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この記事でわかること

  • 新株予約権を資金調達で用いるときのメリット、従業員や役員等の報酬に用いるときのメリット、買収防衛に用いるときのメリット
  • 新株予約権を導入するときに必要なこと。行使価額や行使期間の決め方、税制適格要件の特徴について
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はじめに

新株予約権とは、あらかじめ決められた価格(行使価額)で株式を取得できる権利です。

実務では、投資家に付与することで資金調達を実現したり、従業員や役員などに付与してモチベーションを上げるなど、さまざまなシーンで用いられています。

この記事では、新株予約権のメリットについて一覧でご紹介。次いで、運用するときに決めておきたい事項と注意点をあげています。

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1.【目的別】新株予約権のメリットまとめ

新株予約権は、その目的によって細かく種類が分かれます。

一般的にあげられるのが、資金調達・役員や従業員への報酬・買収防衛の3種類です。それぞれに分けて、メリットをご紹介します。

①資金調達を目的とした新株予約権のメリット

資金調達を目的とした新株予約権には、主に新株予約権付社債・CE型新株予約権・MSCB・MSWの4種類があります。

資金調達を目的とした新株予約権の種類内容メリット
新株予約権付社債新株予約権が付いた社債。Convertible Bondとも言う。権利付与者が権利行使をした際に、返済の義務が発生する投資家に対して魅力を感じてもらいやすくなり、安定した資金調達が望める
CE型新株予約権コンバーティブル・エクイティ型の新株予約権のこと。新株予約権付社債から負債の部分を取り除いたものを指す資本政策の一戦略として導入しやすい
MSCB行使価格修正条項付転換社債型新株予約権付社債(Moving Strike Convertible Bond)のこと。1株あたりの株価が、権利を付与した企業の株価変動によって修正される機能が付いた新株予約権付社債安定した資金調達が期待できる。株式の希薄化(1株あたりの価値の減少)をコントロールしやすい。財務の健全性が図れる。
MSW行使価格修正条項付新株予約権(Moving Strike Warrant)のこと。MSCBのうち、負債の部分を取り除いたものを指す株式の希薄化(1株あたりの価値の減少)をコントロールしながら資金調達ができる。財務の健全性が図れる。

②役員や従業員への報酬を目的とした新株予約権のメリット

新株予約権には、役員や従業員等への報酬(インセンティブ)を目的とするものがあります。

これはストック・オプションと呼ばれ、通常型ストック・オプション、株式報酬型ストック・オプション、有償ストック・オプションの3種類に分けられます。

ストック・オプションの種類内容メリット
通常型ストック・オプション一般的なストック・オプション。キャピタルゲイン(行使価額から権利行使時の時価を引いて発生した利益)が従業員や役員等のインセンティブとなる従業員のモチベーションを上げられる
株式報酬型ストック・オプション株式を報酬としたストック・オプション。行使価額が1円で設定されることが多い行使価額が低廉(1円)で権利付与者のキャピタルゲインが発生しやすいため、インセンティブ制度に適している
有償ストック・オプション権利付与時に、従業員や役員等に金銭の支払いを求めるストック・オプション従業員のモチベーションを上げられる。課税を繰り延べることができ、権利付与者の税負担を軽減できる

③買収防衛を目的とした新株予約権のメリット

新株予約権は、ときおり敵対的な買収を防ぐために用いられます。

たとえば、事前に経営陣や安定株主に付与しておき、ある一定の持株比率(発行済株式数に対する保有株式数の割合)を超える株式の取得があった場合に権利行使ができるように設計。

それによって、相手企業に市場で株式を買い集めたり株式公開買付(TOB)を実施されても、権利行使をすることで相手企業の持株比率が下がり、経営権が奪われなくなります。

主なメリットは、新株発行と異なり、スムーズに対策を講じられる可能性が高いこと。

相手企業の持株比率の低下だけを目的に株式を発行しようとすると、差止めの対象になりやすいとされていますが、新株予約権であればそれを回避することが可能です。

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2.新株予約権を運用する際に決めること5つ

新株予約権は、主に3つの目的で行われ、それぞれに異なるメリットがあることを見てきました。

早速、導入したいところですが、焦りは禁物。

新株予約権にはいくつか決めなければいけないことがあり、それぞれに注意ポイントがあります。以下に詳しく紹介するので、あわせて抑えておきましょう。

①目的

ここでの目的は、第1章でご紹介した3種類のいずれにするかを決めるだけではありません。

資金調達であれば、「いつ、誰から、いくら調達するのか」。ストック・オプションであれば、「役員や従業員に対してどんなことを期待するのか」など。

新株予約権を十分に活かすためには、以上のように具体的に決めることが重要です。

②行使価額

行使価額は、基本的には目的に合わせて設計されます。

(新株予約権付社債は株式割当で返済を賄うため調節する、通常型ストック・オプションはあえて権利付与時の時価よりも高くするなど、ある程度のセオリーはあります)。

一方、税制適格要件(詳細後述)を満たすストック・オプションを付与する場合は、注意が必要。

権利を付与する人の権利行使価額の年間合計額を1,200万円以下にしないと、適用外になってしまうからです。

③行使期間

行使期間は、権利行使が可能となる期間のことです。行使価額同様、目的に沿って設計します。

ただし、こちらも税制適格要件を満たす場合は、権利付与が決議された日の2年を経過した日から10年の経過する日までとしなければいけません。

④税制適格(ストック・オプションの場合)

新株予約権のひとつであるストック・オプションのうち、通常型ストック・オプションには税制適格制度があります。

税制適格制度とは、権利を付与した人にかかる税金の負担を軽減できる制度です。

・制度が適用されるためには?

制度が適用される(税制適格ストック・オプションを付与する)ためには、たとえば次の要件を満たさなければいけません。

税制適格要件
無償発行であること
権利付与者が会社およびその子会社の取締役等ではないこと
権利付与者が大口株主やそれの特別関係者ではないこと
権利付与者の行使価額の年間合計額が1,200万円以下であること
権利行使期間が権利付与が決議された日の2年を経過した日から10年の経過する日までであること

ほかにも、さまざまな規定があるので、租税特別措置法29条の2に目を通すようにしましょう。

・なぜ節税が期待できる?

一般的に、ストック・オプションでは、権利行使時と株式譲渡時の2回にわたって税金が発生します。

留意しなければいけないのが、権利行使時のときにかかる所得税課税が累進課税であることです。つまり時価との差額が大きければ大きいほど、権利付与者への負担が大きくなります(最高税率は約55%)。

ところが権利行使時の段階では、権利付与者は株式譲渡をしていないため、まだ利益を得ていません。

手元のお金が少ない中で税金の負担がかかるので、場合によっては権利付与を断る従業員等が出てくる可能性もあるでしょう。

一方、税制適格ストック・オプションであれば、権利行使時に発生する課税を株式譲渡時に繰り延べられます。株式譲渡益課税の場合は、税率が20%(未上場株式・上場株式問わず)なので、節税効果が期待できるというわけです。

⑤買取請求対策

新株予約権を付与する際、近いうちに株式分割や株式交換といった組織再編を検討しているときは、別途取り扱い規定を設けるのがよいとされています。

組織再編は権利付与者に不利益をもたらす可能性が高く、もし権利付与者から買取請求があった場合、誠実に対応をしなければいけないからです。

ほかにも、後から譲渡制限株式にする、全部取得条項付種類株式にするなどの場合も、権利付与者に不利とみなされやすいため留意しておきましょう。

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まとめ

  • 新株予約権は、導入の目的が資金調達なのかインセンティブなのか買収防衛なのかによって種類が分かれ、メリットも異なる。
  • 税制適格ストック・オプションを付与するときは、税制適格要件を満たすように。細かく定められているので、要件が記載されている租税特別措置法にも目を通すことが大事。
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おわりに

新株予約権には数種類あり、それぞれ適した場面が異なります。

各々のメリットを把握していただくことが、適材適所で活用するための第一歩です。

特に新株予約権は、イグジットを目指す企業にとって重要な資本政策の方法のひとつにもなっています。

もしよければ、KnowHowsの「資本政策シミュレータ」を利用してみてください。

いつ、どんな新株予約権を導入すればいいのか知ることもできるでしょう。

必要な項目を入力するだけなので、本記事とあわせてぜひお役立ていただければ幸いです。
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