• 投稿する

一覧へ戻る
この記事の目次を見る

この記事でわかること

  • DCF法の計算用エクセルシートの使い方と注意点
  • DCF法が使われているシーンや、実際に使うときの留意点
ここに知識を出品

はじめに

DCF(Discounted Cash Flow)法は、今後獲得するフリーキャッシュフローを現在価値に割り引き、さまざまな価値を評価する方法です。

この記事では、DCF法で株価を算定するためのエクセルシートと、それを使って株価を算定するための手順をご紹介しています。

KnowHowsでは、従来は専門家に依頼していた株価計算を無料で行える「株価算定ツール」もご用意しています。

DCF法・純資産法・競合会社比較法の3つの代表手法を用いて、自社の株価を本格計算。
従来は数十万円のコストが必要だった株価算定を、手軽にご利用でき、税理士監修の株価算定書を出力することも可能です。

株価算定をご検討の際はぜひ、ご活用ください。
image.png
>>【無料でお試し!】KnowHowsの株価算定ツール

ここに知識を出品

1.DCF法計算エクセルを使った株価算定5ステップ


DCF法の計算用エクセルは、こちらからダウンロードできます。用意しているSheetは次の5つです。

①Sheet1「5年後までのFCFを算定」
②Sheet2「WACCを算定」
③Sheet3「残存価値を算定」
④Sheet4「現在価値を算定」
⑤Sheet5「株価を算定」

この章で、それぞれの使い方と注意点を、順にご紹介します。

なお、実際の利用時には、評価対象企業の5年後までの予想損益計算書と予想貸借対照表を、事前に用意しておくとスムーズです。

①Sheet1「5年後までのFCFを算定」

評価対象企業の、5年後までのフリーキャッシュフローを算定するSheetです。

・使い方

評価対象企業の予想損益計算書と予想貸借対照表を元に、黄色に色付けされている箇所に数字を打ち込めば、最下段に各年の数値が表示されます。以下に、各項目の主な内訳をまとめましたので、参考にしてください。
入力項目分類

・注意点

本シートにて計算するにあたっての留意点
エクセル内のNOPATはEBIT×(1-実効税率)で算定するようになっているが、営業利益×(1-実効税率)などで求めるパターンもある
予測期間1年目の運転資本増減額は、予測1年目の運転資本から、評価対象企業の予測期間直前(最新実績)の運転資本を引いて求める
今回は5年後までとなっているが、評価する企業によって前後することもある

②Sheet2「WACCを算定」

現在価値計算に必要な割引率として用いる、WACC(Weighted Average Cost of Capital:加重平均資本コスト)を算定するSheetです。

・使い方

Sheet1同様、黄色に色付けされた部分に、必要な数字を打ち込んでください。以下に補足をしておきます。

項目補足
安全資産の利子率国債の10年ものを利用するのが一般的
β評価対象企業の株価とTOPIX指数などの比較で算定できるが、日経電子版REUTERS(ロイター)でも入手した数値を用いることもある
マーケットリスクプレミアム3~6%で評価する専門家が多い
有利子負債コスト日本証券業協会が公表している格付マトリクスを利用する場合もあり
株主資本(時価ベース)主に株式時価総額を用いる
有利子負債(時価ベース)簿価と大差がないと判断がつけば、簿価を利用することも可能

・注意点

本シートにて計算するにあたっての留意点
β算定において、評価対象企業が未上場企業の場合は、複数の類似上場企業を選定してアンレバードベータの平均値を計算。それをリレバード化したものを用いる
株主資本において、評価対象企業が未上場企業の場合は、類似企業の株価を参考にする

③Sheet3「残存価値を算定」

将来のフリーキャッシュフローを予測するとき、何十年も先までそれを行うのは、一般的に困難とされています。そこで予測期間以降のフリーキャッシュフローについては、予測期間終了時点のフリーキャッシュフローが、毎年一定の割合で成長すると想定されます。

その総和が残存価値(ターミナルバリュー、TV)であり、Sheet3を使って算定できる数値です。

・使い方

Sheet1・2で必要な数字は求められているので、継続成長率さえ入れれば算定できます。なお、継続成長率は0~1%(=中長期の物価上昇率)の間で設定されるのが一般的です。

・注意点

予測期間を前後させた場合は、「予測期間終了時点でのFCF(5年目に獲得するFCF)」のところに、最終年のフリーキャッシュフローを入れるようにしてください(予測期間を10年に伸ばしたら10年目のフリーキャッシュフローを入れる)。

④Sheet4「現在価値を算定」

予測したフリーキャッシュフローや残存価値の、現在価値を算定するSheetです。

・使い方

Sheet3までの打ち込みが終わっていれば、自動的に算定されています。うまく表示されていない場合は、1~3に戻ってチェックしてみましょう。

・注意点

予測期間を前後させた場合は、修正が必要になります。期間を10年とした場合の手順を紹介するので、参考としてください。

手順修正内容
6~10年目のFCFを、「G7」の隣にひとつずつ並べる
各フリーキャッシュフローの直下に、WACCをコピーして並べる
WACCの直下に、次の計算式を入れる
  6年目のFCF→「=H7/(1+H8)^6」
  7年目のFCF→「=I7/(1+I8)^7」
  8年目のFCF→「=J7/(1+J8)^8」
  9年目のFCF→「=K7/(1+K8)^9」
  10年目のFCF→「=L7/(1+L8)^10」
残存価値の現在価値に入っている数式「=F12/(1+F13)^5」を「=F12/(1+F13)^10」に変える 

⑤Sheet5「株価を算定」

株価を算定するSheetです。

・使い方

これまでと同様、黄色に色付けされた部分に必要な数字を入れてください。以下、補足です。

項目補足
非事業価値余剰資金や関係会社株式以外の投資有価証券、遊休資産などが主に含まれる
発行済株式数自己株式以外の数を入れる

・注意点

本シートにて計算するにあたっての留意点
予測期間を前後させた場合は抜け漏れや抜き忘れがないようにし、事業価値(EV)の計算式を調節する
非事業用資産を加算する際は、各項目がフリーキャッシュフローの算定に含まれていないか確認する
評価した株式が支配権に影響しない場合、マイノリティ・ディスカウントを考慮しなければならないときがある
非上場企業の株式を評価した場合、非流動性割引を加味しなければならないときがある

⑥KnowHowsの無料株価算定ツール

上記でご紹介したようなエクセルを用いた計算は、あくまで簡易的なものに過ぎません。実務では専門家が監修している計算ツールや、直接専門家と相談しながら算定を行うのがベターです。

KnowHowsでも、DCF法をはじめとする3つの方法で株価の計算ができるツールを、無料で用意しています。

>>【無料】KnowHowsの株価算定ツールを使ってみる

税理士印付きの株価算定書を出力できるサービス(有料)もございますので、よろしければお役立てください。

ここに知識を出品

2.DCF法による株価算定が活用される場面

DCF法は、将来のフリーキャッシュフローに基づくことから、評価対象企業の事業内容成長性などを反映した価値を求めることができます。

この章では、そのDCF法がどんなケースで用いられているのか、実際に利用する場合はどのような点に気をつけたらいいのかについて、ご紹介しましょう。

①M&A(買収)

・概要

M&Aでは、買い取り先の企業が期待通りの利益を生み出してくれるのかが、特に大きなポイントとしてあります。そのため、将来の収益獲得能力を評価できるDCF法は、比較的よく用いられます。

・利用時の留意点

利用にあたっての注意点
ケースによっては、客観性に優れた算定方法(類似会社比準法や修正純資産法など)で補完する必要がある
未上場企業が対象の場合は、別の方法を採用したほうが、算定にかけるコストや時間が少なく済む場合がある
算定結果をそのまま買収価格とはせず、シナジー効果を考慮するのが一般的

②第三者増資割当

・概要

第三者割当増資とは、第三者に対して新株を発行し、資金調達する方法です。会社法上税務上の関係から新株の払込価格を時価にする必要があり、しばしばDCF法が利用されます。

・利用時の留意点

利用にあたっての注意点
算定時の負担から、類似会社比準法や税務上の評価額にするケースは珍しくない
保有資産が特定の資産に偏っている、保有資産自体に価値があるなどの場合は、修正純資産法を採用したほうがスムーズなときがある

③スクイーズ・アウト

・概要

スクイーズ・アウトは、少数株主を排除する方法です。主に「少数株主に対して保有する株式の売却を請求する」「少数株主の保有する株式をひとつにまとめる」などの方法があり、DCF法がしばしば利用されます。

・利用時の留意点

利用にあたっての注意点
M&Aで株式の大部分を取得した場合は、基本的にはDCF法ではなく、取得価格で決められる
資産状況によっては別な方法が適していることがある
ここに知識を出品

まとめ

  • DCF法は、将来のフリーキャッシュフローの現在価値から、さまざまな価値を求める方法。
  • エクセルを利用して算定できるか、あくまで簡易版。実務では、専門家への相談や専用ツールの利用を検討しよう。
  • DCF法はM&Aや第三者割当増資、スクイーズ・アウトなどさまざまな場面で用いられている。
ここに知識を出品

おわりに

今回ご用意したDCF法用のエクセルは、あくまで参考用です。実際に使用する場合は、専門家を通じて正式な算定書をきちんと作成してもらうようにしてください。

またKnowHowsの株価算定ツールは、税理士監修のもと、必要な項目を入力するだけで本格的な株価算定が可能です。
無料でご利用できますので、本記事とあわせてぜひお役立てください。
image.png
>>【無料でお試し!】KnowHowsの株価算定ツール

ここに知識を出品

この記事の評価をお願いします

この記事を書いた人

KnowHows 編集部

株式会社KnowHows

9

さまざまな事業課題の解決に役立つ情報をお届けしていきます。

気軽にお話してみませんか?

このユーザーの他の投稿

関連のあるコラム

この記事に質問してみませんか?
関連する質問がAIで生成されています。

DCF法を用いて株価を算定する際、特に中小企業において実務面で重要なポイントや知っておくべき注意点を教えてください。具体的なケーススタディなどもあれば、より理解が深まりますので、可能な範囲で教えていただけると幸いです。

この質問で投稿する

予測期間や継続成長率の設定にはどのような基準があり、どのように設定すべきか具体的なガイドラインをお教えください。中小企業特有の経営環境や市場状況を考慮したアドバイスをいただけますか?

この質問で投稿する

DCF法を用いた株価算定において、予測損益計算書と予想貸借対照表の作成が求められますが、中小企業における実践的な作成方法やその際のポイントについて具体的にご教示ください。

この質問で投稿する

同業他社を参考とした財務データを入手する際、信頼性の高い情報源や具体的なデータ取り扱い方法について教えてください。特に非上場企業の場合、どのようにして適切なデータを収集すれば良いのか知りたいです。

この質問で投稿する

株価算定の結果が低く出た場合、再評価を行う上で改善できる要素や具体的なアプローチを教えてください。DCF法の計算で見落としがちなポイントや調整方法についても触れていただければと思います。

この質問で投稿する

中小企業がDCF法による株価算定結果を用いて第三者増資やM&Aを検討する際、相手方にどのようにプレゼンするのが効果的か、その具体的方法や資料の作成ポイントについてアドバイスをお願いします。

この質問で投稿する

中小企業の経営者として考慮すべき、「DCF法」と「他の株価算定法(純資産法、類似会社比較法など)」の使い分けについて、それぞれのメリット・デメリットと適用シーンを教えてください。特に自社の状況に合わせた最適な選択がどのようにできるのか知りたいです。

この質問で投稿する

DCF法を利用する際のWACCの算定において、中小企業特有のリスクをどのように反映すべきか、その具体的な方法論や設定基準について詳細にご教示ください。特に小規模企業ならではの課題や留意点があれば教えてください。

この質問で投稿する

株価算定のためのデータ入力に必要となる情報収集の具体的な手順や社内での情報共有の仕組みについて教えてください。特にデータの信頼性を確保するための対策や、情報の一元管理の方法など、中小企業に適した実践的な方法が知りたいです。

この質問で投稿する

KnowHowsの株価算定ツールを実際に使う経営者や役員が特に気をつけるべき点、または効果的に活用するためのコツについて具体的に教えてください。例えば、入力項目のどの部分に力を入れるべきか、どんな点に注意すべきかなど、具体的な例を含めてご教示いただけますでしょうか。

この質問で投稿する

閉じる

専門家に匿名で!ちょこっと相談