株主にはどんな権利がある?株式比率ごとにできることを一覧で解説
Index
- この記事でわかること
- はじめに
- 1.増資の手続き7ステップ
- ①募集事項を設計する
- ②株主総会 or 取締役会で募集事項を決議する
- ③第三者からの申込を募る
- ④株主総会 or 取締役会で割当内容を決議する
- ⑤第三者から出資を募る
- ⑥第三者に新株を割り当てる
- ⑦登記変更の手続きを行う
- 補足:そのほかの増資の手続きは?
- 2.増資に関する必要書類
- ①投資契約書
- ②株主間契約書
- ③変更登記申請書
- ④総数引受契約書
- ⑤定款変更案
- ⑥有価証券通知書
- ⑦有価証券届出書
- 3.増資手続きにかかる費用
- 4.増資手続きの際に知っておきたいポイント
- ①持株比率について
- ②発行可能株式数について
- ③払込金額(株価)について
- ④現物出資について
- ⑤DES(Debt Equity Swap)について
- ⑥税金について
- ⑦登記変更手続きについて
- まとめ
- おわりに
この記事でわかること
- 増資の手続きに関する必要な基礎知識(大まかな流れや必要書類、費用など)
- 増資の手続きをするときに知っておくと役立つポイント
はじめに
増資とは、募集株式の発行によって、会社の資本金を増やす手続きです。
募集株式の発行とは、「株式を引き受けてくれる人はいませんか?」という募集に対して「私が引き受けます」と申し込んできた人に、株式を割り当てること。
また、株式と引き換えに資金を得ることについては「出資を受ける」などとも表現されます。
株式と引き換えに資本金を得る形となるため、銀行などからの融資と違い返済の必要がない点がポイント。
しかしその一方で、会社は出資を行った株主に対し、それに見合うだけの利益をもたらすよう努力する必要があります。
加えて、株式を割り当てる数が増えれば、それだけ経営に対して意見を言える人が増えることにもなります。
そのため、増資は好き勝手に行うのではなく、一定の手続きに従って実施しなければいけません。
この記事では、増資の手続きに関して必要な知識となる、大まかな流れや必要書類、費用などについてご紹介しています。
手続き時に知っておくと役立つポイントも記載しているので、あわせてお読みいただければ幸いです。
またKnowHowsでは、増資のときに重要となる株価計算を無料で行える「株価算定ツール」もご用意しています。
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1.増資の手続き7ステップ
増資の手続きには様々なものがありますが、ここでは有償増資(新株を発行して資金調達を行い、資本金を増やす方法)のうち、第三者割当増資の大まかな流れや必要な書類、費用についてご紹介します。
第三者割当増資のステップは下記7つ。
- 募集事項を設計する
- 株主総会or取締役会で募集事項を決議する
- 第三者からの申込を募る
- 株主総会or取締役会で割当内容を決議する
- 第三者から出資を募る
- 第三者に新株を割り当てる
- 登記変更の手続きを行う
①募集事項を設計する
最初に、主に以下のことを募集事項として設計します。
- 新株を割り当てる投資家(以下、第三者)
- 募集株式の数
- 募集株式の払込金額(株価)
- 募集株式の払込期日(もしくは払込期間)
- 募集株式の払込場所
このほかに、現物出資を目的とする場合はその詳細、増資によって増える資本金や資本準備金に関する事項なども決めなければいけません。
②株主総会 or 取締役会で募集事項を決議する
募集事項を策定したら、株主総会を開催し、特別決議を得る必要があります。なお、取締役会設置会社であれば、取締役会の決議に委任します。
③第三者からの申込を募る
募集事項を元にした通知内容を作成し、第三者からの申込を募ります。なお、通知は、払込期日(もしくは払込期間の初日)の2週間前までに行わなければいけません。
④株主総会 or 取締役会で割当内容を決議する
第三者からの申し出を集めたら、それぞれにどの程度株式を割り当てるのかの検討です。
その内容で実施するために、再び株主総会(もしくは取締役会)を開催し、決議を取得します。
⑤第三者から出資を募る
株主総会(もしくは取締役会)で決定した割当内容を第三者に通知し、出資を募ります。なお、通知は、払込期日(もしくは払込期間の初日)の前日までに行わなければいけません。
⑥第三者に新株を割り当てる
第三者からの出資を確認できたら、新株割当を実施します。
⑦登記変更の手続きを行う
新株の割当を行ったら、その日から2週間以内に、登記変更の手続きを行います。
補足:そのほかの増資の手続きは?
増資(有償増資)には、第三者割当増資のほかに株主割当増資や公募増資があります。
- 株主割当増資……株主の持株比率に合わせて割当数を決め、発行する方法です。
- 公募増資……不特定多数の投資家に向けて募集をかける方法を言います。
発行した株式を誰に割り当てるか、という部分に違いがあり、
大まかな流れ、必要な書類、費用については、基本的には第三者割当増資と同じとなります。
2.増資に関する必要書類
第三者割当増資では、次のような書類が必要です。
それぞれ解説していきましょう。
①投資契約書
投資契約書は、発行会社・経営株主・第三者の間で締結する契約書です。
記載する内容は主に投資実行までの規律で、投資内容に関する事項、表明保証、誓約事項などが一般的となっています。
②株主間契約書
株主間契約書は、発行会社と株主全員の間で締結する契約書です。
こちらはIPOの努力義務、取締役の指名権、情報提供など、主として投資実行後の規律が盛り込まれます。
③変更登記申請書
変更登記申請書は、新株を割り当てた際に、法務局に提出しなければならない書類です。法務局のウェブサイトに申請書様式が用意されているので活用しましょう。
ただし非公開会社か公開会社か、非公開会社でも取締役会を設定しているかいないかによって用いる申請書が異なるので、注意してください。
④総数引受契約書
総数引受契約書は、総数引受方式を採用する場合に、発行会社と各第三者とそれぞれ交わす契約書です。
総数引受方式とは、事前に第三者と募集事項を取り決めておくことで、募集事項の通知から割当内容の通知までを省略できる手続きを言います。時間の短縮に繋がることから、実務において比較的採用されます。
総数引受契約書には、募集事項(発行する株式の種類や株式数、払込金額、払込期日など)とあわせて、「誰に、何株割り当てるのか」という詳細を明記するのが一般的です。
⑤定款変更案
定款変更案は、種類株式(特別な権利が付された株式)を割り当てる際に必要な書類です。
なお、定款を変更するには株主総会の特別決議を得なければいけません。変更内容だけでなく、変更の理由についても明確にしておきます。
⑥有価証券通知書
有価証券通知書は、1千万円以上1億円未満の有価証券を発行する場合に必要な書類です。
⑦有価証券届出書
有価証券届出書は、1億円以上の有価証券を発行する場合に必要な書類です。この書類を提出する際は、あわせて目論見書も提出する必要があります。
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3.増資手続きにかかる費用
第三者割当増資に係る費用には、登記変更手続きにおいて発生する登録免許税があります。
登録免許税は、増資額の7/1000を掛けた金額(3万円未満の場合は3万円)です。たとえば資本金が500万円が増えた場合は、3.5万円を納めなければいけません。
4.増資手続きの際に知っておきたいポイント
①持株比率について
増資手続き、とりわけ第三者割当増資のときに、最も気をつけなければならないひとつが、経営陣の持株比率の低下です。
持株比率とは、会社全体の発行済株式総数に対して、自分が保有している株式数はどのくらいの割合を占めているのかを示す数字を言います。かつ、会社の支配権の強さに直結するものです。
たとえば、1000株に対して、保有している株式数が700株なら、持株比率は70%です。持株比率が70%なら、増資の承認や定款の変更を単独で決めることができます。
ところが、第三者割当増資で新たに株式を発行すると、経営陣の持株比率が否応なしに低下します。会社存続を左右する意思決定のスピードが落ちるだけでなく、場合によっては経営陣の交代という可能性も出てくるのです。
下記では、経営陣の持株比率が低下するカラクリを、詳しく解説をしています。よければ合わせてご覧ください。
増資とは?気をつけることは?実行前に抑えたい基礎知識と注意点2つ
②発行可能株式数について
株式会社は、定款によって、発行できる株式数をあらかじめ定めることになっています。
そのため、発行する株式の数は慎重になる必要がありますが、増資によって発行可能株式数を超える場合は、事前に定款の変更をしなければいけません。
前章でも紹介したように、定款の変更には株主総会の特別決議が必要です。
③払込金額(株価)について
現物出資とは、第三者が株式を取得する際に、金銭の代わりに財産を出資することを指します。たとえば、土地や建物、有価証券、特許権などがそれにあたります。
現物出資を目的とする場合には、募集事項において、対象となる財産の内容と価額についての規定が必要です。
また裁判所に選任された検査役の調査を避けるために、たとえば財産の評価額を500万円以下にしたり、発行する株式数を発行済株式数の10分の1以下に抑えたりするのが一般的となっています。
④現物出資について
払込金額を決める際は、先に適正な価格がいくらなのか算出する必要があります。
有利発行とみなされれば、既存株主が不利益を被る可能性が高く、株主総会できちんとした説明が求められるからです。
ただ非公開会社の場合、取引相場ないため、DCF法や修正純資産法などで算出することになります。深い知識が必要になるため、専用の計算ツールを利用するか、専門家に相談するのが無難です。
KnowHowsでも、税理士監修のもと、オンライン上で本格的な株価算定が行えるツールをご提供しています。
無料でお試しいただけますので、もしよければご活用ください。
⑤DES(Debt Equity Swap)について
DES(Debt Equity Swap:デット・エクイティ・スワップ)とは、前項の現物出資のひとつで、第三者が株式を取得する際に、金銭の代わりに金銭債権を出資する方法です。
たとえば、500万円分の債権を手放す代わりに、500万円分の株式を引き受ける、といった具合です。
会社にとっては、借金を減らしつつ資本を増強できるので、財務体質を改善に繋がります。
一方で、課税額が増加したり、経営陣の持株比率が大幅に低下したりする可能性もあることから、実行には慎重さが求められます。
⑥税金について
増資によって資本金が一定額を超える場合、税金の負担が増えるので注意が必要です。
たとえば資本金が1億円を超えると、法人税の税率が15%(一部の企業を除く)から23.20%になります(参考・国税庁・No.5759 法人税の税率)。
また同様に資本金が1億円超になると、地方住民税の均等割も高くなります(参考・総務省・令和元年度 法人住民税・法人事業税 税率一覧表)。
⑦登記変更手続きについて
登記変更手続きでは、株式会社変更登記申請書(募集株式発行)のほか、前章で紹介した書類を漏れなく準備し、法務局に提出する必要があります。
書類の用意は、ご自身で法務局のウェブサイトを見たり、直接問い合わせたりしながらできないこともありません。
ただ、不備があった場合、再度法務局に出向かなければならず、想像以上に時間がかかることがあります。
また、登記変更手続きは、割当の実施日から2週間以内に行わなければいけません。もし期限内に申告をしていない場合、発起人や取締役などに対して100万円以下の罰金(過料)が科されます。
不安な場合は、司法書士といった専門家に相談するのが無難でしょう。
まとめ
- 増資は募集事項の設計から始まり、登記変更の手続きまでが一連の流れとなる。この流れは第三者割当増資・株主割当増資・公募増資、いずれの有償増資の場合も基本的に同じ。
- 増資をする際は、発行可能株式数に注意する。払込金額を決める場合は、計算ツールを使うか、専門家に相談するのが無難。といったようにいくつかの注意点がある。
おわりに
増資の手続きでは、適切な募集事項の設計や契約書の作成など、適切に決めなければいけないことがいくつもあります。
迷った際は、独断をせずに、専用のツールや専門家に頼るようにしましょう。
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