• 投稿する

一覧へ戻る
この記事の目次を見る

今回は事業承継・売却についてである。

昨今は経営陣の高齢化や引退など、地方の中小企業でも経営者が事業承継などについて悩んでいる方も多いであろう。

過去に起業し創業者として事業を営んできた際に、自分が引退する際の後継者や承継はどうするか、という命題は必ず発生する。特に創業された会社に思い入れがあったり、地域経済や雇用に貢献しているなど存在意義が大きい場合は後継者や承継先を誰にするかというのは重要な経営上の意思決定になる。最近では競合他社やプライベートエクイティファンドなどの金融投資家などが承継先として選ばれることが多くなっている

なぜ承継で悩むのか

菅政権のもとM&Aを促進する政策、中小企業の構造改革を後押しする政策が検討されている中で、中小企業の事業承継に絡むM&Aは注目を集めている。実際に中小企業庁がそのようなガイドラインを出してもいる。

事業承継先・譲渡先に関しては、ふさわしい経営能力・財務基盤、事業にコミットする覚悟を備えているかということも重要になる。

親族を跡取りに据えたいと考えていても、当の本人が納得しなければ経営はスムーズに委任することは難しく、親類がリスクをとって会社を経営するという意思決定や決断に応じてくれるとは限らない。

いままでの顧客や取引関係をそのまま引き継いで経営を続けていくという時に、現任の経営者が引退した場合にどのような対応をするか、契約上の株主変更に伴う論点(チェンジオブコントロールなど)がないか、現在の経営者が経営の第1線から引いた場合に、その後は経営に一切口出ししないのか、会長として影響力を持ち続けるのか、という色々な問題が生じる。

そのため、承継先としては自社の経営を行う覚悟と能力・スキル、関連する業界に対する知識や経験を有しているかどうかは最重要検討事項であるといえよう。最近は地方における中小企業の経営の担い手であるマネジメント層の高齢化や、経済や流通の東京など首都圏への一極集中の傾向があるので、日本国内における中小型M&Aの事業承継は課題になっており、日本M&AセンターなどのM&Aの仲介業者がこの分野で最もバリューを発揮していると思われる。

適切な譲渡先の選び方

では、事業承継・経営陣探しは実際にどのように進めていけばいいか。

既に創業家・起業家として経営されている方であれば、優秀と思われるプロフェッショナルやプロ経営者、知り合いを頼って連れてくることも可能であろうが、通常の経営実務の中でこのような後継者探しは非常に手間がかかる。

そのため、自分の知り合いのみに頼らず、外部のプロフェッショナルを交えながら探すことが重要であろう。最も現実的な事業承継の方法は、M&Aを利用した譲渡である。

実際にM&Aをしたことがある経営者であれば、証券会社、会計事務所、M&A仲介業の会社のプロフェッショナルは、自社が他社を買収する際にターゲットを探していくのにサポートしてくれる重要なパートナーであるが、このようなバイサイドのM&A以外にも、会社売却・事業譲渡するセルサイドのM&Aでもその威力を発揮する

中小企業のサイズ感であれば、M&Aの仲介業やM&Aマッチングプラットフォームに登録し、「会社売却・事業承継のニーズがあればご連絡ください」と書いてあるM&A担当者に連絡をするのが最初のステップになる。

実際に営業担当者に会い、自社の事業、創業からの歴史、事業承継を検討しているが適任な譲渡先が見つからないので、自社の売却も含めてベストな買手を探すのをサポートしてほしいと伝えれば全身全霊でサポートしてくれる(このようなM&A仲介会社のプロは歩合制である)

初期的な相談から案件化する際に売却する際はどのような買手が考えられるか、希望の売却価格はあるか、売却先に希望はあるか(例:プライベートエクイティファンドはだめ、など)、経営陣は売却後も経営陣として残る意図はあるのか、株式の持合や持分などはどのような取り扱いにするか、という詳細事項を詰めていく。

プロ経営者の活用

プロ経営者の活用も事業承継において重要になる。

外部からプロ経営者を紹介してもらうには、普段懇意にしている会計事務所、税理士事務所、法律事務所もしくは、人材のプロフェッショナルであるヘッドハンターのコネクションを利用して紹介してもらうことが現実的であろう。もし、新たな株主がプライベートエクイティファンドであれば、プロ経営者を紹介し経営陣に加えてくれることもある。

経営している会社や事業の分野・セクターや製品・サービスなどの特徴から判断し、関連する職歴・経験・知見を有している人や、大企業やプロフェッショナルファームでの経験や特定の分野での専門性がある人を紹介してもらい、かつ人柄や社風にマッチすることを重視して探すことが適切である。

実際に、プロ経営者を最もうまく活用しているのはプライベートエクイティファンドで、彼らはプロ経営者人材のリソースから最も事業の経営に適している人を選定することで、承継した企業の経営を任せていることが多い。

プライベートエクイティファンドを活用

事業会社以外にも有力な譲渡先・事業承継先として、プライベートエクイティファンドがある。

プライベートエクイティファンドは未上場会社、またはリストラやカーブアウトに伴い切り出された大企業の一部門に対して投資し、3-5年の投資期間を通じて企業価値を向上、IPOもしくは第3者に売却することを目的にしているファンドである。MBO(マネジメントバイアウト:Management Buy Out)による非上場化も行うことができ、大手のファンドでは上場廃止により企業価値向上、再度上場させエグジットする事例もある。

昔のイメージだとプライベートエクイティファンドに対してハゲタカのような印象を持つ人もいるが、最近では様子は全く異なってきており、むしろ事業承継のニーズをくみ取ったり、中小企業の成長を加速させることができる重要なパートナーとして選ばれていることが多い。

日本で有名なプライベートエクイティファンドだと、アドバンテッジパートナーズやユニゾンキャピタルなどが挙げられる。外資系ではカーライル、ベインキャピタル、KKR、CLSAなど。

このように外資系のファンドも含め日本に多く参入しているが、事業承継や後継者探しにより事業売却が必要な中小規模のM&Aや買収は、ミッドキャップからスモールキャップの投資になることが多い。

このような規模感を得意とするプライベートエクイティファンドは最適な買手候補先になることが多く、ファンド側も事業承継ニーズのある投資先を探し、M&Aの仲介、証券会社、投資銀行、地方銀行や会計事務所を中心にソーシングすることが多い。プライベートエクイティファンドを活用することで地域経済の発展や、事業承継探しの悩みも解消でき、買手候補として検討してみることもいい選択肢である。

ここに知識を出品

この記事の評価をお願いします

この記事を書いた人

後藤 雄二

M&Aアドバイザー

 プライベートエクイティ

10

初めまして、後藤と申します。

当方のキャリアを簡単に説明しますと以下のようになります。
・公認会計士試験および証券アナリストに合格
・大手監査法人およびBig4 FASにて会計監査業務・M&Aのデューデリジェンス、バリュエーション、およびアドバイザリー業務に従事
・その後外資系投資銀行にてM&Aアドバイザリー業務に従事。主に日系および外資系の事業法人やPEファンドに対し、買収・売却のアドバイザリー業務を提供

M&Aアドバイザリーやコーポレートファイナンス実務の経験を踏まえて、皆様にノウハウをお伝えできればと存じます。
どうぞよろしくお願い致します。

気軽にお話してみませんか?

このユーザーの他の投稿

    • 財務3表連動モデル【簡易版】

      M&Aや経営企画における財務管理の場面で活躍する、財務3表連動モデル【簡易版】になります。 実際に投資銀行やファンドにおけるM&Aアドバイザリーでも、頻繁に作成・使用される財務モデルですが、事業会社...

      • 1421

      • 3

      • 0

      • 形式: XLSX

      • ファイル容量: 440.8KB

      • ウィルススキャン: ウィルスは見つかりませんでした

      2,750

    • バリュエーションモデル|DCF法

      M&Aの現場でよく使用されるDCF法によるバリュエーションモデルのサンプル。財務3表と連動するようになっております。 Inputタブではモデルの前提条件を入力でき、その他のセルでも黄色セルに青字の者は数値を...

      • 1216

      • 3

      • 0

      • 形式: XLSX

      • ファイル容量: 445.9KB

      • ウィルススキャン: ウィルスは見つかりませんでした

      2,178

    • 財務DD用|運転資本計算テンプレート

      財務モデル作成時や、財務DDで分析が必要な運転資本の計算例をエクセルモデルでサンプルにしました。 ご参考になれば幸いです。

      • 210

      • 0

      • 0

      • 形式: XLSX

      • ファイル容量: 16.33KB

      • ウィルススキャン: ウィルスは見つかりませんでした

      1,650

関連のあるコラム

専門家に匿名で!ちょこっと相談