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エンジェル投資家による資金調達時の契約

この記事でわかること

  • 優先株式発行による資金調達の流れと必要書類
  • 新株予約権付与による資金調達の流れと必要書類
  • それぞれの調達時に交わす契約の種類と規定内容
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はじめに

エンジェル投資家からの資金調達するとき、優先株式による方法と、新株予約権による方法があります。

この記事で、それぞれの流れと必要書類をご紹介しているので、役立ててみてください。

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1.優先株式発行の場合

最初に、優先株式発行からご紹介します。

①資金調達の流れ

株式発行の方法は、申込割当方式総数引受方式の2種類があります。

・申込割当方式

会社法における原則的な発行方法です。

申込割当方式の流れ

・総数引受方式

すでに特定の投資家と協議し、誰に何株割り当てるのかが決まっている場合に採用できる方式です。この場合、企業と投資家は総数引受契約を結ぶ必要があります。

総数引受方式の流れ

・募集要項

募集要項では、次の内容を決める必要があります。

募集事項補足
払込期限をどうするか払込期日払込期間の2種類がある
期限に間に合わなかった場合、投資家が失権(株主権が喪失)してしまうため、余裕を持った日程にする
払込金額(株式価格)をどうするか既存株主よりも有利な価格で株式を発行(有利発行)する場合、株主総会での特別決議が必要となる

②必要書類

・投資家向けに発行する書類

書類の名称
投資契約書
株主間契約書
発行要項(定款変更案)

・法務局に登記申請するときの書類

書類の名称
株式会社変更登記申請書
株主総会議事録
株主の氏名又は名称,住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト)
取締役決定書
募集株式の引受けの申込みを証する書面(株式申込証)
払込みがあったことを証する書面
資本金の額の計上に関する証明書
委任状

(引用:法務局・株式会社変更登記申請書

③契約の種類

優先株式発行に関する契約は、投資契約・株主間契約・総数引受契約の3つがあります。

・投資契約

企業と、株式を引き受ける投資家との間で結ばれる契約を指します。

以下、規定する主な内容です。

①株式発行に関する規定
概要株式の内容や発行数、払込金額などの基礎条件
補足株主総会で「株式の発行数の上限」と「払込金額の下限」のみを決め、その他を取締役会で決めることもできる
②表明保証に関する規定
概要企業が提供する情報・条件が嘘偽りないことを示す約束
補足・基本的に違反した場合の措置とセットで設けられる。
・対象範囲を慎重に検討しないと、知らないうちに違反をする可能性がある。
・投資家側に求めるケースもあるが、その場合は企業より少ないことが多い。
③誓約事項
概要企業が遵守するべき約束
補足・基本的に違反した場合の措置とセットで設けられる。
・投資実行以前と投資実行以後に分けられることが多い(※1)
④投資実行の前提条件に関する規定
概要投資判断に悪影響のある事項が発生していないことを規定する事項
補足主に契約時から投資実行までの間に、投資家が躊躇しないために設けられる
⑤ペナルティに関する規定
概要投資契約に違反があった場合の規定(※2)
補足プット・オプション(※3)が一般的

(※1)主に次のような内容が規定される。
投資実行以前の誓約事項…主に資金調達を前提とする必要事項について。発行に必要な手続きを法に基づいて実施する、適切な運営と資産管理を行うなど。
投資実行以降の誓約事項…主に資金使途について。投資家側からは詳細を求められるが、限定的になると使いづらくなるため、バランスが重要となる。

(※2)損害賠償による救済があるが、「全額賠償に至らないことがある」「企業価値が減少し、株式の価値が下落する可能性がある」などの理由から、後述のプット・オプションが採用されることが多い。

(※3)投資家が、企業に対して、保有する株式の買取請求をできる規定。買取価格は、出資時の払込金額や直近の譲渡事例などから決定される。

・株主間契約

企業と当該の投資家だけでなく、他の株主と交わす契約です。投資契約と一緒に結ばれるのが一般的となっています。

主に次の内容が規定されます。

①会社経営に関する規定
概要取締役の指名権や事前承認などに関する規定
補足明確な目的がないまま投資家に権利を付与するなど、十分な検討を行わずに規定してしまうと、と、企業の自由度を制限するだけでなく契約違反する可能性が高くなる
②情報開示に関する規定
概要投資家に提供する情報に関する規定
補足主に毎事業年度の計算書類や事業計画書、月次試算表など
③投資家のExitに関する規定
概要IPOの努力義務などに関する規定
補足・創業間もない企業の場合、期限を設けないのが一般的
・企業に対してIPOの申請をするよう請求できる権利を、投資家に付与する場合がある

・総数引受契約

総数引受方式時に交わされる契約です。

以下、代表的な規定内容となります。

①発行に関する規定
概要株式の発行に関する決定事項
補足株式の種類、株式数、払込金額、対象となる投資家など
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2.新株予約権付与の場合

次にコンバーティブル・エクイティ型の新株予約権で、資金調達をする際の流れと必要書類についてご紹介します。

①資金調達の流れ

コンバーティブル・エクイティ型新株予約権による資金調達の流れ

・募集要項

主に次の内容を決定する必要があります。

決定内容
新株予約権の内容・数
払込金額
割当日

②必要書類

・投資家向けに発行する書類

書類の名称
新株予約権割当契約書

・法務局に登記申請するときの書類

書類の名称
株式会社変更登記申請書
株主総会議事録
株主の氏名又は名称,住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト)
取締役決定書
募集株式の引受けの申込みを証する書面(株式申込証)
払込みがあったことを証する書面
資本金の額の計上に関する証明書
委任状

(引用:法務局・株式会社変更登記申請書

③契約の種類

新株予約権に関わる契約の代表的なものに、新株予約権割当契約エクイティ・コミットメント・ライン契約があります。

・新株予約権割当契約

新株予約権割当契約で規定される内容は、次の通りです。

①割当に関する規定
概要新株予約権の割当に関する決定事項
補足新株予約権の数、譲渡を禁止する旨などが盛り込まれる
②権利行使に関する規定
概要投資家が権利を行使するときに遵守するべき内容
補足権利行使の範囲、手続きの仕方などを規定

・エクイティ・コミットメント・ライン契約

新株予約権時、企業側が投資家に権利の行使を要請できる条件を付加する契約です。

投資家が権利を行使して株式を取得しない限り、企業はその対価である資金を得ることができません。

そのため、一定の条件において企業側が投資家に権利行使を要請できることをこの契約で定めます。

規定される主な内容は、次の通りです。

①要請に関する規定
概要新株予約権の権利行使要請に関する規定
補足行使要請できる新株予約権の数の上限、要請をしてから行使するまでの期間などが含まれる。
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まとめ

  • 優先株式による資金調達の方法は、申込割当方式と総数引受方式の2種類。契約には投資契約・株主間契約・総数引受契約の3種類がある。
  • 新株予約権で資金調達で結ぶ契約は、新株予約権割当契約。権利行使を要請できる条件を付加した場合は、投資家の自由を制限することになるので、エクイティ・コミットメント・ライン契約を結ぶ。
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おわりに

エンジェル投資家と資金調達時に交わす契約の内容は、多岐に渡ります。

互いに相談しながら決めることが大切ですが、折り合いがつかない場合は第三者のアドバイスを取り入れるのも有効です。

また、最初にお伝えしたように、KnowHowsでは「みんなで事業相談」や資本政策シミュレータ」といったサービスをご用意しています。迅速、かつトラブルなく資金調達をするための術としてください。いずれも利用は無料です。

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