株主にはどんな権利がある?株式比率ごとにできることを一覧で解説
この記事でわかること
- 公的融資(政府系金融機関からの融資、地方公共団体からの制度融資)の着眼点
- 金融機関の着眼点と格付の種類
- エンジェル投資家の着眼点
はじめに
個人資産を使って、創業間もない企業を支援してくれるのがエンジェル投資家です。
彼らから投資してもらうためには、企業のどこに注目しているのか把握することが有効な手段となります。
この記事で、公的融資や金融機関と比較しながら、詳しく解説します。
また、KnowHowsでは、専門家に事業の悩みを無料で相談できる「みんなで事業相談」や、資金調達時に考えなければいけない議決権の変動などを無料でシミュレートできる「資本政策シミュレータ」をご用意しています。
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1.公的融資・金融機関の着眼点
では、先に公的融資や金融機関の着眼点を見ていきましょう。
①公的融資
公的融資には政府系金融機関からの融資や、地方公共団体からの制度融資が挙げられます。それぞれ、次の点を重視する傾向があります。
公的融資 | 着眼点 |
---|---|
政府系金融機関(日本政策金融公庫・商工組合中央金庫) | ・資金使途が具体的に説明できているか |
・達成目標の実現可能性 | |
・事業計画の現実性、完成度 | |
・競合製品・サービスとの違いは何か | |
・社内の人員体制は整っているか | |
・外注先や委託先はどこか | |
地方公共団体 | ・創業の目的や動機 |
・年間の収支計画の数字 | |
・個人の借入状況 | |
・保証協会の信用保証が得られるか |
・創業融資
日本政策金融公庫や制度融資の場合、創業間もない事業をサポートする創業融資を実施しています。この融資の審査基準は、次の通りです。
着眼点 |
---|
・創業の動機やプロセスはどういったものか |
・自己資本金はあるか(創業費用の1/2~1/3が理想とされる) |
・事業計画の現実性、完成度 |
・返済計画の現実性 |
・保証人、担保の有無 |
・補足資料(創業計画概要書・3か年損益計画書、資金繰り表など)はあるか |
②金融機関
金融機関では、企業の償還能力に主眼を置いています。具体的には、以下のポイントがよく見られる傾向にあります。
着眼点 | 補足 |
---|---|
純資産 | ・実質純資産がプラスか |
・自己資本率は高いか(10~20%以上が理想とされる) | |
借入金 | ・借入金月商倍率は低いか(2か月以内が理想とされる) |
資金使途 | ・調達した資金を何に使うのか |
・調達した資金をどのくらい使うのか、その根拠となる資料はあるのか | |
返済財源 | 以下が返済金額より上回っているか |
短期資金…売上入金額 | |
長期資金…税引後経常利益+減価償却費 | |
保証人や担保 | ・保証人はいるのか(経営者の場合がほとんど) |
・担保はあるのか(不動産やABLなど) | |
現場の状況 | ・社員の態度はどうか |
・社内の雰囲気はいいか | |
業界の動向 | ・拡大傾向か、縮小傾向か |
・競合への対策は練られているか |
・債務者格付について
金融機関では、上記に加えて、債務者格付が重要視されています。債務者格付とは、各金融機関がそれぞれ独自の査定方法で、融資先に対して行う格付です。
格付は、主に以下の5段階に分かれます。上になるほど審査が通りやすく、かつ低金利で借りることができます。
格付の種類 | 対象となる企業 |
---|---|
正常先 | ・業績が良好で、返済能力が非常に高い企業 |
要注意先 | ・金利減免や棚上げを行っている企業 |
・元本返済、利息支払いを延滞している企業 | |
※要注意先のうち「3か月以上延滞している」「貸出条件を緩和してもらっている」企業は、要管理先と呼ばれる | |
破綻懸念先 | ・赤字状態が続いている企業 |
・経営改善計画が著しく進んでいない企業 | |
実質破綻先 | ・深刻な経営難で、再建が不可能な企業 |
破綻先 | ・法的・形式的に経営破綻した企業 |
2.エンジェル投資家の着眼点
エンジェル投資家は、スタートアップ企業やベンチャー企業に資金提供を行い、株式の価値を上げることで利益を得ます。そのため、主に次のポイントを見ます。
①経営者の資質
第一に、経営者の資質です。企業が成長し、大きな収益を生み出すかどうかは経営者にかかっています。
「業界の動向を掴めているか」
「競合の規模や戦略を把握しているか」
「ビジョンを実現するための計画は、きちんと練られているか」
「失敗のリスクを、どの程度理解しているか」
これらが見られることが多いので、心に留めておいてください。
②株式そのものの魅力
第二に、株式そのものの魅力です。エンジェル投資家から資金調達する方法に、優先株式の発行と新株予約権の付与があります。これらに、どの程度の魅力があるのか見られるのも一般的です。
以下に、そのポイントと理由、方法をまとめました。
・優先株式で見られやすいポイントと理由・注意点
①普通株式より利益配当請求権を優先してくれるか | |
---|---|
理由 | 企業が利益を上げたときに優先的に配当金が得られるため。普通株式に配当がなくても、分配されるケースもある。 |
注意点 | 優先度が高い場合は、議決権を制限することも検討する。 |
②普通株式より残余財産分配請求権を優先してくれるか | |
---|---|
理由 | M&Aの対価を優先的に得られるため。 |
注意点 | 単体で強い効果を発揮することは少ない。 |
③取得請求権はあるか | |
---|---|
理由 | 状況に応じて議決権を持つことができたり、持株比率の希釈化を防止できるため。時価総額(バリュエーション)が下がった場合でも、相応の手当が受けられるメリットもある。 |
注意点 | 対価に普通株式の取得ではなく現金を設定できるが、ケースとしては多くない。 |
④拒否権はあるか | |
---|---|
理由 | 企業の行為に対してストップをかける余地が生まれ、自らの権利の安定化が図れるため。 |
注意点 | 幅広に設計してしまうと、運営に支障をきたす可能性がある。株主が選んだ取締役が賛成した事項は、種類株主総会の承認がなくとも実行できるなど、設計内容を慎重に検討する。 |
⑤選任権はあるか | |
---|---|
理由 | 積極的に経営に参与できるため。 |
注意点 | 幅広に設計してしまうと、役員の構成が容易に変更できなくなる可能性がある。成長に合わせて柔軟に人員を入れ替えていきたいのであれば、契約上の権利に留めておく。 |
・新株予約権で見られやすいポイントと理由・注意点
①払込金額・行使価格はどのくらいか | |
---|---|
理由 | 行使時点での株式価格-(払込金額+行使価格)の合計が、投資家の利益になるため。 |
注意点 | 払込金額がゼロ円だと資金調達に繋がらない。一方、高額な設定だと投資家からメリットを感じてもらえなくなる。 |
②ディスカウント(※1)はどのように設計されているか | |
---|---|
理由 | 決められた数字によって、発行される株式の数が増減するため。 |
注意点 | ディスカウント率が高いと発行する株式が増え、企業の持株比率が下がる。 |
③バリュエーションキャップ(※2)はどのように設計されているか | |
---|---|
理由 | 発行される株式数が、少なくなりすぎるのを防げるため。 |
注意点 | 設定価格が高すぎると投資家が、低すぎると企業側が不利になるため、双方で相談して金額を決めることが理想。 |
(※1)転換価額を割引する方法。割引率が高いほど転換できる株式が増え、投資家のインセンティブとなる。
(※2)転換価額を、「あらかじめ設定したバリエーションキャップの金額」÷「転換前の発行済株式総数」、あるいは「基準額」のどちらか低いほうに決める方法。企業が時価総額が高まるまで待ち、株式の発行数をあえて減らす行為を予防できる。
まとめ
- 政府系金融機関は「企業が融資条件を満たしているか」、制度融資では自己資本金などを中心に審査する。
- 金融機関は純資産や返済財源などから、償還能力があるかを見る。
- エンジェル投資家は、主に経営者の資質と株式そのものの魅力に主眼を置いている。優先株式は利益配当請求権や残余財産分配請求権をどの程度優先してくれるか、取得請求権や拒否権の有無など。新株予約権は、実際に投資する金額や発行株式数を見ることが多い。
おわりに
エンジェル投資家にとって、投資によるリターンは最重要事項です。
自社に融資することでどんなメリットがあるのか、客観的な視点を常に忘れないようにしましょう。
また、最初にお伝えしたように、KnowHowsでは「みんなで事業相談」や「資本政策シミュレータ」といったサービスをご用意しています。迅速、かつトラブルなく資金調達をするための術としてください。いずれも利用は無料です。
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