本を読んでもわからないM&Aにおけるデューデリジェンスをイチから解説!
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この記事でわかること
- 株式譲渡によるM&Aの特徴と注意点
- 株式譲渡によるM&Aの主な流れ
- 株式譲渡における株価の算定方法
はじめに
M&A(買収)の手法のひとつに、株式譲渡があります。株式譲渡は、主に金銭を対価として、保有している株式を譲り渡す行為です。
この記事では、株式譲渡によるM&Aの特徴や注意点など詳しく見ています。また、株式譲渡における株価の算定方法を記しましたので、相場を掴む参考としてください。
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1.株式譲渡によるM&Aの概要
M&Aでは、株式譲渡がひとつの手段として用いられています。どのような特徴があり、注意すべきことは何かを見ていくことにしましょう。
①株式譲渡によるM&A=株式売買による経営権の移動
M&Aの手法として株式譲渡を行う場合、売り手企業が買い手企業に株式を譲り、その対価として買い手企業から現金をもらうのが一般的です。
買い手企業が売り手企業の株式を取得した際、どの程度の数の株式を取得するかは取引によります。しかし、基本的には経営権をコントロールできる比率(発行済株式数に対して50%以上)を取得することになります。
株式譲渡によるM&Aは、言い換えると、株式の売買によって経営権が移動する取引となるでしょう。
経営権を取得した買い手企業のことを親会社、経営権を明け渡した売り手企業のことを子会社と呼びます。すべての株式(100%)が譲渡されることを完全子会社化と言いますが、これは売り手企業が買い手企業の支配下に、完全に置かれている状態のことです。
・同じ株式譲渡でも場合によって売買の方法が異なる
株式譲渡によるM&Aは、譲渡は譲渡でも、売り手企業が未上場企業か上場企業かによって方法に大きな違いがあります。
まず未上場企業の場合は、株式市場に株式が公開されていないため、基本的には売り手企業と買い手企業の直接交渉によって行われます。価格について協議し、お互いに納得すれば取引成立、という流れです。
上場企業の場合は、株式が株式市場に公開されています。そのため、市場買付(株式市場で流通している株式を買い集める方法)と、TOB(証券市場外で株式を買い集める方法)のいずれかを用いられるのが一般的です。
②M&A手法として株式譲渡を用いるときの注意点
株式譲渡は、M&Aの手法の中でも、比較的手続きが簡単と言われている方法です。また、事業承継対策に向いているなどのメリットもあり、M&Aではしばしば採用されます。
ただし、次のような注意点があるので、実施の前に把握しておいてください。
・株式譲渡によって得た現金に税金がかかる
第1は、株式譲渡が成立し、買い手企業から支払われた現金(譲渡所得)には税金がかかる点です。税率は、所得税15%と住民税5%を合わせた20%となっています。
なお、譲渡所得の申告期限は、株式を譲渡した年の翌年の2月16日から3月15日までです。たとえば2019年7月15日に譲渡したのであれば、申告は2020年2月16日~3月15日に行わなければいけません。
・株式の評価に恣意性が介入しやすい(特に未上場企業の場合)
第2は、株式の評価に恣意性が介入しやすい点です。
未上場企業の場合は、保有している株式がどのくらいの価値をもっているのか、事前に算定する必要があります。
株式の評価が高ければ、もちろん譲渡によって得られるお金は高くなるため、売り手企業としては高い評価をつけたいところ。しかしそれでは、買い手企業との交渉が難航するどころか、そもそも買い手企業が現れない可能性も出てきてしまいます。
そのため、通常は既存の計算方法を用いて、妥当な評価を行うのですが、それでも恣意性が介入しないとは言い切れません。いくつかの計算方法を用いて多角的に評価し、客観性を常に意識するようにしましょう。
・偶発債務を見落とすと解約される恐れがある
第3は、偶発債務を見落とすと、仮に株式譲渡が成立しても、後になって解約されることもある点です。
偶発債務とは、貸借対照表に記されていない債務である簿外債務のひとつで、将来発生する可能性のある債務のこと。たとえば債務の保証人になった、受取手形を第三者に譲渡した(裏書譲渡)などが該当します。
株式譲渡は、買い手企業に企業を包括的に引き継がせる手続きです。そのため、資産と同時に、こうした偶発債務も渡してしまうことになります。
もし売り手企業がこれを見落とし、買い手企業に伝え忘れてしまうと、「債務があるなんて聞いていない。契約はなかったことにさせてもらう」となることも考えられます。
取引を実施する際は事前に偶発債務があるかないかチェックし、ある場合は買い手企業に隠さずに報告しましょう。もちろん、日頃から偶発債務が発生しないように気を配るのも大切です。
2.株式譲渡によるM&Aの主な流れ
続いて、株式譲渡によるM&Aの主な流れについて解説します。
①売り手企業と買い手企業のマッチング
まず自社の株式を購入してくれる買い手企業を探します。多数の買い手を募集するために、匿名で会社概要や株式譲渡の内容を記載した案内書(ノンネームシート)を作成するのが一般的です。
また、取引をスムーズに進めるために、M&Aアドバイザーのような専門家にマッチング作業の依頼するのが通例となっています。
買い手企業が見つかったら、買い手企業が提示する価格や時期などの基本条件を確認し、交渉を行います。
②基本合意書の締結
双方が条件に合意したら、基本合意書の締結です。基本合意書には、主に合意した基本条件の内容、独占的交渉権の付与、デュー・デリジェンス(詳細後述)の実施の旨などが記載されます。
③デュー・デリジェンスへの対応
デュー・デリジェンスは、買い手企業が売り手企業に対して行う調査のこと。売り手企業が、買い手企業の募集段階で提示した情報は本当に正しいのか、確認のために実施されるものです。
財務面に関する調査は会計事務所などの専門家が行う一方、事業計画、人的資源、業務システムなどの検証は、買い手企業自らが行うパターンもあります。
④最終契約書の締結
デュー・デリジェンスが終わり、問題がないと判断されたら、最終契約書の締結です。
ここには、相手企業に提示した内容に嘘がないことをお互いに表明する旨や、株式譲渡実行の前提条件などが記載されます。
⑤クロージング
クロージングは、お互いに合意した内容で取引が実行されることです。
株式譲渡の場合は、売り手企業が株主名簿の名義書換を行い、買い手企業が売り手企業の株式を保有する株主に対価を支払うことが、それにあたります。
ただ売り手企業に関しては、もし株券発行会社であるなら、次の手続きも一緒に行わないといけません。
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3.株式譲渡における株価の算定方法
最後に、株式譲渡における株価の算定方法についてご紹介します。株価評価は未上場企業と上場企業で異なるため、分けて見ていくことにしましょう。
①未上場企業の場合
第1章でお伝えしたように、未上場企業の場合は取引相場がないため、自社の財務数値を使って株価を計算することになります。
以下に、特に実務で用いられやすい3つの方法の概要をまとめましたので、ご覧ください。
株価算定方法 | 概要 |
---|---|
純資産法 | 評価対象企業の資産と負債の差額から算定する方法。メリットは、手続きが比較的簡単なのこと。ただ、企業の収益性などが反映されないデメリットもある |
DCF法 | 評価対象企業が今後獲得するであろうフリーキャッシュフロー(FCF)を元に算定する方法。将来性が重要となるM&Aにマッチした方法のため、比較的用いられる。一方で手順が複雑、恣意性が介入しやすいといった面がある |
競合会社比較法 | 評価対象企業によく似た上場企業(類似企業)の財務数値を参考に算定する方法。客観性の高い算定結果が得られるのが特徴。しかし、そもそも類似企業が見つかりにくい、選定時に主観が入りやすいといった弱点がある |
見てわかるように、株価の計算方法は、いずれも良し悪しがあります。株価算定ではどれかひとつの計算方法を用いるのではなく、複数の方法を用いるのには、こうした理由もあるのです。
ただ、M&Aの取引では決定事項が多岐にわたるため、株価計算になかなか時間がかけられないのが実状でしょう。
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②上場企業の場合
上場企業の場合は、株式市場の株価を参考にするのが一般的です。ある一定の期間内の終値を集計し、その平均値をもって取引価格とすることもあります。
ただ、期間内に急激な株価変動があった場合にその数字を含めるのか、などは十分に検討しなければいけません。
まとめ
- 株価算定によるM&Aは、株式売買による経営権の移動。同じ株式譲渡でも、未上場企業と上場企業では売買の方法が異なる。
- 株式譲渡によるM&Aを実施する際は、譲渡所得には20%の税金がかかること、株式評価の際に恣意性が介入しやすいことなどに注意する。
- 株式譲渡における株価算定では、未上場企業の場合は評価対象企業の財務数値を元に、上場企業の場合は株式市場の株価を元に行う。
おわりに
株式譲渡におけるM&Aは、他の手法よりは比較的迅速にできるとされています。
しかし、それでも手続きが複雑なことに変わりはないので、専門家に頼るのが無難でしょう。
また記事内でも説明した通り、株式譲渡におけるM&Aでは、適切な株価計算が求められます。こちらも専門家に相談するのが一般的ですが、KnowHowsでは、「株価算定ツール」をご用意しています。
こちらを利用すれば、税理士監修のもと、必要な項目を入力するだけで本格的な株価算定が可能です。
計算は無料ですので、本記事とあわせてぜひお役立てください。
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