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この記事でわかること

・事業相続時にかかる相続税を算定する際にも、株式の評価が行われます。このときは企業価値評価(バリュエーション)とは異なる手法が用いられます。

・非上場企業の場合は、相続人が大株主(経営権の行使を目的とする)の場合は、類似業種比準価額方式や純資産価額方式が、少数株主(配当のみを目的とする)の場合は配当還元方式が用いられます。

・上場企業の場合は、市場価格をもとに株式の評価が行われ、①相続開始日における終値、②相続開始日が含まれる月の各取引日における終値の平均額、③相続開始日の前月の各取引日における終値の平均額、④相続開始日の前々月の各取引日における終値の平均額、の四つのうち、もっとも低いものが選ばれます。

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はじめに

企業価値評価(バリュエーション)について様々な手法を解説してきましたが、事業の相続税を算定する際にも、どうように株式の評価が行われます。

これは課税額の算定を目的とするものであるため、国税庁が定める方式に従って評価をしなくてはなりません。

このページでは、事業相続時における株式評価の手法について、非上場企業と上場企業に分けて、それぞれ解説していきます。

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相続税評価時のバリュエーション(企業価値評価)の手法も含め、お悩みの際はぜひご活用ください。

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1.非上場企業の株式評価ステップ

対象企業が非上場企業の場合、株式に市場価格がついていません。そのため、株式の配当や類似業種の上場企業などを元に評価を行っていく必要があります。

その際、相続人が企業の経営権行使を目的とする大株主なのか、それとも株式からの配当を目的とする少数株主なのかによって評価方法が異なります。

大株主は配当に加えて企業の経営権を有し、大きな利益を受けますが、少数株主は配当の受取のみが利益となるため、同じ評価をすることが適正とは言えないためです。

以下、それぞれのケース別に算定手法を紹介していきます。

①相続人が大株主の場合

企業の純資産から株価を算定する純資産価額方式と、類似する業種から株価を算定する類似業種批准価額方式のいずれか、あるいは併用による評価が行われます。

相続税を計算するうえでの基準として国税庁が定める「財産評価基本通達」により、会社の規模によって、選択できる手法は下記の通り定められています。

  • 大会社:類似業種比準方式、または純資産価額方式
  • 中会社:類似業種比準方式と純資産価額方式の併用、または純資産価額方式
  • 小会社:類似業種比準方式と純資産価額方式の併用、または純資産価額方式

・類似業種比準方式による評価

まず、対象企業に対して、業種や規模などが類似している上場企業を選びます。そして、類似業種の株価に対して、類似業種と対象企業の純資産価額・利益・配当金の3つの数値を比べて求めた比準割合を乗算し、出た金額の一定割合を評価額とする方法です。

具体的には、次の計算式で相続税評価額を算定します。

  • a:類似業種の株価
  • b:対象企業の1株あたりの配当金
  • c:類似業種の1株あたりの配当金
  • d:対象企業の1株あたりの利益
  • e:類似業種の1株あたりの利益
  • f:対象企業の1株あたりの純資産額
  • g:類似業種の1株あたりの純資産額
  • h:調整率
  • i:対象企業の1株あたりの資本金等の額

調整率は、大会社は0.7、中会社は0.6、小会社は0.5です。類似業種の数値は、国税庁ホームページで参照できる数値を用います。

・純資産価額方式による評価

純資産価額方式は、次の計算式で算定します。

相続税評価額=(資産ー負債ー評価差額に対する法人税額等に相当する金額)/発行済株式数

この際の資産や負債は、対象企業の課税時期における時価(相続税評価額)が用いられます。

・類似業種比準方式と純資産価額方式の併用による評価

上記2つの評価手法を併用する場合は、さらに細分化された会社規模によってそれぞれの割合が下記の表のとおり決定されます。

企業規模併用の割合
中会社(大)類似業種比準価額×0.9+純資産価額×0.1
中会社(中)類似業種比準価額×0.75+純資産価額×0.25
中会社(小)類似業種比準価額×0.6+純資産価額×0.4
小会社類似業種比準価額×0.5+純資産価額×0.5

こうして算定された株式の評価額は1株あたりのものになりますので、これに相続した株式数をかけることで、最終的な相続税評価額が算定されます。

②相続人が少数株主の場合の算定方法

相続人が少数株主である場合は、配当還元方式によって株式を評価します。

これは過去二年の配当金額を一定の利率で割ることで、株式の評価額を算定する方式です。

配当還元価額=1株あたりの配当金額/10%×1株あたりの資本金等の額/50円

企業によって配当がない、あっても2円50銭以下の場合は、「1株あたりの年配当金額=2円50銭」に設定して算定します。

配当還元方式での算定結果は、類似業種比準方式や純資産価額方式で算定した結果よりも低い金額となる傾向にあります。

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2.上場企業の株式評価ステップ

上場企業においては、マーケットの株価をもとに評価が行われます。

株式の相続税評価額=相続開始日における株価×保有株式数

相続開始日とは、相続される人(被相続人)が亡くなった日のことです。

相続開始日における株価ですが、株式によってはたった1日で株価が大きく上下することがあります。該当日にたまたま株価が激しく動いて高値をつけることもあり得るため、次の中から最も低い株価を選んで計算します。

  • 相続開始日における終値
  • 相続開始日が含まれる月(4月13日なら4月)の、各取引日の終値を平均した金額
  • 相続開始日の前月(4月13日なら3月)の、各取引日の終値を平均した金額
  • 相続開始日の前々月(4月13日なら2月)の、各取引日の終値を平均した金額

「終値(おわりね)」とは、1日の取引時間において最後に取引された株価です。

相続開始日が休日で株式市場が開いていない場合は、近い日における終値を用います。例として、相続開始日が土曜なら最も近い金曜の終値を、日曜なら月曜の終値を使って計算します。

相続開始日がゴールデンウィークなど連続した祝日内だった場合は、連休前後で最も近い取引日における終値を平均した金額を用います。

補足:相続開始日が権利落ち日から権利付最終日の間にある際の評価

株式においては、株を買った日(約定日)と、株券が実際に受け渡される日(受渡日)は異なります。そのため、配当金や新株割り当てを受ける場合には、受け取る権利を得られる日(権利確定日)から3営業日前の日(権利付最終日)に、株を買っておく必要があります。

たとえば、権利確定日が30日(木)の場合、権利付最終日は27日(月)です。28日に株を買っても配当はもらえません。この場合の28日にあたる、権利付最終日の翌日のことを「権利落ち日」といいます。

権利付最終日までに株を買った人は、権利確定日まで株を持ち続けなくても配当は手に入るため、権利落ち日に株を売る人も多く、株価が本来の値動きよりも大きく下がる傾向があります。

そのため、相続開始日が権利落ち日から権利確定日の間にある場合は、権利付最終日の終値が用いられます。

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まとめ

相続税評価におけるバリュエーションは、M&Aや資金調達の場合と異なり、適用できる手法が決まっています。

自社の場合はどの算定手法となるのか、きちんと確認するようにしましょう。

もし、本記事で解説した内容についてお悩みの場合は、冒頭でもご紹介したKnowHowsの「みんなで事業相談」の利用をおすすめします。

こちらでは、資金調達、M&A、株式、人事など、さまざまな専門家から事業の課題に関するアドバイスを受けることが可能です。無料でご利用できますので、少しでも疑問があればぜひ相談してみましょう。

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次回は「同じ規模の企業でもバリュエーション(企業価値評価)の結果が異なる理由」について解説していきます。

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この記事を書いた人

KnowHows 編集部

株式会社KnowHows

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