0.はじめに
前編コラムでは、休業手当の支払いが必要となるか否かの判断基準と、直接は基準に表れない考慮要素についてみてきました。
今回は前編を踏まえ、中堅規模以上のメーカーをモデルに詳細を検討してみたいと思います。
1.メーカー製造部門への休業手当の支払いは必要か
今回のポイントは、「新型コロナの影響によって、操業そのものが難しい状況か否か」という視点です。
まず、大幅な減産により製造部門への影響は大きい為、工場の生産を停止し、生産部門の従業員を休業させるというケースが考えられます。
しかし、アフターサービス部門や管理部門などが稼働しているような場合、工場の生産停止は不可抗力による休業ではなく、コロナ不況の影響を最小限に抑えるための施策と考えられます。
この場合、使用者の責任権限において行う休業と解釈されますので、休業手当を支払い、その補填として雇用調整助成金を申請するのが妥当な施策といえるでしょう。
繰り返しになりますが、会社として操業が難しいというレベルでなければ、基本的には休業手当の支払いありきで考える必要があります。
2.経営全体に与える影響を考えてみる
もっとも、休業は一律に実施というものではありません。生産停止の中でも稼働する人員(生産技術や生産管理)もいますし、他部署の応援で出勤させる人員を確保することもあるでしょう。
また、減産対応であれば必ずしも一定期間継続して休業とする必要はなく、例えば週1~2日の休業とするなど、休業による影響を最小限にすることで足りることもありえます。
生産設備を停止させることで稼働にかかる必要経費を抑制する効果も生じますので、これらをトータルでみたときに、経営にどのような影響が生じるかを考える必要があるでしょう。
無論、これらは製造部門に限った話ではありません。
間接部門においても、リモートワークによる事務所の閉鎖やフリーアドレス確保とあわせた執務フロアの縮小など、固定費や稼働にかかる必要経費を抑える施策を検討しましょう。
3.従業員が重要な「人財」であることを再認識
以上、前後編を見てきた通り、休業手当は労働者を守るための労基法上の措置であり、その支払いを行うか否かについて、経営者が経営状況だけを踏まえて判断できるとは限りません。
現在、休業手当の不払いに関する労働局への相談件数が増えており、一部メディアでも報じられているところですが、相談や報道の全てに休業手当の支払いが必要とは言わないまでも、その一部には労基法を正しく解釈していない為に違法状態となっているものもあります。
会社にとって最大の経営資源である「人財」は、一度その信頼を失えば、経営の回復期に思ったように再構築が進まない可能性があります。
このことを念頭に置きつつ、より慎重な検討が望まれるところです。
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