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新型コロナ不況下の解雇はどこまで認められるか(第3回)

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0.はじめに

 第2回コラムでは、「整理解雇の4要件」のうち3つまでを当てはめて検証してきました。
 最終回の今回は、4つめの「整理対象者の選定の合理性」について検証し、経営者に求められている配慮とは何か?を考えてみたいと思います。

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1.整理対象者の選定には合理的な基準が必要

 4つめの要件「整理対象者の選定の合理性」は、解雇してもやむを得ないと思われる者を選考する基準が合理的なものであったかを評価するものです。
 一般的に「解雇による生活への影響の大小」「(従業員の日常の働きぶりから)企業の維持や再建に貢献することへの期待の大小」などが挙げられます。

 本件のように新型コロナ感染拡大の影響による経営悪化で全員解雇せざるを得ない場合にまで適用されるものではありませんので、同社の解雇にこの基準が適用されるとはいえません。
 ただし、だからといって解雇が認められると安易に捉えるべきではないと考えます。

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2.タクシー業界が抱える問題

 なぜ、解雇が認められると安易に捉えるべきではないのでしょうか?
この点、少しでも早く受給してもらった方がよいと同社社長が説明した「失業手当」を取り上げておきたいと思います。

 「失業手当」は年齢により受給額が大きく変わり、高年齢者の受給額はそれ以外の年齢の労働者に比べて著しく少なくなってしまうため、65歳を超えて就労する人の割合が増えていく中でこの給付格差が問題となってきています。

 タクシー業界が抱える労働力不足の問題として65歳以上の高年齢労働者の割合が高いことが挙げられますが、解雇されたドライバーにもそのような方が多くいらっしゃいました。
 同社社長の説明に対し、高齢ドライバーからは「高年齢者の受給する失業手当が著しく少ないことをちゃんと考えたのか?」と質問が投げかけられています。そして、この質問に同社社長が真正面から回答できませんでした。

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3.合理的な基準とするために必要な配慮とは

 継続的な職を失うことと引き換えに得られる僅かな「失業手当」が、医療費の増大等で経済的に苦しい高年齢労働者の生活の支えになるのか疑問があるところです。
 客観的事実としては、「失業手当」の受給格差の問題は国が取り組む問題であって、同社社長が責任を負うものではありません。

 しかし一方で、解雇によって職を失う従業員に対し経営者は最大限の配慮を払うよう、法は求めています。
 これは、一時的な「失業手当」の受給など関係なく、個々の従業員が経済的にどの程度困窮してしまうのかを把握し、出来る限りの配慮を求めている、と言い換えることができます。
 このようにみたとき、失業手当の受給格差は解雇問題の埒外ということで済ませてよいものではなく、「解雇による生活への影響の大小」として何らかの配慮をすべきだったように思います。

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4.終わりに

 新型コロナ感染拡大の影響により企業が直面している解雇の問題は、深刻な経営の悪化と今後の回復の見通しが立たないという点で、実際上はやむを得ないと評価できるでしょう。

 しかし、やむを得ない解雇が法的に有効といえるかどうかは別問題です。

 法的に有効であることが全てではありませんが、一方で、法によって規制されているのはなぜか?を考えることで、従業員の生活の一部を預かる経営者として事前に配慮すべきこと、慎重に判断しなければならないことが自ずからみえてくるのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

今坂 啓

上場企業社員(経営・財務戦略系以外)

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社会保険労務士有資格者として、人事労務の第一線にて実務を担っております。

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