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この記事でわかること

  • 事業デューデリジェンスは、売り手(被買収企業)の事業計画などを分析するプロセス。財務デューデリジェンスが主に過去や現在の検証を行うのに対し、事業デューデリジェンスは過去から未来に渡った分析・予測が行われます。
  • 事業デューデリジェンスの大まかな役割には、①リスクの洗い出し②リターンの分析③M&A後の経営方針の策定の3つが挙げられます。
  • 事業デューデリジェンスには、企業の内部環境を分析するVRIO分析バリューチェーンモデル、外部環境を分析するPEST分析5フォース分析など、様々なフレームワークが用いられます。
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はじめに

事業デューデリジェンスとは、売り手の事業計画などをベースに経営戦略の分析を行い、買い手(買収元)が予測する投資価値が妥当であるかどうかを検証していくプロセスとなります。

前回説明した財務デューデリジェンスが、財務諸表などから主に売り手の過去と現在について分析を行うのに対し、

事業デューデリジェンスは売り手が将来生み出す収益の予測や、M&Aによって買い手が得る相乗効果(シナジー)など、事業の未来についての分析がメインとも言えるでしょう。

このページでは、事業デューデリジェンスの役割や調査手法を解説していきます。

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1.事業デューデリジェンスの主な3つの役割

事業デューデリジェンスは、対象企業のビジネスモデル全体を調査し、その将来性について評価・予測を行っていく調査手法。

着手から完了までおおよそ1〜2ヶ月ほどかかるのが一般的。買い手、売り手の双方が全力を尽くし、さまざまな角度から経営資源の分析を行っていきます。

事業デューデリジェンスの主な目的は、大きく分けて下記の3つ。

  1. M&Aに伴うリスクの検証
  2. M&Aに伴うチャンスの検証
  3. M&A後の経営戦略の策定

以下、順番に解説していきます。

①M&Aに伴うリスクの検証

ひとつめの大きな目的は、リスクの検証です。

財務デューデリジェンスでも行ったような財務諸表のチェックはもちろん、売り手側の想定している事業計画が本当に実現性のあるものなのかどうかなどを、社内の経営リソースの分析や経営陣へのインタビューなどを通じて検証していきます。

たとえばアパレルなどの業界の場合、売り手企業のブランド(ネームバリュー)が大きく売り上げに影響する場合があります。

M&Aを行い、経営主体が変わることが、売り上げの大きなリスクとなりかねません。

そのほかにも、規制の動向や、景気変動による原料価格の変化、技術革新による競争力への影響など、財務諸表だけでは検証できないリスクを洗い出していくことになります。

②M&Aに伴うチャンスの検証

次に検証していくのは、M&Aに伴うチャンスの検証です。

M&Aによる相乗効果(シナジー)の大きさや、売り手のボトルネックを改善する方法について調べ、M&Aを通じて買い手の受ける利益がどの程度なのか、また利益を最大化するためにはどんな方法が必要なのかを調べていきます。

例えば、売り手の製品は高い品質なのに、マーケティングの体制が弱い場合、買い手がM&A後に自社のノウハウを使ってその部分を改善することで、より高い価値を生み出せる可能性があるでしょう。

逆に、自社製品の販売チャネルを増やすため、顧客となりうる読者層が多いWebメディアなどを買収するというパターンもあります。

こうしたチャンスの発見と最大化について、売り手側と検討していきます。

③M&A後の経営戦略の策定

最後に、①②を踏まえてM&A語にどうやって経営を行うのか、具体的な事業計画を練るのが、最後の役割となります。

検証してきたリスクとリターンを織り込んだ事業計画を立て、具体的なKPIを作成し、さらに買い手側がM&A後にどのような支援を行うのかまで、具体的なプランを策定します。

また、今までのマネジメント手法や報酬体系などをヒアリングし、M&A後も従業員にとってストレスの少ない、あるいはより事業をスムーズに拡大できる方針を検討していく必要もあるでしょう。

買い手にとって、M&Aの成功は取引の成立ではなく、その後に投資した利益を回収できるかどうかという点です。

長期的な視点での「成功」への道筋を明らかにしていくことも、事業デューデリジェンスの重要な役割のひとつなのです。

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2.事業デューデリジェンスの調査手法

これまで解説してきたとおり、事業デューデリジェンスは財務デューデリジェンスよりもさらに多角的な要素から、ビジネスの将来性について検討を行っていきます。

その際にベースとなるのは、売り手の事業計画

これを元に、設定されている収益目標や、目標達成のためのプロセスが妥当なものなのかどうか、買い手側の支援で改善できるボトルネックはあるか、買い手側にもたらすシナジーはどの程度か……といったことを見ていきます。

ここでは、こうした事業デューデリジェンスの際に使われるフレームワークの例を4つ、ご紹介しましょう。

  1. 経営資源を4つの視点で分析する「VRIO分析」
  2. 付加価値が生まれるプロセスを探る「バリューチェーンモデル」
  3. 企業の外の動向を調査できる「PEST分析」
  4. 業界内の環境を洗い出す「5フォース分析」

それぞれのフレームワークについて、解説していきます。

①経営資源を4つの視点で分析する「VRIO分析」

企業が保有する経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を明確にして、客観的に分析をするために役立つのがVRIO分析です。4つのポイントで企業の経営資源を分析することで、企業の強みを明確化できます。

  • 価値(Value):保有する経営資源は社会に価値を提供できているか
  • 希少性(Rarity):保有する経営資源は市場において珍しいか否か
  • 模範可能性(Inimitability):保有する経営資源は模倣しやすいものか
  • 組織(Organization):経営資源を最適化できる組織体制は整っているのか

これらの要素を競合他社と比較することで、その企業の現時点での競争力、そして競争力を高めるための改善点をおおまかに洗い出すことができます。

②付加価値が生まれるプロセスを探る「バリューチェーンモデル」

バリューチェーンモデルでは、企業が利益をもたらすまでの流れを「主要活動」と「支援活動」の2つに分けて整理し、利益に貢献している部分を見つけ出す手法です。

主要活動は、対象企業のマーケティングや製品の製造、顧客へのサービス提供といった、企業に直接利益をもたらす活動のことです。「製品を生み出して消費者に販売するまで」に関わる流れと言い換えることもできるでしょう。

一方の支援活動は、財務や法務、技術開発や人材の管理といった、主要活動をサポートする要素を指した言葉です。主要活動のように連続的な要素ではなく、それぞれが独立して主要活動を支えています。

主要活動と支援活動のそれぞれのコストや割いているリソースを明らかにし、競合他社と比較することで、VRIO分析よりもさらに詳細な分析をすることが可能となります。

③企業の外の動向を調査する「PEST分析」

①と②が企業の内部に関する分析だったのに対し、③のPEST分析は会社の外部環境の変化を検討する手法です。

調査の対象となるのは、以下の4つのポイント。

  • 政治的要因(Politics):法律や条例、政府や機関の政治的な動向
  • 経済的要因(Economics):景気の動向や金利の変動、物価や為替など
  • 社会的要因(Social):社会の人口動態やライフスタイル、価値観など
  • 技術的要員(Technology):新技術の登場など

これらの要素はいずれも、社内の状況に関係なく、利益に大きな影響をおよぼします。

たとえば、自分たちのビジネスに関わる法規制(環境規制の強化など)が導入された場合、その対応には大きなコストを強いられることになるでしょう。

景気や価値観の変化、技術革新による生産コストや参入ハードルの下落も同様です。

こうした外部環境の変化を中長期的に予測し、それらを織り込んだうえでの戦略を考えていくためのツールがPEST分析なのです。

④業界内の環境を洗い出す「5フォース分析」

「5フォース分析」は、特定業界の状況を5つの観点から分析する手法です。

③のPEST分析が世の中全体の動向を対象としていたのに対し、より範囲を絞った環境を知るための方法と言えるでしょう。

調べる対象は、以下の5つとなります。

  • 競合リスク:市場の競争の激しさ、競合他社の強さ
  • 新規参入リスク:業界に新規参入するコストが高いのか否か
  • 代替品リスク:自社製品と同じニーズを満たせる商品が他にもあるか
  • 供給者の交渉力:原材料の供給元はどれほどの優位性を持っているか
  • 顧客の交渉力:製品・サービスの販売先はどれほどの優位性を持っているか

新規参入リスクとは、つまり「参入障壁の低さ」にあたります。特定の知識やノウハウを必要としない業界の場合、競合他社が次々と参加してくるため、結果として競争は激しくなります。

同様に、たとえばCDがネット配信にとってかわられたように、「音楽を聴く」というニーズを満たす別の商品(代替品)がある場合は、そちらとの競争も考えなければなりません。

そのほか、サプライヤーの交渉力の強さ(製品の部品に高い精度や特許技術が必要になるなど)顧客の交渉力の強さ(大口の顧客に売上を依存している、売り手に対して買い手の数が少ない)といったこともリスクとなります。

これらの観点から業界内の競合状況を判断し、どのようなポジションを目指すべきかを考える際に、5フォース分析は役立ちます。

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まとめ

企業の経営状況は、生き物のように日々変動していきます。

その中で少しでも確実な指標を見出し、M&A後の未来とその実現に向けたロードマップを整えていくのが、事業デューデリジェンスという作業と言えます。

次のページでは「システムデューデリジェンスの調査内容」について解説していきます。

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