回避の努力には全力を尽くさなければならない

 一方「解雇回避の努力」については、解雇により職を失うという重大性を踏まえた慎重な判断が必要です。
 具体的には、企業において経営改善の努力を尽くし、希望退職の募集や一時帰休など解雇以外のあらゆる措置を検討し、実施できるものは実施することで解雇を回避しようとしていたかが求められています。

 この点、同社において解雇通知に至るまでに何らかの措置を講じていたかが問題となります。この問題を解くヒントとして、同業他社の動きをみてみましょう。
 都内で営業を続ける同業他社では、運航台数カット(運行車両の売却も含む)、ドライバーの一部を休業するといった方法でタクシー1台あたりの売り上げを確保しつつ、乗務員への補償を雇用調整助成金で賄う形で解雇を回避しています。

 これらの解雇回避措置は、ロイヤルリムジンタクシーで実施できなかったのでしょうか?

 もし、実施すべきことを実施せずに解雇を選択したというならば、法的には解雇回避の努力を怠った、と評価されるでしょう。

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3.従業員に対する協議・説明が整理手段のポイントになる

 「整理手段の妥当性」は、従業員に対し、事前に協議又は説明交渉を尽くしたかによって評価されます。
 これは会社の義務とされており、結果的に解雇が避けられなかったとしても、この義務を果たさないままで行った抜き打ち的な解雇は無効とされます。

 同社の解雇通知は解雇日の前日という性急さでした。

 多くのドライバーは事前に説明を受けておらず、「(解雇が経営判断上やむを得ないとしても)社長のやり方には強い不信感を感じる。景気が回復してもこの会社に戻りたいとは思わない。」と、痛烈な意見が同社社長に向けられる場面もありました。

 このような状況からは、法的に解雇が無効とみられる可能性が高いといえます。

 従業員の経済的な苦労を考えるとき、同社社長が言うように、早い段階での解雇から失業手当の受給につなげた方がよい場合もあるでしょう。
 しかし、人間は経済的理由だけで仕事をしているのでしょうか?会社の事業に共感し、その一員として仕事に向き合う…金銭に換えられない「働きがい」という価値もあります。それが突如として断ち切られてよいのか。そのことが問われているように思います。

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この記事を書いた人

今坂 啓

上場企業社員(経営・財務戦略系以外)

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社会保険労務士有資格者として、人事労務の第一線にて実務を担っております。

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