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世代交代に伴う事業の継承や、完全子会社化などを目的としたM&Aを行う場合、少数の株式を保有している株主から株式を取得しなければならないケースがあります。このとき、少数株主から株式を強制的に取得する手続きを「スクイーズアウト」といいます。

このスクイーズアウトを行う際、企業の株価は適切に算定されている必要があり、仮に株価が不適切であればスムーズに株式取得を進められません。

今回は、スクイーズアウトを行う際の手続きの仕組みと、適切な株価算定をすることの重要性について詳しく解説していきます。

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1.株主を強制的に締め出す「スクイーズアウト」とは?

スクイーズアウトは、少数株主が保有している全ての株式を強制的に取得して会社から締め出すことによって、100%の支配権を得るという手法です。もし売却に応じない株主が現れたとしても、適正な対価を支払うことによって、法律に基づいて保有株式を取得することができます。

2014年(平成26年)に改正会社法で制度の見直しがされたことにより、スクイーズアウトが一般的な株式取得の手法として利用されるようになりました。

特に中小企業におけるケースのように、少数の株主が分散してしまっている会社でも、株主1人1人に対して交渉をすることなく、スムーズに株式の買い取りを行うことができます。

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2.スクイーズアウトの4つの方法

スクイーズアウトを実際に行うとき、候補となる選択肢は下記の4つです。

  1. 株式併合によるスクイーズアウト
  2. 株式等売渡請求によるスクイーズアウト
  3. 現金対価株式交換によるスクイーズアウト
  4. 全部取得条項付種類株式によるスクイーズアウト

こちらについて以下で詳しく解説します。

①株式併合によるスクイーズアウト

株式併合は、複数の株式を1株に統合することを指し、本来は発行済の株式数を減らすために行われます。株式数と株価を調整して併合するため、理論上では資産価値に変化はありません。

スクイーズアウトにおける株式併合では、株主総会の特別決議を経て「少数株主の保有株式」を1株未満にすることで、議決権を消滅させるという工程を取ります。会社法で、株式保有が1株未満しか持たない株主は、株主としての権利が認められていません。これにより、端数となった1株未満の株式を大株主が買い取ればスクイーズアウトは完了です。

ただ、こちらは株主総会での特別決議が必要です。そのため、大株主が議決権割合の3分の2(約66.7%)以上持っている場合に使用されます。

②株式等売渡請求によるスクイーズアウト

株式等売渡請求とは、議決権の90%以上を保有する大株主が、会社の承認を経て自分以外の株主から株式を取得する手法です。

一般的には、公募買い付け(TOB)を経てなお、議決権の3分の2(約66.7%)〜90%未満しか持っていない場合は株式併合を利用しますが、90%以上を取得できれば株式等売渡請求を使用してスクイーズアウトを行います。株主総会の決議を必要としないため、短期間のうちに株式を集められることが最大のメリットです。

③現金対価株式交換によるスクイーズアウト

株式交換の対価として現金を支払うことで、少数株主から株式を集める手法です。この方法は株式等売渡請求と異なり、株式交換を行うために株主総会の特別決議が必要となります。

従来は、買収者(合併法人)が合併の対価として現金を交付すると「非適格合併」となり、資産・負債を簿価のまま引き継ぐことができず、時価評価して課税されたのちに買収者へ引き継がれていました。

さらに、適格合併でなければ繰越欠損金を引き継げないため、「黒字と相殺して節税できる」というメリットが損なわれていたのです。こういったデメリットから、実務であまり利用されることはありませんでした。

しかし、平成29年度の法改正により、買収者が発行株式数の3分の2以上を保有するとき、対価として現金を交付しても適格要件をパスできるようになりました。株式交換にあたり現金を対価とするため、特別決議の有無以外は株式譲渡に近い構図となります。

④全部取得条項付種類株式によるスクイーズアウト

全部取得条項付種類株式は、「全株式を強制的に買い上げられる」という権利を会社に与える種類株式の1つ。この手法では、普通株式を全部取得条項付種類株式に変更して、前述した特権を利用することでスクイーズアウトを実施します。

平成29年度の法改正以前は広く利用されていたものの、「種類株式への変更」と「種類株式の買い上げ」に特別決議を要するため、労力の大きさから優先度は低下しました。他の手法の利便性が高まったことから、ほとんど利用されることのない手法となっています。

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3.どのような場面でスクイーズアウトを利用するの?

強制的に少数株主を排除できるスクイーズアウトは、以下のような場面で利用されます。

  • 支配権を集中させて意思決定をスムーズにしたいとき
  • 対立的な考えを持つ少数株主を排除したいとき
  • 株主と連絡が取れなくなってしまったとき

こういった対応を迅速に実行できるよう、合法的に少数株主を締め出し、合理的な経営を進めていくためにスクイーズアウトという手法が存在しているのです。

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4.スクイーズアウトと株価算定の関係性とは?

スクイーズアウトを行う際の買取金額は大株主が主導して決定し、基本的に少数株主に金額交渉の余地はありません。大株主側としては、できる限り低い金額を提示して株式取得を進めていくのが理想といえます。

この時、もし少数株主側で買い取り価格に異議がある場合は、株式取得予定日の前日までに裁判所に対して公正な価格の決定を求めることができ、この場合の最終的な価格判断は裁判所が行います。

①株価算定が重要である理由

スクイーズアウトを行う際にあまりにも低い金額を提示してしまい、少数株主から訴訟を起こされた場合、裁判所の判断により売渡請求を止められてしまうケースがあり、株式の取得そのものができなくなってしまうこともありえます。

そのような事態が起こってしまうと、最終的にはM&Aそのものができなくなってしまう可能性があるため、適切に株価算定を行うことがM&Aを進めていく上では非常に重要であるといえます。

②スクイーズアウトにおける裁判の実例

スクイーズアウトの買い取り価格が不服で裁判に至った例として、平成20年にカネボウが花王に事業売却をした際の事例が有名です。カネボウは創業時からの個人株主が多かったため、株式の取得がスムーズにいかなかったといわれています。

はじめにカネボウが公開買い付けを行い、1株あたり162円の値段をつけましたが、この株価に納得しなかった株主が訴訟を起こし、結果的に裁判で価格が決められることになりました。

反対意見のなかには1000円以上の価格を主張する株主もいましたが、最終的に裁判所は1株360円という値段に決定。そのため、裁判前の公開買い付けで売却した株主は1株162円で売却したのに対して、株価に納得せずに訴訟を起こした株主は1株360円で売却するという、大変不公平な結果が生まれてしまったのです。

また、この裁判にかかった費用や時間も、大変大きなロスになってしまうという結果になりました。このような事態を避けるべく、保有株主が納得できる金額を提示するために、税理士や公認会計士によって適切な株価算定をする必要があるのです。

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5.スクイーズアウトの方法と進め方

実際にスクイーズアウトの手続を進める際に、まず先行手続として株式の公開買付けを行って、買収者の議決権比率を高めておき、その後スクイーズアウトを実施します。

スクイーズアウトのデメリットやリスク

大変合理的に思えるスクイーズアウトですが、スムーズに少数株主を締め出せるというメリットの裏側には、デメリットやリスクが存在します。

カネボウの事例からも分かるように、大株主が検討している株価よりも、少数株主が適正だと考える株価が大幅に高いケースがあります。これを防ぐため専門家に株価算定を依頼するのですが、算出された株価を見て予想を超える高額さに驚く大株主も少なくありません。

また、少数株主の対応によりタイムスケジュールが左右されることも、ある種スクイーズアウトのデメリットだといえます。そのため、あくまで労力・時間・金銭的にコストがかかると割り切って臨むべき施策です。

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まとめ

スクイーズアウトは会社法改正によってM&Aにおける一般的な手法になりましたが、株価算定を誤ってしまうとその後の手続きに膨大な時間がかかってしまったり、最悪の場合M&Aそのものが頓挫したりする可能性があります。

税理士や公認会計士にきちんと依頼をして公正な株価算定を行うことが、スムーズなM&Aを行うために欠かすことのできない重要なポイントだといえるでしょう。

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