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会社を買収する時:バイサイドM&A

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今回は、会社を買収する時のM&A(バイサイドM&A)について書いていきたい。

2021年現在でも、コロナ禍で積極的に買収を狙っていく事業会社やプライベートエクイティファンドは多い。
特に事業会社はコロナを機にノンコア事業を見直しやポートフォリオ整理の一環で自社の事業を売却する流れも引き続き継続するものと思われ、それに呼応してM&A案件も引き続き増加傾向にある。

事業会社でもコロナ禍でバリュエーションが一時的に下がっていることを好機をとらえて買収を行う企業、TechやDXといったホットなセクターでは買収を行う企業も多くなっている。PEファンドも同様に積極的にファンドレイズを行い、日本国内でも新興系のPEファンドが増えてきている。

それに伴いオークションプロセスを踏んでいる売却案件や、中小規模の案件であればM&A仲介の企業のネットワークを利用して相対で買収に動くPEファンドも多い

今回は、取引はシンプルに100%株式譲渡をイメージしている点に留意されたい。また、記事の視点や事業会社・アドバイザー目線の双方に伝わるように
心がけた。

目次

  1. 案件の提案・持ち込み
  2. キックオフミーティング
  3. 初期的なバリュエーション等の検討
  4. 1次意向表明書提出
  5. デューデリジェンス(Due Diligence: DD)
  6. 最終意向表明書、SPA(株式譲渡契約書)
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案件の提案・持ち込み

バイサイドM&A案件は大手日系事業会社の場合は、過去に付き合いのあった投資銀行やM&Aアドバイザリーファーム、会計事務所から、現在売却プロセスにかかっている案件を紹介され、自社の事業とシナジーを見込むことができれば、FA(Financial Advisor)を起用して検討することになる。

大手の事業会社になると、経営企画部のM&A担当が買収したい企業をリサーチしているのに加え、懇意にしている投資銀行のカバレッジ担当から「今こんな会社が売却プロセスに出されているor 近いうちに売却される可能性が高い」といった話を持ち掛けられ検討を開始するということも多い。

いずれのルートでも、いざ事業会社側で買収案件のゴーサインが出てFAの起用が決まれば速やかにアドバイザリー契約を結び、キックオフミーティングが始まることになる。

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キックオフミーティング

案件がスタートすると、まずはアドバイザーとクライアント間でキックオフミーティングを行う。キックオフ用の資料はバイサイドについたFAが用意する。
キックオフ資料の内容は案件により異なるが、概ね①:チーム構成、②:ディールスケジュール、③:想定される取引ストラクチャー、④:今後のプロセスで起用するDDプロバイダーのリコメンド、⑤:チームメンバーの連絡先が一般的であろう。

ディールスケジュールの作成においてはクライアントの経営会議・取締役会等が重要なイベントに加えて、ディールを進める上でキーとなるイベント(一次意向表明書の提出期限、DD、マネジメントプレゼンテーションの有無等)を盛り込んでいき、クライアントのプロジェクトチームとの顔合わせを行っていく。

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初期的なバリュエーション等の検討

オークションプロセス・相対取引のいずれにせよ、会社買収時には一次入札(1st bid)において意向表明書(Non-Binding Offer: NBO)を作成し、売主および売手FAに提出しないといけない。

この時点では買手側が持っている情報はティーザー(案件概要を記載した1-2枚のサマリープレゼンテーション)、およびNDA締結後に受領するインフォメーションインフォメーションメモランダム(IM)に記載されている情報が中心である。

買手はFAのアドバイスを受けながら、一次意向表明書に記載する価格が入札を通過できる水準になるよう初期的なバリュエーションを行う。

オークションプロセスにおいて、対象会社が優良なアセットである場合は買手間での競争が厳しくなるのでバリュエーションは競争力のある水準を提示する必要性がどうしても出てくる。

特にPEファンドが買手候補先に含まれている場合には、PEファンドはレンダーである銀行からLBOローンを引き出しやすい状況であればあるほど、アグレッシブな価格を提示する可能性が高い。この点についてはLBOローンマーケットの状況にも左右されるが、PEによる高値での買収競争はレンダーの影響もある点は頭に入れておくと良いであろう。

事業会社はPEファンドのようにレバレッジをかけることができない代わりに、自社の既存事業ポートフォリオとのシナジーによるアップサイドを含めることができるが、一次意向表明書提出時点ではDDを行っておらず、シナジーの定量化も難しいため、スタンドアロンでの評価が一般的になる。

1st bidの後は、final offerとして法的拘束力のある意向表明書を提出するが、DD実施後にfinal offerで一次意向表明書(NBO)に提示したバリュエーションを大きく下回って提示すると売手の心象も悪くなり、final bidderになることができないリスクもあるので、NBOに記載すべき価格はアドバイザーとクライアント間でディスカッションしながら妥当な水準を決めていく。

バリュエーション手法は一般的な類似上場会社比較法・類似取引比較法・DCF法により行うことが多く、バリュエーション結果を一定のレンジで試算する。

NBOに記載すべきバリュエーションについてはXXX百万円として決め打ちで提示する場合と、XXX百万円~XXX百万円と提示するパターンがあるが、後者の場合は売手は下限の数値で他の買手候補と比較することが多い点に留意が必要である。

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1次意向表明書提出

無事にバリュエーションの検討が進んでいき、プロセスレターに記載されている項目を埋めて意向表明書をドラフトしていく。

M&Aに慣れている事業会社であれば、まずはクライアント側で意向表明書をドラフトし、アドバイザー側でレビュー・適宜にフィードバックをして最終化していくが、そうでなければFAの方でNBOをドラフトし、クライアントの質疑や内部的な確認を経て進めることが多い。

NBOに必ず記載すべき項目のうち、Financing(買収時の資金調達)をどのようにするか(全額自己資金で賄うのか、それとも借入が必要か、もしくは自己資金と借入の両方か)も重要な記載事項であるし、買収主体の会社概要、本件買収の合理性(Rationale)を記載することになる。
特にRationaleの記載は、売手に対して買手の本気度や取引実行可能性を伝えるための重要な要素であると理解される。
なお、買手目線で言えば、ストラクチャーについても、買手が税務上のメリットを享受できるようアドバイザー(FAおよび税務アドバイザー)と握っておく必要もある。

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デューデリジェンス(Due Diligence: DD)

一次意向表明書(NBO)を提出し通過した場合は、DD以降のプロセスに進むことになる。
DDは相当な量のQA対応が必要になるので、M&Aのプロセスの中でも双方ともに負担が大きくなる期間である。

アドバイザーもクライアント側もNBO通過後は速やかに売手FAが用意したVDR(バーチャルデータルーム:Virtual Data Room) にアクセスし、アップロードされている資料の確認を行う。
VDRではビジネス、財務、法務、税務、環境等のカテゴリに分けて見やすく整理されていることが多く、売手がセルサイドDD(またはベンダーDD:Vendor Due Diligence, VDD)を行っている場合はVDDレポートも閲覧可能である。

DDでは買手側は売手に対するQAを行うが、この際のQAシートのテンプレートは売手FAから提示されるのでそれに従いQAをドラフトする。また、VDRにアクセスすべき社内プロジェクトメンバーは別途売手FAに伝え、遅滞なくアクセスできるようにする。

シナジーの定量化と正常化収益力の測定は、ビジネスDDおよび財務DDレポートを参照しながら行い、主にFAがDD後に行うバリュエーションに関するディスカッションマテリアルで最終意向表明書に提示すべき価格が議論されることになる。
特に財務DDでは正常収益力測定においてNormalized EBITDA(正常化調整後EBITDA)が最終意向表明書に記載するバリュエーション時に参照するEBITDAになるので重要な論点である。

買収主体であるクライアントは当該バリュエーションレポートを受けて、適宜質疑や追加的な分析の依頼を行うのが一般的であり、同時にCFOや事業部管掌の取締役に対する説明が重要になってくる。

上場企業で、かつ買収価格が多額になる場合にはのれんの検討、EPSの変化、希薄化分析、信用格付けに変化は起こらないか等、財務やコーポレートファイナンス面で多くの分析が必要になる。

この他にも、買手目線では繰越欠損金の有無や、過去の税務調査で指摘された事項がきちんと手当されているか、海外法人において税務申告は適切になされているか、二重帳簿はないか等限られた時間でDDを実施していくことになる。

DDの他にも、対象会社によるマネジメントプレゼンテーション(MP)が実施される場合もあり, QAシートのやり取り中心のDDに加えて、直接対象会社とコミュニケーションを図ることができる。
ただしコロナ禍では対面ではなくオンラインで実施することも増えているのが実情である。

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最終意向表明書、SPA(株式譲渡契約書)

DDの結果を通じて最終意向表明書提出と、さらに売手から提示されるSPA雛形に対するマークアップ含めた交渉、SPAもしくはAPA(アセットディールで必要になるAsset Purchase Agreement)等のDA(Definitive Agreement)締結がDD後の重要なディールのイベントである。

最終意向表明書(Final Offer)は法的拘束力があるものであり、NBOと同様に、2nd phase process letterに記載されている項目に従って、買収価格・Financingの諸条件・ストラクチャー等が記載される。

この時、事業会社であれば法務部への確認等の諸手続きが、Final Offerの提出日に間に合うように社内調整を進めることが肝要になる。

DD後に弁護士を交えてSPAの交渉を終えて、無事にSPAへのサイニングが済み、クロージングの前提条件を充足すれば無事にクロージングとなる
(⋆サイニングとクロージングの間にある、CP(Condition Precedent)というクロージング前提条件の充足には一定期間を要す場合が多く、アドバイザー・クライアントともに気が抜けないプロセスである)

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この記事を書いた人

後藤 雄二

M&Aアドバイザー

 プライベートエクイティ

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初めまして、後藤と申します。

当方のキャリアを簡単に説明しますと以下のようになります。
・公認会計士試験および証券アナリストに合格
・大手監査法人およびBig4 FASにて会計監査業務・M&Aのデューデリジェンス、バリュエーション、およびアドバイザリー業務に従事
・その後外資系投資銀行にてM&Aアドバイザリー業務に従事。主に日系および外資系の事業法人やPEファンドに対し、買収・売却のアドバイザリー業務を提供

noteでも情報発信をしております
https://note.com/yunolife

M&Aアドバイザリーやコーポレートファイナンス実務の経験を踏まえて、皆様にノウハウをお伝えできればと存じます
どうぞよろしくお願い致します。

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