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こんにちは。経理業務改善マスターの比嘉です。今回は、事業投資の意思決定について書かせて頂きたいと思います。

経営者が事業計画を行う際、その事業がもたらすキャッシュがどの程度のものなのか、算出する必要性が出てきます。このとき、ネット上などでは、「事業計画書を作ろう!」などと言って、やたら時間と労力を要するアイデアノートのようなものを作ることを勧めているケースがあります。

確かに、アイデアをしっかりとまとめるという意味ではそれも必要ですが、その前に、漠然としたアイデアがどれくらい儲かる事業なのか知りたい、というのがそもそもの出発点になるのではないでしょうか。

そこで、その漠然としたアイデアがもたらすキャッシュフローを、エクセルを使ってサクッと計算する方法を、「配食サービス」というひとつのアイデアを例にとって書いていきます。

ここで、ひとつ、約束事があります。

あまり細かいことは気にしない、ということです。

これはあくまでイニシャルでの検討になりますので、大体の計算が出来ればOKとします。大事なのは、アイデアを頭の中で風化させてしまわないことにあります。

この検討をして、もし、アイデアに魅力が得られれば、更に細かい計算や情報収集をしていけばよいと思います。その時に、今回ご紹介するエクセルシートに項目を追加していけば、より細かな検討もすることが出来ますので、その「基礎作りをする」と捉えて頂ければと思います。

では、早速、検討をしていきましょう!

1.アイデア(配食サービスの強化)

アイデア.png

この例は、個人宅向けの配食サービスをすでに行っている企業が、需要が更に見込めそうなので、配送ルートを増やそうかなと考えているケースです。

このケースのポイントは、新規事業への投資ではない、ということが挙げられます。新規事業の場合、当然情報の少なさからキャッシュフローの見込みの不確実性は高まりますが、行うことは基本的に同じです。両者の差異は、

  1. 新規で設備に投資する額
  2. 情報量

となります。

新規事業や他の事業に関わらず、どんな事業でも、今回書かせて頂く方法に、重要と思う項目を追加してあげればよいわけです。

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2.販売価格と見込み売上数、これに対応する原価

売上.png

売上の見込みは最も不確実性の高いものとなります。費用はある程度こちら側の意志で積み上げられますが、売上はお客様次第だからです。

売上の想定で、少なくとも言えることは、今回の投資から得られる売上のキャパシティです。

検討している事業の性質と鑑みて、売上が最大でもいくらになるのかを推定して計画に盛り込みましょう。

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3.投資額の算定

投資額.png

このケースでは、人件費が最も大きな投資になります。アルバイト1人当たりの就業時間が週20時間を超える場合は、社会保険への加入もあり、約16%、人件費を割り増してみる必要がありますが、今回は就業時間を週20時間以内に抑えて、社会保険の会社負担分を抑えています。

自動車は購入する種類によって大きく異なるので、どんな車を購入するかで初期投資に差が出てきます。また、中古車を買えば新車に比べて、購入価格だけでなく、減価償却も早期で行うことが出来る可能性があります。

駐車場代は、地域によって大きく異なる固定費用ため、駐車場代の差が、お弁当の販売価格の地域差になってくると思われます。

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4.税金

税金.png

固定資産は減価償却の手続きによって、損金の額に算入されます。従って、 法人税を計算する時、固定資産が含まれていれば、それは、支出時ではなく減価償却の都度、損金の額に算入されることを考慮します。

また、償却方法は、定率法や定額法といった方法があり、建物は定額法、そのほかは定率法が一般的ですが、今回のような概算の計算の場合は、定額法(償却期間にわたって均等に償却する)がわかり易いので、取得資産に関わらず一旦、定額法で計算してもよいでしょう。

更に、償却期間については、「資産の名称」と「耐用年数」の2つのキーワードでweb検索すれば、何かしらヒットします。

中古資産を購入した場合、税法上は若干ややこしい計算があるのですが、一旦は無視して、新規取得と同じ償却期間で計算してもよいと思います。なぜなら、どの償却方法や償却期間をとっても、いずれは取得原価の全額が損金の額に算入されるからです。

今回はあくまでとっかかりの計算。他の項目同様、より細かい計算をしたい場合には、担当税理士や経理担当に依頼しても良いかと思います。(今回は、中古資産のちょっとややこしい計算をしたので、耐用年数を2年としました)

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5.以上のアイデアをエクセルにまとめましょう

キャッシュフロー.png

このケースでは、1年目で97万円の赤字、その後、黒字化して、5年間で56万円稼げることがわかります。
一年目の税金のマイナスは、「他の事業が黒字」という前提があるので、会社として納税する額を抑えられるという意味になります。

しかし、この事業、管理費(いわゆる間接部門の経費)抜きで5年で56万円という結果になりましたが、どうお思いになるでしょうか。おそらく、こんな投資は選択しないと考えるのではないでしょうか。
100%稼働していれば年間50万円のキャッシュをもたらしますが、年間7300食を配達し、これにかかるリスク(食中毒や配送中の事故、その他のトラブル)や管理部門の経費を考慮するとき、年間50万円ではとても割に合わないと考えるかと思います。

それでは、仮に、採算のとれる、旨味のある事業として成り立たせるためにはどうすればよいのか。

そこでこの表が活躍します。

うまくいくための仮定をこの表の各項目に埋めていくことで、いつかは期待する利益にたどり着けると思います。
その出来上がりをみて、実現可能なものであるかどうか、経営者の才覚によって判断する、ということになろうかと思います。

※ご参考までに、今回の表の各セルには、下記のような式を使っています。

キャッシュフロー式.png

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6.まとめ

 以上、日々、経営者が頭の中に抱えているアイデアを、キャッシュフローを念頭にエクセルにまとめるとどうなるか、ということをやってきました。

とっかかりは、思いついた項目だけで始めるほうがむしろよく、表を作っていくうちに、「あれも欲しい」「これが足りない」といったことが出てきて、自然に表が完成へと近づいていきます。

そして、アイデアがもたらす収益や費用をエクセルで整理することで、そのアイデアの可能性を数値化することができます。

これで、アイデアに具体性が備わり、自己のアイデアの整理段階から、他者への説明資料へと生まれ変わっていくかと思います。

事業拡大がより現実味を帯びてくるのではないでしょうか。

ぜひ、ふと、思いついたときに、エクセルを開いて、メモでもいいので、アイデアのキャッシュフロー計算表を作ってみることをお勧めいたします。

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この記事を書いた人

比嘉 健太郎

コンサルタント

Business Improvement Success Story

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☆経理業務改善マスター。

【キャラ】
昭和47年9月9日生まれ。 幼少の頃から理科や歴史など事実の探究に好奇心を燃やしてきました。考古学や天文学などの未知の世界に触れる事も大好きです。抽象的な思考で物事の本質を捉え、具体的事例に解決策を落とし込んでいきます。趣味は水泳。高IQ団体mensa会員。

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