株主にはどんな権利がある?株式比率ごとにできることを一覧で解説
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この記事でわかること
- 避けるべき株式の希薄化の概要について
- どのような場合に法令違反となるのか
- 公平な取引を行う上での注意点
- 発生する税制について
はじめに
前回まで新株発行(増資)の詳細について、解説してきました。最後に新株発行における注意点について本記事で解説します。
これまで新株発行の種類やそれぞれのメリット・デメリットについて述べてきました。本記事では、新株発行全体で気をつけるべき点をご紹介します。新株発行は資金調達につながる一方、リスクもあります。
しっかり本記事の内容を理解し、新株発行を適切に行いましょう。
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1.株式の希薄化(ダイリューション)への対応
①株式の希薄化(ダイリューション)とは
株式の増加に伴い、1株あたりの価値(議決権の割合や利益)が下がることを株式の希薄化(ダイリューション)といいます。
企業にとって、資金調達の1つの手段である増資は欠かせません。しかし、発行株式数が増えるという事は、1株あたりの利益・価値が下がることを意味します。
たとえば、これまで5人でシェアしていたスープを増やすかわりに、10人でシェアしなければならなくなった場合を考えてみましょう。
増えた量が人数よりも多ければ、1人当たりが食べられる量は多くなりますが、増えた量が人数よりも少ない場合、食べられる量は少なくなってしまいます。
株式でも、全く同じことが言えます。増資による価値の増加よりも株主の方が多くなってしまった場合、1人当たりの得られる価値は少なくなってしまうのです。また、ダイリューションの影響で議決権の割合が低下することもリスクのひとつ。増資によって会社の持つ株式の割合が低くなると、それだけ会社外部が経営に介入してくることが多くなることになります。
②25%ルール・300%ルール
ダイリューションから株主を保護するために、各証券取引所は、上場企業に向け、株式発行のルールを定めています。希薄化率を「増資後の株式議決権数」÷「増資前の発行済株式における議決権総数」で算出した時に、25%もしくは300%オーバーとなる場合には制限が課せられます。これが「25%ルール・300%ルール」です。
25%ルールとは
希薄化率が25%以上となった場合、もしくは支配株主が変更となる場合には、原則として株主総会の決議にて株主の意思確認、または独立した第三者(第三者委員会、社外取締役など)からの意見が必要です。
300%ルールとは
希薄化率が300%を超えることは、株主を守るには不十分であるとされ、原則禁止です。ペナルティとして、上場廃止となるので注意しなければなりません。株主及び投資者の利益を侵害する恐れがないと認められる場合は除かれます。
2.法令の遵守
新株発行を行うには、会社法や定款に従う必要があります。本章では法令違反とならないために、どのような対処を行うべきかを解説します。
①株主からの株式発行差止め
募集株式の発行が株主に不利益を与える可能性がある場合、会社法210条に則り、株主は株式発行の差止めを請求できます。請求権に株式保有期間の指定はないため、名義を変更した直後でも請求が可能です。
法令・定款に違反する場合
「検査役」の調査がない場合や発行可能株式総数が規定以上に発行されていた場合は、法令・定款違反となります。
②引受人の支払い義務
下記に当てはまる「募集株式の引受人」には、支払い義務が発生します。(会社法212条)
取締役と通じて、不公正な金額で取引を行った場合
当該払込金額と本来の公正な価額の差額の支払いが必要となります。
なお、取締役と通じた場合に支払いが発生するため、通謀がなければ問題はありません。
現物出資財産の該当金額が募集価額に不足する場合
不足している金額の支払いが命じられます。ただし、現物出資財産を給付した引受人による善意であり、なおかつ重大な過失がない場合、募集株式の引受け申し込み・総株引受契約の取り消しが可能です。
③発行株式の無効化
新株発行、自己株式の処分が法令・定款に違反しているにも関わらず実行された場合、発行行為自体が「違法」となります。
募集株式の発行無効化
株式の発行を無効化するには、訴えを起こす必要があります。なお、訴えを提起できるのは株主、取締役、執行役、監査役、清算人だけです。
提起は株式発行の効力が発生した日から6ヶ月以内、非公開会社の場合は1年以内でなければなりません。
発行の無効化が確定すると、発行された株式を将来的に失効させることが可能です。この際、発行会社は株主へ払込金額を支払う必要があります。
なお、発行会社の財務状況から払込金額が不相当であるとみなされた場合、払込金額の増減が命じられます。
発行済み・流通している株式の無効原因
すでに発行・流通している株式を無効とするのは容易いことではありません。既存の株主の損害に繋がりかねないためです。
無効となる原因は、限定されており、以下があります。
- 定款で定めた発行株式総数を超えている
- 定款で定められていない種類の株式発行
- 株主総会で特別決議を行わずに株式発行した
3.公正な取引の実施
①既存株主の利益を損なわないか
上記でも解説したように、株式の希薄化などにより既存株主が損害を受けない取引の実施が求められます。そのためにもファイナンス手法、実施する時期、発行条件等を十分に考慮する必要があります。また、既存株主へ合理的説明を随時行える状況でなければなりません。
②条件決定のプロセスが公正か
条件決定のプロセスが公正なものであるかどうか、株主への説明を十分果たす必要があります。株主総会の特別決議で内容を開示する必要があるため、経営者や支配株主にだけ利益が配当されていると見なされないよう、注意が必要です。
4.まとめ
- 新株発行の増資において、既存株主の損失や損害は回避しなければならない。
- 株式の希薄化率を常に意識しなければ上場廃止となりかねない。
- 公正な取引を実施するために、政府が定めた指針なども参考としよう。
おわりに
新株発行(増資)はこれまで解説してきたように、様々な目的を持っています。資金調達の手段の1つであることはもちろん、資本の基盤強化やM&Aにもつながるものです。
特に株式の希薄化と法令の遵守に関して気をつけなければなりません。上場廃止や株式の無効化が実行されると、払込金額の支払いが命じられるためです。
注意点を把握し、適切な資金調達を心がけましょう。
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