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バリュエーション - Valuationについてである。

バリュエーションという言葉自体が横文字であることや、何となく専門家しか扱えないイメージが先行している感はある。バリュエーションのスキルは実際にM&Aや投資の場面で必須であり、それが多くの金融プロフェッショナルの判断基礎になっていることは事実。

しかし、一般企業の人や学生でも転職や就職で必要になったり、実際に自営業としてビジネスをやっているが、自分の会社を売る時に実際にどれくらいの金額になるのかを把握しておきたいという人は一定数いると思う。

バリュエーションで重要なポイントは、アセットクラスとリスク、そして期待リターンを正しく推計するのが本質と思うものの、ここではテクニカルな手法を解説せず、実務や投資の場面でどのように使われているかを下の4つを例に書いてみた。
「貨幣の時間価値」という概念さえ理解していれば問題ない

目次

  1. 【M&A】
  2. 【株式投資】
  3. 【プロジェクト投資】
  4. 【会計目的】

【M&A】

M&Aとは、Mergers and Acquisitions(合併と買収)の頭文字である

M&Aは端的にいうと、会社の売り買いである。物の売り買いには必ず「いくらで買うか」「いくらで売るか」といった双方のポジションが大事になるので、バリュエーションを適切に実施することは非常に重要だ

実際にM&Aの現場でバリュエーションを行う主体は投資銀行のようなアドバイザー、案件によっては大手会計事務所(Big4 - Deloitte, KPMG, EY, PwC)の財務アドバイザリーのバリュエーションチームに依頼することもある。

分かりやすい例を挙げてみると、ある日本企業のクライアントが海外企業X社を買収を検討しており、あなたが日本企業のアドバイザーの立場で投資銀行で働くバンカーだとしよう。

この時、(仮に入札案件だったとして)、1次入札で買収対象企業X社の企業価値を計算しないといけない。その際にバンカーのあなたはX社のバリュエーションを実施する。このような事業会社の買収案件では入札書類(1次入札の段階では法的拘束力がないのでNon-Binding Offer (NBO)に、バリュエーションの項目があり計算手法・根拠を記載する

大体は類似上場会社のバリュエーションマルチプルや割引キャッシュフロー法(Discounted Cash-flow Method - DCF法)が用いられ、計算根拠として用いられた財務数値や事業計画が記載される。

バリュエーションの実務自体はエクセルで行われ、DCF法であれば将来キャッシュフローと割引率をどう見積もるかが主なポイントになる。他にも色々な論点があるのだが、それは別の機会に譲ることにして、ここでは割愛する。

【株式投資】

個人で株式投資する場合は、上場株式のバリュエーション指標としてPBRとPERがメジャーな指標になると思う

PBRは1.0を基準として、1を下回っていれば割安に評価されている銘柄と判断できる。PBRが1を下回っている銘柄であれば配当利回り(株価と配当の比率)を見てみるといい。

配当利回りが5%を超えていて、PBRが1を下回っているような企業は、お買い得と言える(俗にいう、高配当利回り株である)

PERは端的にいえば、株価は純利益の何倍で評価されているか、である。企業の成長可能性が高ければPERは高くなり、一般に15倍を下回っていれば割安と評価される

割安な銘柄を探すのに適した指標としてPEGレシオがある。これはPERをEPS(Earnings per Share: 1株当たり当期純利益)の成長率で除したものであり、1を基準として割安銘柄を探すことができる

【プロジェクト投資】

事業会社や商社では、新たにプロジェクト投資をする際に投資の採算性分析を行い、その際にプロジェクトのバリュエーションが行われる。

プロジェクト投資では、一般にNPV(Net Present Value)=正味現在価値を基準に投資の採算性を検討するが、これはDCF法と同様に、プロジェクト投資から得られる将来キャッシュフローを、一定の割引率でディスカウントし現在価値を計算する

投資時点のプロジェクトの現在価値から、投下資本を控除した数字がそのプロジェクトから得られる純収入=NPVということになり、当該数値の大小で投資の採算性を検討する。もちろんNPVが負になるような投資は実行しない。

ちなみに投資ファンドの意思決定で使用するIRRもNPVと密接な関連がある。即ち、IRRを高くしたければ投資後早い時期に多くキャッシュインフローが流入し投資の元本を回収、超過分が投資期間において継続するような、キャッシュフローを潤沢に生む案件が望ましい。このような案件はNPVも正である。

プロジェクトの採算性検討時は、割引率に何を使うかがキーポイントになるだろう。社内で使用しているハードルレートを用いるのが一般的であるが、実際には割引率には投資リスクを加味した数値を用いるのが適切なこともある。実務上は(投資銀行のバンカーがやるのと同様に)割引率と将来キャッシュフローの成長率で、エクセルのモデル上で感応度分析を行うことが多い

なお、石油や資源セクターに関する複雑なモデルは、総合商社とはいえ、外部のプロフェッショナルファームに委託して作成することも多い

【会計目的】

こちらは、一般にはなじみのない項目だと思う。

と言うのも、一部の会計基準(例えば、減損会計)では将来キャッシュフローを見積りそれを一定の割引率で割り引いた現在価値と簿価を比較する、といった手続が要求されている。これはざっくりいえば会計目的のバリュエーションだ

他にも、M&Aで生じた投資差額(即ち、買収金額と買収した会社の純資産の差分)であるのれんや無形資産をどのように配分するかといったトピックもある。(専門用語ではPurchase Price Allocation: PPAという)。投資銀行での実務では買収差額のうち、X%をのれんに、それ以外を識別可能無形資産に配分するという簡易的なモデルが多いが、実際に決算への影響を厳密に計算する場合は会計事務所の専門チームを起用するケースが多いと思う

よく新聞やニュースで、「XXX社が20XX年3月期に固定資産の減損によりXX円の特別損失を計上!」というメッセージを見かけることがあるが、その裏には、減損会計をめぐって経営陣と監査法人の間で緊張感のあるやり取りが行われている。これはM&A後に発生するのれんについても同様である。のれんの減損というのは、経営者にとってみれば買収の失敗を意味する。

というのも、のれんは買収した企業に対して支払ったプレミアムのようなものであるから、そのプレミアムを後から減損で切り下げるのは、そもそもの買収判断が誤っていたとうことになってしまう。即ち経営者にとっては株式市場から、「買収の妥当性の説明」を求められてしまうため、のれんの減損は極力したくないというのが本音である。

のれんの論点のみならず、金融商品の監査や、銀行における自己査定監査でもバリュエーションの素養は必要になる。特に銀行のプロジェクトファイナンスの貸し出しにかかる監査では、貸出先の信用リスクや財務リスク(特にキャッシュフローやDSCRの数値等)を見て分析することが多い

会計の局面でも、経済活動や金融取引が複雑になるにつれバリュエーションの素養が必要になることも多くなっている

ここにノウハウを出品

この記事を書いた人

後藤 雄二

M&Aアドバイザー

 プライベートエクイティ

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初めまして、後藤と申します。

当方のキャリアを簡単に説明しますと以下のようになります。
・公認会計士試験および証券アナリストに合格
・大手監査法人およびBig4 FASにて会計監査業務・M&Aのデューデリジェンス、バリュエーション、およびアドバイザリー業務に従事
・その後外資系投資銀行にてM&Aアドバイザリー業務に従事。主に日系および外資系の事業法人やPEファンドに対し、買収・売却のアドバイザリー業務を提供

noteでも情報発信をしております
https://note.com/yunolife

M&Aアドバイザリーやコーポレートファイナンス実務の経験を踏まえて、皆様にノウハウをお伝えできればと存じます
どうぞよろしくお願い致します。

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