新型コロナ不況下の解雇はどこまで認められるか(第1回)
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0.はじめに
新型コロナ感染拡大の影響により倒産する企業が増加しています。
倒産となれば企業が有する様々な資産を清算することになりますが、この中で最も頭を悩ませるものの一つに「従業員の解雇」が挙げられるのではないでしょうか。
そこで今回は、「ドライバー600人全員を解雇」で話題となった、ロイヤルリムジンタクシーの事件を主題にして、不況下における解雇の在り方について検討してみたいと思います。
1.ロイヤルリムジンタクシーが投げかけた問題とは何か
まず、簡単に本件を振り返っておきたいと思います。
去る2020年4月、新型コロナ感染拡大による外出自粛で業績が悪化し今後の回復が見込めないとして、ロイヤルリムジンタクシーのグループ各社のドライバー約600人を解雇する、という報道が話題となりました。
このとき、当該会社の社長はおおまかに次の2点を従業員に説明していました。
(1)タクシー事業は歩合給と残業代からなる給与体系のため、手取りが激減する状態が続けば雇用保険「失業手当」の受給が不利になってしまうことから、少しでも有利な条件で「失業手当」をもらえるよう解雇を決断したこと
(2)解雇するといっても、あくまで事業の一時停止であり、新型コロナ感染拡大が収束した段階で希望者全員を再雇用すること
このような情報がネット上に流れ、当初は社長のやり方を「英断」と称賛する声が多かったようです。
しかし一方で、解雇通知が解雇日の前日という状況でドライバーの不信を招きました。
更に、グループ傘下の目黒自動車交通についてドライバーの一部の解雇を撤回する等、その一貫しない姿勢に、称賛は次第に「批判」に変わっていきました。
その後、多くの従業員は解雇を受け入れ会社を去りましたが、一部の従業員とは解雇無効を巡り争いが続いています。
2.不況下における解雇が有効といえるためには
本件は一般論として、会社の運営を共に支えてきた従業員に対する説明不足に問題がなかったかどうか、経営者の姿勢が問われているのだと思います。
では、この問題は法的観点でどのように評価できるのでしょうか?
不況等の経営上の事由により人員整理の必要が生じた場合に行う解雇を一般的に「整理解雇」と呼びますが、直接的にこのような形の解雇を規制する法律条文はありません。しかし解雇に関する裁判を通じて、解雇が有効といえるための4つ基準が形成されています。
(1)人員整理の必要性
(2)解雇回避の努力
(3)整理手段の妥当性
(4)整理対象者の選定の合理性
この基準を「整理解雇の4要件」と呼び、原則として、(1)をクリアしたら(2)、(2)をクリアしたら(3)…といった流れで判断していき、最終的に4つの基準をクリアした場合に解雇が有効となります。
ただ、必ずしも機械的に当てはめられるものではなく、具体的な紛争事案によって(1)が会社にとってあまりに深刻なものであったり、(2)を誠心誠意実行したとみられるような場合には、残りの基準の判断のハードルが低くなるなど、裁判所としては、総合的にみて解雇の有効性を判断しているといえます。
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