【株式会社の機関設計】全パターンを一覧表でわかりやすく紹介
Index
この記事でわかること
- 企業に設置する機関の一覧とその役割
- 株式上場を目指すベンチャー企業等における適切な機関設計
はじめに
日本という国家の運営においても、国会、内閣、裁判所という三権分立の仕組みによって権力の暴走を防いでいるように、上場企業においても、経営の暴走を防ぎ、株主の利益を守るために様々な機関を設置する必要があります。
株式上場(IPO)を行う場合、これらの体制は上場する前から整えておかなければなりません。上場申請日から1年以上前に設置しなければならない機関もあるため、それを見越した動き出しが大切となります。
本記事では、株式上場のために設置しておく必要のある機関について解説します。
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1.機関の種類
まずは、会社運営に必要となる諸機関について解説をしていきます。
①株主総会
株主総会は、株主を構成員とする株式会社の最高意思決定機関です。
株式会社では、必ず株主総会を設置する必要があります。株主総会は原則2週間前までに取締役が招集通知を発送し、事業年毎に定時株主総会を開催する必要があります。
会社法や定款に定められている事項に関して、一切の決議が可能です。
なお、株主は1株または1単元につき、1個の議決権を取得できます。
②取締役・取締役会・代表取締役など
取締役は、業務執行を担う機関です。
取締役も株主総会と同様、法律によって設置が義務付けられています。取締役は株主総会の決議で選任されます。就任した取締役は、取締役会の構成員となります。
取締役会は、取締役会を設置している企業の重要な業務執行の決定および取締役の職務が適切に執行されているかを監督する機関で、代表取締役の選定なども行います。
取締役会は、最低3人以上の取締役で構成しなければなりません。
取締役会は会議形式であり、そこで決定した内容について業務の執行を行う機関として、代表取締役が選定されます。
③監査役・監査役会
監査役は、取締役や会計参与の職務執行を監査する機関です。
監査役の設置は取締役会設置会社もしくは会計監査人設置会社においては必須の機関ですが、監査等委員会設置会社、指名委員会などの設置会社以外の取締役設置会社においては、監査役の設置が義務付けられています。
監査役会は、監査報告の作成、常勤監査役の選定、監査役の職務執行にかかわる決定を行う機関であり、すべての監査役によって構成されます。なお、IPOにあたっては、監査役は社外独立役員であることを要請され、また加えて、常勤監査役の選任義務もあります。
常勤監査役とは、他の常勤の仕事を持たず、営業時間中は原則として監査役の仕事に専念する役職のことを言います。
また、監査役は中立性を維持するため、取締役や会計参与との兼任が禁止されています。任期機関は4年で、短縮することはできません。
④指名委員会など
指名委員会、監査委員会、報酬委員会などがあります。
- 指名委員会取締役の選解任におて議案内容決定を行う機関です。
- 監査委員会執行役の職務執行の監査や会計監査人の選解任の議決案内決定を行います。
- 報酬委員会執行役など各個人の報酬を決定します。
これらの委員会の設置は義務づけられておらず、任意での設置となります。
⑤会計監査人
株式会社の計算書類を監査する機関です。会社の従業員ではなく、公認会計士や監査法人しか会計監査人になることはできません。会社法で委員会設置会社や大会社での設置が義務付けられています。
株主総会で選任され、任期は1年です。しかし、解任や退任がない場合には、自動的に再任となります。
⑥会計参与
取締役と共同して、計算書類、附属明細書、臨時計算書類、連結計算書類などの書類作成を行う機関です。この書類作成において、専門的な知識が欠かせないため、公認会計士、税理士、監査法人、税理士法人だけが就任できる機関です。
設置は基本的に任意ですが、取締役を設置し、かつ監査役を置かない形をとる場合に限り、会計参与を設置する義務が発生します。
2.株式上場を目指すうえで必要となる機関設計
前章では、会社が設置することのできる機関について解説してきましたが、株式の上場を目指す場合には、どのような機関の設置が必要になるのでしょうか。詳しく解説をしていきます。
①株式上場を目指す際に必要となる機関
株式を上場するためには、その準備段階として公開会社にする必要があります。公開会社とは、株式の譲渡に制限を設けていない会社のことで、会社法2条5号によって定められています。
そして、公開会社になるためには、下記の通り、機関や役職の設置を行わなければなりません。
- 取締役会の設置
- 最低3人以上の取締役及び社外独立取締役1名の選任
- 監査役会の設置(監査等委員会、または指名委員会を設置している会社は除く)
- 会計監査人の設置
取締役会の設置は、上場申請日から換算して1年以上前までと定められているため、非公開会社の段階で取締役会の設置は欠かせません。
東京証券取引所のマザーズ市場の上場審査では、上場申請日の1年以上前から取締役会の設置、一部・二部は直前事業年度の末日から3年以上まえの設置が求められます。
上記の理由から、株式上場を目指すのであれば、下記機関を早めに設置しておくことが重要となるでしょう。
株主総会+取締役会+監査役+会計監査人
②非公開会社から公開会社となった場合の変化
非公開会社から公開会社になった際、その時点で在任中の取締役や監査役などの役員は任期満了となります。
また、取締役の任期は、非公開会社であれば10年まで延長できましたが、公開会社では最長2年となります。
株主総会の招集通知の期限も変わります。非公開会社では原則1週間前と直近の招集でしたが、公開会社になることで原則2週間と余裕を持った招集通知を行う必要があります。
おわりに
株式会社には株主総会、取締役会、監査役、会計監査人、会計参与など、さまざまな機関があります。
株式上場に伴い、経営者による意思決定から株主総会での決議により様々な決定を行っていくこととなります。今までの体制とは大きく異なってくるため、社内や関係各所にも上場の方向性をしっかりと共有することが必要となってきます。
公認会計士や監査法人との関わりも必要となるため、上場の意向を持ったタイミングで相談するとよいでしょう。
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