精神疾患による休職とどのように向き合うのか(第2回)
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0.はじめに
第1回では、労働契約という法的視点から、休職の意義や会社の負う責任等、休職に関する基本的な考え方をみてきました。
法的にみれば、休職は解雇の瀬戸際の問題であり、労働契約の当事者(労使)双方の責任分担の問題です。しかし現実的には、せっかく活躍を期待して雇入れた従業員の離脱はそれ自体が大きな損失であり、健全な状態への復帰が望まれるべきものです。
そこで今回は、実際に従業員が精神疾患により就業不能に陥った場合に、復職に向けて会社はどのような対応が考えられるのか、実務のポイントを考えていきたいと思います。
1.初動が肝心
従業員が精神疾患を発症し就業不能となった当初は、意外とこの事実を上手く把握できない…単なる勤怠不良、体調不良が長期化している…その程度の認識にとどまり、本人の「本当の状態」を把握する動きが鈍いのことが多くあります。
就業不能となった本人としては、精神疾患に発症したことの自覚があるか否かに関わらず、総じて周囲の状況を判断し行動する認知能力が低下した状態にあります。
加えて、自身の状態を会社に知られたら最悪解雇されると思い込んでいたり、そもそも自分がそのような状態になったことは会社に責任があるのではないかと疑っていたり、会社に対して不信感を募らせ、本当のことを言いたくないと考えるので、余計に「本当の状態」が把握しにくくなっているのです。
こうした初動のタイミングで会社がとるべき行動は、就業不能に陥った原因や責任の問題を後回しにして、まずは本人とコミュニケーションがとれる状況を作り、本人の「本当の状態」を共有することです。このタイミングでの行動が後々の状況を大きく左右するといっても過言ではありません。
2.会社が注力すべきポイントは、本人支援の姿勢
会社に保健師を在籍させている場合は、保健師に動いてもらうのが理想ですが、実際には専門的知見をもって行動できる人材を在籍させているケースは少ないでしょう。
そもそも、精神疾患は終局的に従業員本人の力でしか立ち直ることはできません。この意味で会社が出来ることはほとんどありません。しかし、その数少ない「会社が出来ること」が非常に重要でもあります。
まずは会社として健全な状態で復帰してもらえることを望んでいる、という姿勢を前面に押し出し、その上で本人と話し合い、情報共有を密に進め信頼関係を作っていきます。
このとき、人事担当者など社内でも第三者的な立場にある人間がフロントの役割を担う方が、本人の精神的な負担も少なく関係が構築しやすいといえます。あわせて、人事担当者は予め本人の所属している部署の上司や同僚から前後の情報の聞き取りをしておくと良いでしょう。
3.休職に入った場合
本人の回復状況にもよりますが、就業規則上の休職にあたる状況となってしまった場合は、きちんとそのことを本人に伝えます。
伝え方としてはまず、会社のルールとしての休職の仕組み、最悪の場合は退職(解雇)となってしまうことなどを時間かけて丁寧に説明します。あわせて、健康保険の傷病手当金の申請や受給のタイミングも本人に伝えることで、収入面の不安を和らげることができます。
その上で、本人のその時点での気持ちや希望を十分に確認します。休職当初は症状が思うように改善されていないことから言いようのない不安にかられ、復職について考えることが苦痛な場合もありますので、決して本人に無理強いをして意見を述べさせてはなりません。
ただ、この場合でも、(最終的に退職となるにしても)自分の意思で十分に受け止められる状況まで回復することが本人にとっても大切であることを双方で確認し、定期的に本人の状況をヒアリングすることを合意しておきましょう。
4.おわりに
我が国における精神科や心療内科での治療は、薬餌療法が主体でカウンセリングや認知行動療法等を用いたリハビリテーションは盛んではありません。
このため一般的に、発症当初の急性症状の時期を乗り越えるまではあまり多くの時間を要しませんが、その後の回復が遅く、会社の休職規定のリミットまでに十分に回復せず無理やり復職させた結果、再度の休職から退職に至るケースが多く存在しています。
そこで、会社が事前の策として取りうるのが「リワークプログラムを受講することを、従業員本人に勧奨する」ことです。
次回は、リワークプログラムを絡めた、復職までの取り組みをみていきます。
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