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中小企業診断士の岡野です。

「信用のため」「何かあった時の保険のため」等の理由で借入を勧めるシーンをよく見かけますが、基本的には借入はお勧めしません。

1.借入を勧めない理由

1-1.損益分岐点が高くなる

まず、毎月の支払いが発生します。仮に次のような条件で借入を行ったとしましょう。

借入額:5,000,000円 金利:2.0% 返済期間:5年

返済方法:元利均等 元金据置期間:無し

年数返済額元利うち元金うち利息
1年目1,060,792円960,792円100,000円
2年目1,060,792円980,008円80,784円
3年目1,060,792円999,608円61,184円
4年目1,060,792円1,019,600円41,192円
5年目1,060,792円1,039,992円20,800円

日本政策金融公庫 「事業資金用返済シミュレーション」にて試算
https://www.jfc.go.jp/n/finance/simulation.html

この場合、月々の返済額は9万円弱になります。

そうすると、借入無しで事業をすれば現金収支±0でも、返済により9万円のマイナスになってしまいます。つまり、月々9万円余計に稼ぐ必要が出てくるということです。
(元金に全く手を付けていなければ利息分だけ稼げれば良いですが、それでも1万円弱は必要です)

5年間で支払う利息は約30万円です。借入金に一切手をつけないとしても、5年間で30万円の現預金がマイナスになります。

実際、相談に来られる方の財務諸表を見て「支払利息さえ無ければ利益が出ているのに・・・」と思うケースも少なくありません。

1-2.無駄遣いにつながる

経営者の方であれば日頃、現預金の残高が気になって仕方ないということもあろうかと思います。そこで借入を行うことにより、多額の現金が振り込まれます。

資金繰りの心配がなくなり、今まで資金の都合で断念していたことも出来るようになります。中にはここで気が緩んでしまい、過剰な出費を行う方もいらっしゃいます。社用車やオフィス家具を全て高級品に買い替えたという話もあります。

もちろん必要な経費であれば使うべきですが、売上増につながらない出費は返済を困難にするのは明らかです。年度末に「節税のため」と称して買う予定の無い物品を買ってしまった等のご経験がある方は特に要注意です。

1-3.事業撤退が困難になる

借入が無く未払金や買掛金の支払いが終わっていれば会社を畳むことも容易いですが、債権者がいればそうもいきません。経営者は連帯保証していることも多々ありますので、最悪の場合には会社と経営者双方の破産手続きをすることになってしまいます。

コンサル業やWEB制作業のような、固定費が少額で済むビジネスは「撤退が容易」であることもメリットの一つですが、借入を行う場合このメリットは失われます。固定費が少額のビジネスの場合、少なくとも初めのうちは極力自己資金のみで事業展開することが望ましいです。

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2.借入は悪か?

デメリットばかり述べましたが、借入が「悪」ということでは決してありません。

借入が無ければ支払いが出来ずあわや倒産するところだったという話もありますし、大きな施策や投資・採用は自己資金だけでは難しいことも多いです。

悪なのは借入ではなく「無計画」です。借入を検討するならば、借入による効果や月々の売上、現状の貸借対照表などから借入の要否を判断することが必要です。社内での検討が難しければ専門家に相談することも良いでしょう。

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この記事を書いた人

岡野 英之

中小企業診断士

中小企業診断士事務所スタンド・マネジメント

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東京の中小企業診断士です。
資金繰りのご相談やビジネスモデルの検討など、幅広い経営のお悩みをワンストップでお応えしております。

【所属等】
東京都中小企業診断士協会 城北支部
 AI・人工知能研究会 会員
中小企業庁 経営革新等支援機関
公益財団法人東京都中小企業振興公社
 中小企業プロモーション支援事業 専門家
東京商工会議所 板橋支部
一般社団法人エッジプラットフォームコンソーシアム 賛助会員
 ニースワーキンググループメンバー
日本管理会計教育協会 会員

【略歴】
1986年 大阪府大阪市生まれ、兵庫県伊丹市育ち
2009年 京都大学経済学部経営学科 卒業
2009年 NTT西日本 入社
 支店営業→支店営業企画→本社財務
2014年 NTT持株会社に転籍
 グループ全体の事業計画等
2017年 法律事務所の立ち上げに参画【現職】
2019年 中小企業診断士事務所 代表【現職】 

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