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Index
この記事でわかること
- DCF法・株価倍率法・修正純資産法を使った株式価値計算の仕方
- 株式価値と「株式の価値」の違い
- 「株式の価値」を直接求める方法
はじめに
株式価値は、株主に帰属する価値のことで、債権者に帰属する債権者価値と対になる指標です。計算する代表的な方法として、DCF法・株価倍率法・修正純資産法があります。実務では、客観的な数値を求めるために、複数の計算方法を組み合わせて求めるのが一般的です。
この記事では、各方法の特徴や計算方法をご紹介しています。また、株式価値に似た「株式の価値」についても解説しているので、これを機に混同しないようにしていきましょう。
またKnowHowsでは、従来は専門家に依頼していた株価計算(株式の価値計算)を無料で行える「株価算定ツール」もご用意しています。
DCF法・純資産法・競合会社比較法の3つの代表手法を用いて、自社の株価を本格計算。
従来は数十万円のコストが必要だった株価算定を、手軽にご利用でき、税理士監修の株価算定書を出力することも可能です。
株価算定をご検討の際はぜひ、ご活用ください。
1.株式価値をする計算方法3つ
株式価値を計算する各方法の特徴は以下のとおりです。
方法 | 特徴 |
---|---|
①DCF(Discounted Cash Flow)法 | 将来のフリーキャッシュフロー(FCF)や残存価値の現在価値から計算する方法。企業の本源的な価値(今後どの程度利益を生み出す力があるのか)を評価できる方法とされ、多くの場面で利用されている |
②株価倍率法 | 類似上場企業の株価倍率(マルチプル)を、評価の対象となる企業の財務数値に掛けて計算する方法。未上場企業にも適用できるが、類似上場企業が見つかりづらいときもしばしばある |
③修正純資産法 | 貸借対照表の主要勘定科目を簿価から時価に修正し、再度計算した純資産価額から求める方法。将来の利益獲得力が含まれていないため、M&Aなどのときは営業権を加えた数字を取引価格のベースとすることが多い |
順に詳しく見ていきましょう。
①DCF法
DCF法を用いて株式価値を計算する際の手順は、次のようになります。
- 評価対象となる企業の財務情報を入手する
- 損益計算書や貸借対照表の予測版を作成する
- 将来のフリーキャッシュフローを計算する
- WACCを計算する
- 残存価値を計算する
- 事業価値(EV)を計算する
- 株式価値を計算する
・評価対象となる企業の財務情報を入手する
DCF法では、まず計算の元となる将来のフリーキャッシュフローを、求めなければいけません。そのためには財務数値を予測する必要があり、事前に財務情報を入手しておくのが不可欠となります。財務情報が掲載されている資料としては、有価証券報告書、決算短信、統合報告書、株主通信、プレスリリースなどがあります。
・損益計算書や貸借対照表の予測版を作成する
集めた資料を元に、今後の財務数値を予測し、将来の損益計算書や貸借対照表を作成します。予測期間は5~10年が一般的です。
・フリーキャッシュフローを計算する
損益計算書や貸借対照表の予測版を元に、各期のフリーキャッシュフローを計算します。次の計算式に当てはめて求めましょう。
フリーキャッシュフローの計算式 |
---|
FCF=NOPAT+減価償却費-設備投資額±運転資本増減額 |
・WACCを計算する
次に現在価値に割り戻すために必要な割引率として、WACC(Weighted Average Cost of Capital:加重平均資本コスト)を求めます。
(※)現在価値と割引率 |
---|
財務の世界では、お金は手に入る時期によって価値(魅力)が異なると考えられています。例えば今すぐ手に入る10万円と5年後に手に入る10万円だと、前者に比べて後者のほうが価値(魅力)を感じにくいでしょう。このとき、「では、現時点から見た5年後の10万円には、どのくらいの価値(魅力)があるのか」と計算することを、現在価値に割り戻すと表現します。また、その際に利用される数値が割引率です。 |
WACCは、株主資本コスト(キャピタルゲインやインカムゲイン)と、有利子負債コスト(利息など)の加重平均値です。そのため、次のような流れで計算を行うといいでしょう。
計算手順 | 計算式 |
---|---|
1.株主資本コストを計算する | 株主資本コスト=安全資産の利子率+β×マーケットリスクプレミアム |
2.有利子負債コストを計算する | 有利子負債コスト=支払利息/有利子負債の期中平均 |
3.1と2を加重平均を計算する |
・残存価値を計算する
DCF法では、企業が長きに渡って存続することを前提にした計算方法です。従って予測期間以降のフリーキャッシュフローについても、現在価値に割り戻して計算に加えることになります。
しかし何十年も先の予測を、妥当性を確保しながら行うのは現実的に不可能です。そこで予測期間以降のフリーキャッシュフローをすべて足し合わせた残存価値(ターミナルバリュー、TV)を、代わりに求めることとなります。計算式は、以下のとおりです。
ターミナルバリュー(TV)の計算式 |
---|
・事業価値(EV)を計算する
各期のフリーキャッシュフローと残存価値を、WACCを使って現在価値に割り戻します。その総和が、評価対象の企業の事業価値(EV)です。
事業価値(EV)の計算式 |
---|
(※)nには、予測期間の数字が入ります。例:5期分を予測→n=5
・株式価値を計算する
最後に、次の計算式を用いることで、株式価値を計算できます。
株式価値の計算式 |
---|
株式価値=事業価値(EV)+非事業価値-債権者価値(有利子負債) |
②株価倍率法
株価倍率法を用いて株式価値を計算する場合は、次の手順となります。
- 類似上場企業を選定する
- 株価倍率を計算する
- 株式価値を計算する
・類似上場企業を選定する
株価倍率法では、類似上場企業の適切な選定が鍵を握ります。その上場企業が、評価対象となる企業の特徴に似ていれば似ているほど、計算される株式価値の客観性、妥当性も高くなるためです。以下に、一般的な判断基準をまとめたので、ご参考ください。
判断のポイント |
---|
業界、業種は似ているか |
ビジネスモデルは似ているか |
顧客のステータスは似ているか |
規模に著しい差がないか |
主戦場としている地域に共通点はあるか |
収益を獲得する力や成長性の度合いは同じ程度か |
なお、上場企業は5~10社程度選ぶのが理想的です。
・株価倍率を計算する
選定した上場企業の財務数値から、株価倍率を算出します。それぞれの計算方法の特徴と、適用できるとされる企業は以下のとおりです。
株価倍率 | 計算方法 | 適用できるとされる企業 |
---|---|---|
PER(Price Earnings Ratioa:株価収益率) | 株式時価総額/当期純利益 | ・利益のある企業 |
・ベンチャー企業(ただし利益>0) | ||
・スタートアップ企業(ただし利益>0) | ||
PBR(Price Book-value Ratio:株価純資産倍率) | 株式時価総額/純資産額 | ・利益のない企業 |
・特別損失額が大きい企業 | ||
PSR | 株式時価総額/売上高 | ・ベンチャー企業 |
・スタートアップ企業 | ||
PCFR(Price Cash Flow Ratio:株価キャッシュフロー倍率) | 株式時価総額/キャッシュフロー | ・利益のある企業 |
・減価償却を考慮したほうがいいと判断した企業 | ||
PEGレシオ | PER/1株あたりの利益成長率 | ・ベンチャー企業 |
・スタートアップ企業 |
各上場企業の株価倍率を求めたら、その平均値(or 中央値)を計算しましょう。
・株式価値を計算する
算出した株価倍率を特定の財務数値に掛けて、評価対象となる企業の株式価値を求めます。特定の財務数値とは、株価倍率を求める際に分母となったものに対応しています。
上場企業から計算した株価倍率 | 評価対象企業の株式価値計算方法 |
---|---|
PER | 株式価値=PER×当期純利益 |
PBR | 株式価値=PBR×純資産額 |
PSR | 株式価値=PSR×売上高 |
PCFR | 株式価値=PCFR×キャッシュフロー |
PEGレシオ | 株式価値=PEGレシオ×1株あたりの成長率×当期純利益 |
③修正純資産法
修正純資産法を用いる場合の手順は、次のとおりです。
- 勘定科目を時価に修正する
- 純資産額を計算する
- 株式価値を計算する
・勘定科目を時価に修正する
時価は再調達原価を原則とし、非事業用資産や負債には正味売却価額を用いるのが一般的です。正味売却価額に置き換えるときは、法人税等を考慮する必要があります。
修正する勘定科目については、重要なもののみに留めるケースがよく見られます。すべてを時価に置き換えるのが、実務的に難しいとされているためです。
・純資産額を計算する
時価に修正することで、含み損益を算出することができます。それを加味しながら(正味売却価額の場合は税効果も)、純資産額を求めましょう。なお、計算した純資産額は修正純資産価額、もしくは時価純資産価額と言います。
・株式価値を計算する
修正純資産価額(or 修正純資産価額)から、新株予約権や非支配株主持分、その他の包括利益累計額などを引いて株式価値を計算します。ただ純資産額と株式価値は、同等のものと見られるケースもゼロではありません。
2.株式価値と混同されやすい「株式の価値」とは?
株式価値と似たような言葉に、「株式の価値」があります。実務で混乱を招かないようにするためにも、ここで詳しくご紹介します。
①株式価値と「株式の価値」は同じ?違う?
一般的に「株式の価値」と言った場合、1株あたりの株式がどの程度の価値を持っているのか(=株価)を示します。従って、株式価値との関係性は、次のような計算式で表すことができます。
「株式価値」と「株式の価値」の関係式 |
---|
株式価値=株式の価値×発行済株式数 |
②「株式の価値」の計算方法
「株式の価値」は、前章の方法で計算した株式価値を、発行済株式数で割れば求めることが可能です。そのほかに、計算式を使って直接求められる方法が3つあります。
・DDM法
割引配当モデルを利用して計算する方法です。将来の配当金を現在価値に割り戻し、それを足し合わせて求めます。
計算モデルがいくつかあり、株主が一定期間後に保有する株式を売却した場合、配当金が一定の割合で成長していく場合など、さまざまなケースに対応できるのも特徴です。
※株主がn期間後に株式を売却した場合のモデル
DDM法の計算式 |
---|
・国税庁方式
国税庁が財務基本通達の中で定めている計算方法です。事業承継対策によく用いられる方法ですが、場合によってそれ以外のケースでも用いることもできます。具体的な計算方法については、別の記事で詳述していますのでご参照ください。
・KnowHowsの計算ツール
KnowHowsには、株価を自動的に計算する「株価算定ツール」があります。DCF法を始めとする3種類の方法で、多角的に「株式の価値」を求めることが可能です。利用は無料ですので、検討してみてください。
まとめ
- 株式価値を計算する主な方法に、DCF法、株価倍率法、修正純資産法がある。
- 株式価値と「株式の価値」は、混同されやすいが厳密には異なる。
- 「株式の価値」を直接求める方法として、DDM法、国税庁方式、KnowHowsのツールがある。
おわりに
株式価値の計算では、どの方法が適しているのか吟味することが、結果を意味のあるものに近づける近道となります。
この記事が、各特徴や流れを把握するきっかけとなれば幸いです。
また、KnowHowsでは、本文でもご紹介したように、DCF法のほか複数の計算方式で株価(株式の価値)を算定できる「株価算定ツール」をご用意しています。
税理士監修のもと、必要な項目を入力するだけで本格的な株価算定が可能です。
計算は無料でご利用できますので、本記事とあわせてぜひお役立てください。
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