株主にはどんな権利がある?株式比率ごとにできることを一覧で解説
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この記事でわかること
- ベンチャー企業が資本政策を作成するときに抑えておきたいポイント4つ
- 持株比率の仕組みや各資金調達方法の特徴など
- ベンチャーキャピタルから出資してもらうときに意識したいこと
はじめに
資本政策は、ベンチャー企業やスタートアップ企業が、株式公開やM&A(買収)のために今後何をやるべきかを具体的にした計画です。
この記事では、作成する上で抑えておきたい4つのポイントをご紹介しています。資本政策が大切なのはわかっているけど、何からしたらいいのか…と悩んでいたら、活用してみてください。
またKnowHowsでは、株主構成比率の把握や、株式の移転にともなう議決権の変動などを無料でシミュレートできる「資本政策シミュレータ」もご用意しています。
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1.経営者の持株比率を一定水準以上に保つ
資本政策の作成で、まず気にしなければならないのが、経営者の持株比率です。持株比率とは、ある企業が発行した総株式数(発行済株式数)に対して、ひとりの株主がどの程度、株式を保有しているのかを示す指標のことを言います。
以下で、持株比率を一定水準以上保つ必要性や、それを意識しなかったことで発生した失敗例をご紹介しましょう。
①なぜ一定水準以上に保つことが必要なのか
最も大きな理由は、持株比率が低いと経営の舵取りがうまくできなくなるためです。順を追って説明します。
企業が成長を望んで資金調達をする際、株式の発行(増資)があります。ベンチャー企業にとって、金融機関等からの融資よりも調達が見込めることから、比較的多く採用される方法です。ところが株式による資金調達には、それを行う度に、経営者の持株比率が下がるデメリットがあります。
たとえば、1,000株持っているある経営者が、次のように株式を発行したとします。
資金調達 | 内容 | 補足 |
---|---|---|
1回目 | 300円の株を100株発行 | Aさんに100株割当 |
2回目 | 500円の株を200株発行 | AさんとBさんに100株ずつ割当 |
3回目 | 700円の株を500株発行 | CさんとDさんに200株ずつ、Eさんに100株割当 |
このとき、持株比率は以下のとおりに変動します。
このように増資を繰り返した結果、経営者の持株比率が100%から55.5%まで下がりました。
会社法では、この持株比率によって、その企業の経営にどの程度関わることができるかが決められています。これを支配権と言い、持株比率が高ければ独断で行える範囲が広く、経営のコントロールも容易です。
しかし持株比率が低くなれば、第三者の意見に耳を傾けたり、受け入れたりしなければいけないことも出てきます。経営から外されてしまう可能性もゼロではありません。
・たとえばこんな失敗が…
「つい身内に情が出て、安価かつ大量の株式を発行してしまい、重要なことは逐一意見をすり合わせなければならなくなった」
「昔の先輩が出資すると言って聞かないので、株式を割り当てたところ、その後定期的に自分の会社に口出ししてくるようになった」
②持株比率を一定水準以上に保つための対策
増資はベンチャー企業にとって重要な資金調達方法であり、失敗が付きまとうとは言え、実施をせずに大きな成長を目指すのは現実的ではありません。2つの対策をご紹介しますので、資本政策作成時に意識をしてみてください。
・持株比率をどの程度以上に保つべきか決める
ケースによってボーダーラインはさまざまです。目安になりやすい持株比率と、それに応じた支配権内容を以下にまとめましたが、実態に合わせて決めるようにしてください。
持株比率 | 支配権内容 |
---|---|
33.4%超(1/3超) | 特別決議に対する拒否権 |
50%超 | 普通決議に対する議決権(単独で成立させることが可能) |
66.7%超(2/3超) | 特別決議に対する議決権(単独で成立させることが可能) |
・目先の資金調達にとらわれない
持株比率は、一度下がってしまうと、通常元に戻すことはできません。譲渡した株を買い戻すのは、特にまだ上場していない企業の場合は困難だからです。目先の資金調達ばかりにとらわれるのではなく、しっかりと計画を立てなががら資金調達を行いましょう。
2.適正な株価評価をする
2つ目のポイントは、適正な株価評価です。ここでも理由と失敗例を見ながら、対策方法を見ていきます。
①なぜ適正な株価評価が必要なのか
・新規の投資家やベンチャーキャピタルなどから資金調達するため
第一の理由は、新規の投資家やベンチャーキャピタルなどから、スムーズに資金調達をするためです。
第1章で見てきたように、発行する株式数を増やせば経営者の持株比率は下がります。そこで1株あたりの価格を上げれば、同じ金額の資金を調達しつつ、発行する株式数を抑えることができます。
しかし株価を高くしたところで、それが妥当な値段なのか説明できないと、そもそも資金を提供してくれる相手になかなか巡り会えない可能性があります。彼らの多くは株式公開やM&A実施時のキャピタルゲインを得るために、株式の引受価格を少しでも抑えようと考えているからです。
・追加増資の可能性を広げるため
第二の理由は、追加増資の可能性を広げるためです。
仮に高い株価で増資に成功したとしても、次に資金調達が必要になった場合、さらに株価を引き上げて増資を行う必要が出てきます。すでに株を引き受けている投資家やベンチャーキャピタルなどが、自分たちが出資するよりも低い金額で増資されることを、望まないのが一般的だからです。
また、基本的に、既存株主とは希薄化防止条項を含む投資契約を交わしています。そのため、株価を下げて増資をせざるを得なくなった場合、既存株主の持株比率が下がらないように調整しなければいけません。しかし、この方法を取ると、経営者の持株比率が大きく下がることになります。
高い株価でも出資してくれる投資家などを待つか、持株比率を下げるか。こうした二択に迫られないようにするためにも、妥当な株価を設定する必要があるのです。
・たとえばこんな失敗が…
「高い株価に投資してくれた人がいて、最初はラッキーと思っていたが、次の増資から新株の金額に対して文句を言ってくるようになった」
「時価より低すぎる価額で発行してしまい、相手に税負担を与えてしまった」
②適正な株価評価をするための対策
主な対策は次の2つです。
・株価算定方法で求める
客観性のある株価を求めるための算定方法を利用しましょう。算定方法にはDCF法や純資産法、株価倍率法などがあり、複数の方法を用いるのが基本です。
あるいは、専門家や専門の計算ツールを利用するのもひとつです。KnowHowsでも、無料の株価算定ツールを用意しているので、活用してみてください。
・増資実施前に客観的な視点を取り入れる
株価算定方法を用いるとき、経営者の事業にかける思いや期待といった恣意性が介入し、高い株価が算定されることがあります。増資を実施する前に、投資家などからの意見を集めたり、市場の動向や事業が抱えるリスクなどをチェックしてみましょう。
3.資金調達方法の特徴を把握する
3つ目のポイントは、資金調達方法の特徴を把握することです。
①なぜ資金調達方法の特徴の把握が必要なのか
資本政策で検討される資金調達方法それぞれに、メリットとデメリットがあるためです。思わぬ落とし穴で作成時に予測した数値を下回る結果となれば、資本政策を軌道修正する手間も増えてしまいます。
・たとえばこんな失敗が…
「株主増資割当を実施したが、思ったほど資金が集まらなかった」
「ストック・オプションを発行したが、対象者の選定が曖昧なせいで、かえって不満を招いた」
②各資金調達方法の特徴を把握するための対策
各資本政策の主なメリット・デメリットを以下にまとめました。これらを把握しながら、どのタイミングで用いるべきか判断するといいでしょう。
4.ベンチャーキャピタルからの視点を知る
4つ目のポイントには、ベンチャーキャピタルからの視点を知ることがあります。
①なぜベンチャーキャピタルの視点を知る必要があるのか
ベンチャー企業が、ベンチャーキャピタルからの協力を得る可能性を上げるためです。株価や事業内容、市場規模、競合他社などをどう見ているのか。こうしたポイントを抑えておかないと、資本政策の作成が徒労に終わる可能性も高くなってしまいます。
・たとえばこんな失敗が…
「苦労して作成した事業計画を、まったく見てもらえず…あとから見たら、相手にとってメリットのない内容だったことに気づいた」
「案の定、株価が割高と言われたが、他の投資家から下げてほしくないと言われてしまった…もっと早めに検討しておけばよかったと後悔」
②ベンチャーキャピタルからの視点を知る対策
以下に、ベンチャーキャピタルからの視点の中で、特に重要なポイントをご紹介しますので参考としてください。
・株価に対する視点
ベンチャーキャピタルは、成長の可能性の高いベンチャー企業に出資し、株式公開やM&A時に株式を売却することで利益を獲得します。そのため株価が割高なことは、ベンチャーキャピタルの利益が少なくなる意味合いがあり、出資してもらうのが難しくなるのが一般的です。
・事業内容に対する視点
従来の製品やサービスと比べて10倍以上の価値を提供できる、あるいはコストを1/10以下に抑えながら提供できる事業だと、検討してくれる可能性があります。
・市場規模に対する視点
巨大な市場、急成長が見込まれる市場がある事業なら、出資を前向きに考えてくれる可能性が高いでしょう。また、すでに急成長をしている市場の関連分野にチャレンジする企業に対し、投資するケースもあります。
・競合他社に対する視点
たとえば成長が緩やかな市場でも、競合他社が少ない場合は高い収益性があると見られ、出資に応じてくれることがあります。
まとめ
おわりに
ベンチャー企業の資本政策では、投資家やベンチャーキャピタルからの出資が、重要な鍵を握ることがほとんどです。彼らの心理や狙いを考え、適切な妥協点を見つけることで、より良い結果が得られるでしょう。
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