M&Aの戦略立案に役立つ2つのフレームワーク
この記事でわかること 売り手企業が自社の価値を把握するフレームワーク M&A戦略に活用できるフレームワーク はじめに 新規事業への参入や事業拡大に向けて、M&Aの利用を検討する企業が大幅に増加して...
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みなさん、はじめまして。東京・神奈川を中心に活動しているコンサルタントの森中と申します。
私はいくつかの日系・外資系企業で営業・マーケティングを経験し、在職中にMBA(経営管理修士)を取得、現在は中小・ベンチャー企業のお客様を中心に、微力ながら日々マーケティングのお手伝いをさせて頂いております。
この記事では、有名なビジネスのフレームワークは、中小・ベンチャー企業にとって使いにくいものが多いこと。
それならば、どうしたら使い物になるのかを、PPMのケースで解説してみたいと思います。
ご存知の方も多いとは思いますが、PPMとは市場の成長率を縦軸に、相対的市場シェアを横軸にとった、下記のようなチャートを作って、事業のバランスをみていくものです。
どうしてもPPMというと、たくさん事業を抱えた大企業の経営トップが、事業ごとの投資を判断するためのフレームワークと思われる方が多いのではないでしょうか。
起業したばかりのベンチャー企業や、事業が一つだけのの中小企業には使いにくいところがありますよね。
実際に、中小・ベンチャー企業がPPMを作ろうとしても、なかなかうまくいかないことが多いと思います。
主な理由として考えられるのが下記の3点です。(もちろん、これ以外にもたくさん要因はあると考えられますが)
① 市場成長率のデータがない・分からない
(商品がニッチすぎる、今までにない商品やサービスで既存の市場自体ない)
② 自社やトップ企業の市場シェアが分からない、自社のシェアが小さすぎる
③ 市場・事業をどの単位で捉えたら良いのか分からない
(例: 国産ワインメーカーがその市場を酒類市場で捉えるのか、ワイン市場で捉えるのか、国産ワイン市場で捉えるか等)
無理やりやってみても、主観的な市場成長率や、低すぎる市場シェア(0.01%とか)などによって、あまり使えない分析になってしまいがちです。
そこで、PPMの持つ機能性(成長性・利益率・売上規模)は変えず、軸となる項目を置き換えることで、中小・ベンチャー企業にも使いやすくなる、「顧客」の分析手法をご紹介させて頂きます。(事業ではなく顧客です)
まず、成長性ですが、「市場成長率」を、「該当顧客の売上成長率」に変更します。少し分かりにくいですが、例えば、自社が牛乳を製造販売していて、取引先がスーパーマーケットであれば、そのスーパーの既存店の売上成長率や、新規出店の店舗数などが、成長率を測る数字になるでしょう。
例: 顧客A 2018年売上高: 10億円 2019年売上高: 12億円ならば、20%
取引を行っていれば、ある程度は把握しやすい情報かと思われますが、難しい場合はその顧客に対する自社の売上高でも代替にはなるでしょう。
次に、利益率ですが、こちらは「トップ企業への相対的な市場シェア」から、「対該当の顧客の粗利益率」に変更します。(顧客の利益率ではなく、自社にとっての利益率です)
売上から原価を引くだけなので簡単に算出できると思います。
フリーライターなど、原価が自分の労働時間の場合は、(売上-自分の最低設定単価×時間)で良いかと思います。
例: 売上100万円 - 3000円/時給×176時間 = 472,000円(47.2%)
最後に、円の大きさを表す売上高は「対該当顧客向けの売上高」にしましょう。
機能 | 置き換え前 | 置き換え後 |
---|---|---|
成長性 | 市場成長率 | 該当顧客の売上成長率 |
利益率 | 自社の相対的市場シェア | 対該当顧客の粗利益率 |
売上規模 | 該当事業の売上高 | 対該当顧客向けの売上高 |
こうして、できあがったのが顧客のポートフォリオです。
(注)円の大きさは売上高を表しています
①花形顧客A社
成長しており、粗利益率も高い、その名の通りの花形顧客です。
こういった顧客は手がかかることが多いので、営業利益率で考えると少し低くなる可能性はあるのですが、引き続き投資を続ける重要顧客と捉えて良いでしょう。
ここと取引が増えて、更に円が大きくなれば、自社の経営状況も良い方向に向かいそうですね。
②金のなる木顧客B社
成長率は低いものの、粗利益率は高い顧客です。投資は抑えつつも、競合に奪われないための工夫は行っていきましょう。ただ、今後成長が期待できない顧客なので、いつまでも依存しすぎるのは危険です。
今回の4社の中では最も円が大きく「この客でもっているお得意様!」といった感じで、恐らく関係性も深いのですが、ここばかりに営業をかけているのなら、少し改めてみても良いかもしれません。
③問題児C社
成長率は高いものの、粗利益率が悪い顧客です。儲からない割に手がかかるので営業利益率も悪くなりがちで、どうしても足が遠のきがちですが、実は非常に重要な顧客と言えるでしょう。
低い利益率を改善するために、原価を下げるための方法を考えるか、競合に奪われない範囲内での値上げを行うなど、今後、花形にシフトさせるための行動が重要です。
今後のために、時間もお金も投資していく顧客です。
④負け犬D社
成長率も粗利益率も低い顧客です。基本的には競合からシェアを奪う形でしか売上アップはできないのですが、そのために営業活動を強化すれば、もっと利益率が下がる恐れもあります。
注力する顧客ではないかもしれませんが、実は大切だったりもします。
そのため、後ほど説明するPPMの問題点に留意しながら、判断をしていく必要があります。
PPM分析にはいくつかの問題点があると言われており、今回の応用編でもいくつか当てはまるものがあります。
① 各顧客間の関係性や質的な情報がカバーされていない。
(例: 負け犬でも、取引していることによって信用が上がる取引先)
(例: 負け犬でも販売/生産量が多く、1品あたりのコストを下げるため必要な取引先)
② 既に取引のある顧客の分析であり、新しい顧客の開拓の手掛かりにはなりにくい。
③ 負け犬や、金のなる木の顧客の担当営業のモチベーションが低下する恐れがある。
④ B2C業界など、顧客数が多い企業はある程度のグループに分けて考える必要がある。
それから、できるだけ円の数が多い方が良いと思います。
言うまでもありませんが、少ない顧客に依存するより、分散していたほうがリスクは少ないです。
大きな円がドンっとあるより、小さな円がたくさんある方が良いですよね。
起業して間もなく、大変お忙しい経営者の皆様は、自社の顧客の全体像を俯瞰するような機会や時間はなかなか取れないと思います。
今回ご紹介させて頂いた内容は、簡単にExcelなどで作成できますので、一歩引いた目線で、自社の顧客のポートフォリオを眺めてみてはいかがでしょうか。
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