増資とは?気をつけることは?実行前に抑えたい基礎知識と注意点2つ
- 第三者割当増資
- エクイティ・ファイナンス
- デット・ファイナンス
- 株主資本コスト
- 公募増資
- 株主割当増資
- 株式の希薄化
- 有利子負債コスト
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Index
この記事でわかること
- 増資の種類とそれぞれの特徴{無償増資と有償増資(株主割当増資・第三者割当増資・公募増資)
- 増資のメリット・デメリットについて
- 増資によって持株比率の低下するカラクリ
- 増資によって株価が変動する理由
はじめに
増資とは、企業の資本金を増加させることです。具体的には、剰余金を資本金に振り替えたり、新たに株式を発行するなどの方法があります。
この記事では、増資を把握する上で必要な知識をまとめました。増資を行う上での注意点も2つ記載しているので、実行する際の参考としてください。
またKnowHowsでは、株主構成比率の把握や、増資にともなう議決権の変動などを無料でシミュレートできる「資本政策シミュレータ」もご用意しています。
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1.増資とは?
最初に、増資の概要やメリット・デメリット、融資との違いなどについてご紹介します。
①増資=企業の資本金を増加させること
増資は、企業の「資本金」を、「増」やす行為を言います。
では、この資本金とは何でしょうか。
企業は、基本的に「どこから資金を調達したのか」「その資金を何に使っているのか」、このふたつが重要な柱となっています。前者は資本と呼ばれて貸借対照表の右側に、後者は資産と呼ばれて貸借対照表の左側に記載されます。
資本の部分は、大まかに純資産の部分と、負債の部分に分かれます。このうち、純資産の中に含まれているのが資本金です。
資本金は、企業(正確には株主)に帰属するお金で、言わば安定して事業を回せるかどうかの指標となる大事な部分。
それらを増やす行為である増資は、財務体質を強化させるものと見られています。
②増資にはどんな種類がある?
増資には、無償増資と有償増資の2種類に大きく分けることができます。
・無償増資
無償増資とは、純資産内にある利益剰余金や利益準備金、資本剰余金などを、資本金に組み入れる方法です。
たとえば資本金が200万円、利益剰余金が100万円だったとしましょう。このとき、利益剰余金の100万円を資本金に移動し、資本金を300万円にするのが無償増資です。
無償増資の代表的な方法としては、株式分割があげられます。
・有償増資
有償増資とは、株式を発行して株主から資金調達を行い、資本金を増やす方法です(募集株式の発行)。
有償増資としてよく用いられるのが、株主割当増資・第三者割当増資・公募増資の3種類です。
有償増資 | 概要 |
---|---|
株主割当増資 | 株主の持株比率(詳細後述)に合わせて新株を割り当て、資金を調達する方法 |
第三者割当増資 | 特定の投資家(新規・既存関係なし)に新株を発行し、資金調達をする方法 |
公募増資 | 不特定多数の投資家に対して新株を発行し、資金調達をする方法 |
なお、単に増資と言う場合、有償増資を指すのが一般的となっています。そのため、本記事では、これ以降、増資=有償増資とします。
③増資のメリット・デメリット
・増資のメリット
増資のメリットはさまざまですが、最も大きいのは、信用力が向上することと返済義務がないことでしょう。
たとえば、取引会社に「財務体質がしっかりしている会社」と認識され、取引が行いやすくなったり、金融機関に、「様々な投資家も信用している企業だ」と思ってもらえる可能性が高くなります。
これによって資金調達がスムーズになるのも増資のメリットの一つと言えます。
また、増資では、株主や投資家からの株式の払込金は会社の純資産となるため、返済義務はありません。
・増資のデメリット
新たな株式の発行によって資金が調達できるのは、株主や投資家が、会社が成長して株価が上がり、自分たちに利益が入ってくると見込んでいるからです。
具体的には、インカムゲイン(配当金)やキャピタルゲイン(発行価額と売却価額の差によって発生する利益)を期待しています。
そのため、会社は、増資した瞬間から、常に株主に対する利益を意識しなければいけません。現在の経営がどのような状況なのかを定期的に情報開示(ディスクロージャー)して、説明する義務も生じます。
なお、インカムゲインとキャピタルゲインの2つを、株主の協力を得て資本を構築するときにかかるコストという意味合いから、株主資本コストと呼びます。
また、増資によって資本金が増え、一定の額を超えた場合、税金の負担が増加します。具体的には、資本金が1億円を超えると法人税や地方住民税が高くなります。
加えて、増資のうち、公募増資と第三者割当増資は、持株比率の低下にも注意しなければいけません。この仕組みについては、次章で詳しく解説します。
・増資のメリット・デメリットまとめ
メリット | デメリット |
---|---|
財務体質が強化される | 株主に対する利益をもたらしたり、ディスクロージャーの義務を果たす必要がある |
信用力が向上して、より資金調達がしやすくなる | 法人税や地方住民税が高くなる場合がある |
返済義務がない | 増資の方法によっては持株比率が低下する |
③増資の基本的な流れ
増資は、会社法によって手続きが規定されています。基本的には、
- 株式の募集事項を株主総会(もしくは取締役会)で決定して、申し込みを募る
- 申し込みがあったら、再度株主総会(もしくは取締役会)で割り当てる数を決定する
- 出資を受ける
- 登記変更の手続きをする
といった流れです。
より詳しい手続きの流れや、実施するときの注意点については、下記でご紹介しています。あわせてご参考ください。
増資の手続き7ステップ!必要書類、費用、注意点も合わせて解説
④融資との違い
会社の資金調達方法には、増資のほかに、融資(借入)があります。これは、金融機関等からお金を借り入れる行為です。
株式発行で資金を調達することを、エクイティ・ファイナンスと言います。それに対して、融資はデット・ファイナンスと呼ばれています。
また、融資の際に発生する利子を有利子負債コストと言います。
増資と融資の最大の違いは、返済義務があるかないかです。以下に、2つの違いをまとめましたのでご覧ください。
違い | 増資(エクイティ・ファイナンス) | 融資(デット・ファイナンス) |
---|---|---|
資金調達元 | 投資家 | 金融機関等 |
コスト | 株主資本コスト(インカムゲインやキャピタルゲイン) | 有利子負債コスト(利子) |
返済義務 | 無 | 有 |
2.増資するなら持株比率の変化の予測も忘れずに
増資のデメリットとして、持株比率の低下があります。
これは経営者にとって、非常にシビアな問題です。増資を行うときには、持株比率の予測が重要と言えるでしょう。
以下、詳しくご説明します。
なお、持株比率の低下は公募増資と第三者割当増資で起こる現象ですが、ここでは第三者割当増資(とりわけ未上場企業が実施する際)に焦点をあてていきます。
①なぜ持株比率の低下に注意しなければならないか
持株比率とは、当該企業が発行した株式を、誰がどの程度保有しているのかを表した数値です。たとえば1,000株発行している企業の株式を500株持っている場合、持株比率50%ということになります。
では、なぜ、持株比率の低下に注意しなければならないのでしょうか。
最も大きな理由は、経営者の支配力低下に直結するためです。
第三者割当増資をするたびに、経営者の持株比率が下がるカラクリから、順に説明しましょう。
・第三者割当増資を行うと、経営者の持株比率が下がる
たとえば1,000株発行している企業があり、その株式の90%を経営者が保有していたとします。
その企業が、さらなる成長のために500株を発行(第三者割当増資)したとします。このとき、経営者の持株比率はどうなるでしょうか。
経営者の持株比率は、60%(持株数900株/発行済株式数1500株)まで下がります。
・持株比率=経営者の生命線
株式会社では、経営の意思決定が株主総会に委ねられています。
その際、持株比率が高ければ、重要な事項であっても独自に決定できるのが株主総会の特徴です。経営者の持株比率が多ければ、それだけ自由に経営をすることが可能、というわけです。
ところが持株比率が低いと、別の株主が賛成してくれるかどうか聞かなければいけません。迅速に実行したい事項でも、足踏みをしてしまう可能性が出てくるのです。
またそれだけでなく、株主総会では、取締役や役員の解任なども決めることとなっています。持株比率によっては、退陣を余儀なくされることも、なくはないのです。
②変化予測は複数回を行おう
以上から、第三者割当増資を実施する際は、事前に経営者の持株比率がどの程度下がるのか、予測が重要になってきます。
誰に、いくらの株式を、いくつ発行するのか。こうした計画を資本政策と言います。
資本政策では、いくつかのシチュエーションを用意し、複数のシナリオを策定するのが一般的です。
KnowHowsでは、そうしたシミュレーションを手軽に行える資本政策ツールをご用意しています。もしよければ、利用を検討してみてください。
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3.増資によって株価は変動する
増資をするとき、持株比率の低下には慎重にならなければいけません。
しかし、もうひとつ注意しなければならないことがあります。増資を行うと株価の変動が起きやすい点です。
①株価変動の仕組み
なぜ、増資によって株価が変動するのでしょうか。その理由を解き明かすには、先に株価が変動する仕組みについて抑える必要があります。
株価というのは、基本的に需要と供給によって左右されます。
たとえば業績がよく、多くのインカムゲインやキャピタルゲインが見込めると、その株式に対する需要が高まるので、株価は上昇していきます。
一方、業績に不安がある場合は、株式になかなか買い手がつきません。そのため、結果的に株価は下落していきます。
②増資によって株価の変動が起きやすい理由
増資を行うと、株価の変動が起きやすいのは、需要と供給のバランスに大きく関わるからです。どのように影響するのか、ご説明しましょう。
・有償増資を行うと株式の希薄化が起きる
増資を行うと、株式の希薄化が起きます。これは、新株発行により、1株あたりの価値が低下すること。
それにより既存の株主からの期待値が下がり、結果的に株価が下落してしまうことがあるのです。
・株価が上がる場合もある
ただ、増資によって必ずしも株価が下がるわけではありません。
投資家に「資金調達で、この企業は成長するであろう」と思ってもらえれば、株価が上昇することもあります。
③株価変動に伴う注意点
増資による株価の変動は、さまざまな要因が絡んできます。
何をすれば下がる(上がる)というのは状況によりけりで、一概に言うことはできませんが、投資家から見た期待、将来の利益や事業の価値をどう見立てるのかが大きく影響します。
つまり、株価は需要と供給で変動することは確かです。
大切なのは、「なぜ有償増資を行うのか」「資金使途は何か」「どのような事業計画で増資を行うか」「その信ぴょう性はどの程度か」など、投資家から見て納得のできる内容で、増資を行うことです。
また、株価に関しては事業計画や現在の貸借対照表をもとにさまざまな方法にて相場、算定価格を割り出します。増資時の参考価格を割り出す方法が一般的にあることに留意ください。
事業上必要な増資金額は、割り当てる株数や株価を計画しないで根拠なく主張し続けることができない場合があります。
まとめ
- 増資とは、会社の資本金を増加させること。財務体質の強化によって信用力がアップし、新たな株主の獲得や金融機関からの融資などが実現しやすくなる。
- 増資の注意点として、第三者割当増資を行った際に、経営者の持株比率が低下することがあげられる。資本政策を事前に練り、ベストな数で発行できるようにしておこう。
- もうひとつ注意したいポイントとして、増資を行うと株価の変動が起きやすい点がある。増資を実施する際は、投資家から見て納得のできる内容かどうか十分に検討しよう。
おわりに
増資は、企業の成長に欠かせないものですが、注意しなければならないポイントがあります。
メリットばかりにとらわれず、慎重に実行するようにしてください。
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