Index
- この記事でわかること
- はじめに
- 1.コスト・アプローチとは
- ①純資産の概要
- ②コスト・アプローチのメリット・デメリット
- ③コスト・アプローチの種類
- 2.貸借対照表の数字をそのまま用いる「簿価純資産法」
- 簿価純資産法の計算方法
- 3.影響の大きい資産・負債を時価に修正して計算する「修正簿価純資産法」
- 修正簿価純資産法の計算方法
- 4.すべての資産・負債を時価に修正して計算する「時価純資産法」
- 時価純資産法の計算方法
- 5.コスト・アプローチをもちいた株価算定のメリット
- ①客観性のある算定ができる
- ②資産と負債をもちいて計算するため理解しやすい
- 6.純資産方式を用いた株価算定のデメリット
- ①企業の成長性や収益力が十分に反映されない
- ②ブランドなどの無形資産や社内人材のスキルが加味されていない
- まとめ
この記事でわかること
- 株価算定に用いられる純資産方式の概要と種類
- 簿価純資産法、修正簿価純資産法、時価純資産法の特徴と計算方法
- 純資産法が使われる主なシーン
はじめに
企業の貸借対照表から純資産を求め、そこから株価を算定する方法のことを、コスト・アプローチ、ネットアセット・アプローチなどと呼称します。
企業の純資産額がベースとなるため、ほかの算定手法と比べて比較的簡単な点や、客観性が高い点が特徴。
中小企業の事業承継やM&Aなどで株価を算定する際などに使用されることがあります。
今回は、コスト・アプローチに分類される株価算定の種類や、そのメリット、デメリットについて解説していきます。
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1.コスト・アプローチとは
コスト・アプローチとは、企業の貸借対照表上の資産から負債等を引いた「純資産」をベースに株価の算定を行う手法です。その手法には様々な種類がありますが、本章ではまず、純資産方式の全体的な概要についてご紹介していきましょう。
①純資産の概要
純資産方式では、算定の対象となる企業の貸借対照表から「純資産」を求め、それをベースとして株価を算定します。
純資産とは企業の「資産」から「負債」を引いた残額であり、大まかに以下の数式で表すことができます。
純資産 = 資産(現預金・商品・土地など)− 負債(借り入れ・買掛金など)
②コスト・アプローチのメリット・デメリット
企業が現在持っている資産および負債額がベースとなるため、客観性が高い点が特徴となります。
一方で、事業の収益性や将来性といった内容は加味されないため、資産を保有していない企業は算定額が低くなる点がデメリットです。
③コスト・アプローチの種類
コスト・アプローチには、以下のような種類があります。
名称 | 特徴 |
---|---|
簿価純資産法 | 貸借対照表にある資産・負債の簿価から株価を算定する方法 |
修正簿価純資産法 | 貸借対照表にある資産・負債の簿価のうち、建物などの含み損益が大きい一部のものを時価に修正し、株価を算定する方法 |
時価純資産法 | 全ての資産と負債を時価で計算しなおし、それらをもとに株価を算定する方法 |
各算定方法の特徴について、以降の章で詳しく解説していきましょう。
2.貸借対照表の数字をそのまま用いる「簿価純資産法」
貸借対照表に記載された資産・負債の簿価から純資産を計算して、株価を算定するのが簿価純資産法です。
簿価純資産法の計算方法
簿価純資産額を発行株式数で割ることで、1株あたりの価格を計算できます。
例)1,000万円(純資産)÷ 10,000株(発行株式数) = 1,000円(株価)
このように、シンプルな手順で計算できるため、以下の手法よりも少ない手間で算定できます。
簡便な目安を知りたいという場合や、比較的規模の小さい企業の評価などを行う場合に使用されます。
また、企業の「現在」の資産・負債額のみから判定されるため、以下の修正簿価純資産法や他の算定手法での算定結果との比較・検証に使われることもあります。
3.影響の大きい資産・負債を時価に修正して計算する「修正簿価純資産法」
修正簿価純資産法とは、企業の貸借対照表に記載された資産および負債のうち、不動産や株式といった一部のものを時価で計算しなおし、株価を算定する方法のことを言います。
建物や株式といった資産は価値が変動しやすく、純資産に与える影響が大きいため、簿価ではなく時価に修正し、より現実に即した算定を行おうという考え方になります。
修正簿価純資産法の計算方法
修正した時価を簿価純資産額を発行株式数で割ることで、1株あたりの価格を計算できます。
例)1,200万円(不動産や株式を時価で評価しなおした純資産)÷ 10,000株(発行株式数) = 1,200円(株価)
不動産の時価修正は、公示価格(=行政や省庁が評価した価格)や固定資産税評価額から計算するほか、不動産鑑定士に評価してもらうといった手法がとられます。
4.すべての資産・負債を時価に修正して計算する「時価純資産法」
一部の資産・負債を時価に修正する修正簿価純資産法に対し、すべての資産と負債を時価に修正する方式が「時価純資産法」です。
時価純資産法の計算方法
基本部分は他の計算方法と大差なく、時価純資産額を発行株式数で割ることで、1株あたりの価格を計算できます。
例)1,300万円(資産・負債を全てを時価で評価した純資産)÷ 10,000株(発行株式数) = 1,300円(株価)
ただし、すべての資産・負債の正確な時価を求めることは現実的に難しいこともあり、
「時価純資産法」としつつも、実態としては「修正簿価純資産法」のより詳細なバージョンとなることが多いでしょう。
5.コスト・アプローチをもちいた株価算定のメリット
純資産方式で株価を選定することで得られるメリットは次の2つです。
- 数値の客観性が比較的高い
- 資産と負債を使って計算するため理解しやすい
それぞれ詳しく解説します。
①客観性のある算定ができる
純資産方式で必要になる情報は、貸借対照表にある資産と負債の簿価です。時価評価への修正に伴う算定結果のブレはあるものの、基本的に算定根拠はすべて、資産および負債額から説明することが可能です。
株価算定の手法には、企業の将来にわたる収益をベースにするインカム・アプローチや、同業他社などとの比較をベースにするマーケット・アプローチがありますが、いずれの手法も将来性の予測や、サンプルとなる企業の選定などに主観の入り込む余地がどうしても残ります。
それらの手法と比べると、純資産方式は比較的客観性の高い手法と言うことができます。他の手法での算定結果を検証する際の基準としての利用も期待できるでしょう。
②資産と負債をもちいて計算するため理解しやすい
純資産方式は、資産から負債を引くというシンプルなプロセスで株価を算定します。そのため、他の算定方式に比べて計算方法が分かりやすく、専門的な知識がなくても株価算定のプロセスを理解しやすいと言えます。
本格的な算定に入る前に概算したい、自社の株価をざっくりと知っておきたい、という場合に利用しやすい算定手法と言えるでしょう。
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6.純資産方式を用いた株価算定のデメリット
一方で、純資産方式には以下のようなデメリットもあります。
- 企業の成長性や収益性が十分に反映されない
- 無形資産(ノウハウやブランド力など)が加味されていない
①企業の成長性や収益力が十分に反映されない
純資産方式では、あくまで現在企業が保有している資産と負債のみを参考に株価を算定します。
そのため、算定結果は企業の今後の成長性や、収益力といった要素が反映されていないと言えます。
特に、急成長を目指すベンチャー企業やスタートアップにおいて、その成長力のコアであるビジネスモデルや商品力などが加味されない純資産方式では、そのほかの算定手法と比べると低い算定結果となりがちです。
アーリーステージにおける資金調達や、M&Aを意識しての株価算定において、主要な算定方式としては利用しにくいと考えられます。
②ブランドなどの無形資産や社内人材のスキルが加味されていない
同様に、企業が持つブランド力、自社で開発した特許、デザインの著作権といった無形資産についても、純資産方式だけでは十分な評価ができません。
特許権や商標権、ソフトウェアについては「無形固定資産」として貸借対照表に記載されますが、その金額のベースとなるのは、特許権の申請費用や購入・開発費用など。それらの無形資産がビジネスにもたらす価値が十分に反映されているとは言いがたい側面があります。
同様に、社内の人材の能力なども純資産方式では十分に評価されません。社員の売上や給与はあくまで流動的な「収益」および「費用」であり、資産とはみなされないからです。
これらの評価が重要となるシーンでは、純資産法を使用するのは不適切であると言えます。
まとめ
純資産方式は、企業の現在の資産および負債をベースとするため、比較的客観性の高い形で株価を算定することができます。
しかしその一方、企業の将来性や無形資産が算定に反映されづらいという欠点もあります。その特徴をよく理解したうえで、利用するようにしましょう。
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