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この記事でわかること

  • 株式譲渡のメリット・デメリット、事業譲渡を含むほかのM&A手法との違い
  • 株式譲渡の大まかな流れ
  • 株式譲渡の税務
  • 株式譲渡をスムーズに行うためのポイント2つ
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はじめに

株式譲渡とは、株主が別の方に保有している株式を渡し、その相手から渡した株式の代わりに同等の金銭を受け取る手続きのことです。

2018年版「中小企業白書」によれば、事業譲渡についで2番目に多いM&Aの実施形態となっています(事業譲渡は41.0%、株式譲渡は40.8%)。

この記事では、株式譲渡を理解するうえで知っておきたいこととして、メリット・デメリットや手続きの大まかな流れ、手続きに伴う税務について解説しています。

株式譲渡をスムーズに行うためのポイントも紹介しているので、実務の参考資料としてください。

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1.株式譲渡とは

株式譲渡とは、株式の売買手続きを言います。株主が保有している100株を別の方に譲り渡したら、譲り受けた相手は100株分の対価をその株主に支払う、というのが基本の流れです。

株式譲渡は、とりわけ中小企業のM&Aで用いられます。このとき、売却される株式を発行している企業を売り手企業、株式を購入する企業を買い手企業と言います。

会社法では、発行済株式数に対して、株主がどの程度保有しているのか、一定の持株比率ごとに株主が経営に関与できる度合いが決められています。

持株比率が33.4%以上(1/3超)なら単独で定款の変更や増資の承認などが含まれる特別決議を拒否でき、51%以上なら経営権の取得が可能です。

関連記事:株主の持株比率と議決権の関係性は?株式の権利を網羅しながら解説

そのため、M&Aにおける株式譲渡では、買い手企業が売り手企業の株式を51%以上取得する形で進められます。

たとえば、売り手企業A社と買い手企業B社がいます。A社が10,000株発行していて、B社はA社の株式をひとつも持っていなかったとしましょう。

この状況でM&Aを実行するときは、B社がA社の既存株主から5,100株以上をもらい、同等の対価をA社の既存株主に支払います。

なお、株式譲渡によってM&Aが実施されたあとの買い手企業のことを親会社、売り手企業のことを子会社と呼びます。

一方、株式譲渡は、M&Aのような対第三者以外に、配偶者や子ども、孫などの親族を相手に行われることもあります。

また、親族への事業承継後に既存株主とのトラブルを未然に防ぐために、事前に既存株主が保有している株式を回収するときに用いられるケースもあり、ひと言に株式譲渡と言ってもその目的はさまざまです。

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2.株式譲渡のメリット・デメリット

次に株式譲渡のメリット・デメリットを、事業譲渡やほかのM&Aスキームと比較しながらご紹介します。

①メリット

・売り手のメリット

売り手側の最も大きなメリットのひとつは、事業譲渡と比較して、売却時に課される税金が低くおさえられることです。

株式譲渡時に得た所得(譲渡所得)にかかる譲渡所得課税の税率は、一律20%(所得税15%+5%)です。

一方で、事業所得で得た所得は、ほかの所得と合算され、法人税や法人事業税、消費税の対象になります。所得がどのくらいによるかで変わってきますが、少なくとも約30%以上は課せられます。

また、株式譲渡は事業譲渡と異なり、会社独自の知的資産や人的資産などを、買い手企業にそのまま引き継がせることができます。従業員の雇用の維持が気がかりなときに向いている手法でもあるでしょう。

これ以外に、事業譲渡を含むほかのM&Aのスキームと異なり、手続きが比較的早くできるのもメリットです。

・買い手のメリット

買い手側のメリットには、売り手企業の知的資産や人的資産など、事業拡大に必要なリソースを一度に手に入れられることがあげられます。

もし売り手企業が、買い手企業が参与してなかった市場でのシェアを獲得していたなら、一気に事業拡大につながり売上向上の可能性も高まるでしょう。

②デメリット

・売り手のデメリット

売り手側のデメリットとして真っ先にあげられるのは、簿外債務といった自社が知らずしらずのうちに抱えていたリスクによって、買い手企業との関係性が悪くなるケースがあることです。

デューデリジェンスの時点で発覚すれば、売却価額の値下げ交渉が行われたり、そもそも取引を断られたりする可能性が出てくるでしょう。M&A後に判明すれば、買い手企業から話が違うと損害賠償責任を問われることもなくはありません。

・買い手のデメリット

買い手企業側のデメリットは、売り手企業のリスクも一緒に引き継いでしまうことです。株式譲渡をM&Aのスキームとして選択したなら、デューデリジェンスはより慎重に実施しなければなりません。

しかし専門家の拘束時間や負担が増えれば、依頼料も高くなる可能性が考えられます。

また、売り手企業の知的資産や人的資産を獲得できるとはいえ、すぐに成果につながるかどうかは買い手企業の運営次第です。

特に売り手企業に雇用されていた従業員は、新たな親会社が現れたことに対して不安を感じています。

従業員のモチベーションをいかに落とさず、貢献してもらえるようにするか慎重になる必要があり、そこが欠けてしまうと、想定していたシナジーがなかなか得られない事態につながりかねません。

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3.株式譲渡の大まかな流れ

ここでは、未上場企業かつ非公開会社(譲渡制限株式のみを発行している企業)が、株式譲渡を行う場合の流れをご紹介します。

株式譲渡の大まかな流れ
売り手と買い手の間で基本合意書を締結する
売り手が売り手企業に譲渡承認請求を行う
売り手と買い手の間で株式譲渡契約書を締結する
買い手が売り手に対価を支払う
売り手と買い手が売り手企業に株主名簿の名義書換請求を行う

関連記事:株式譲渡の手続きを解説!譲渡制限株式の譲渡手順や3つの注意点

①売り手と買い手の間で基本合意書を締結する

株式譲渡では、まず売り手と買い手の間で基本合意書を締結することになります。

基本合意書とは、お互いの条件をすり合わせ、確認するための書類です。主に、次のような内容が記載されます。

  1. 契約の背景(契約に至った経緯)
  2. 対象株式
  3. 譲渡価格(レンジ表記が一般的)
  4. 善管注意義務(売り手としての責任、および売り手企業としての責任を負う旨)
  5. 独占交渉権(基本合意書の有効期間中は他社と交渉できない旨)

関連記事:【無料】株式譲渡の基本合意書のひな形と契約時の注意点│弁護士が解説

なお、M&Aの場合は、基本合意の前に売り手企業と買い手企業の経営陣が話し合いを行い、買い手企業側が意向表明書(株式の譲渡価格やスケジュールなどを記載した書類)を提示するのが一般的です。

また締結が行われたら、買い手企業は、譲渡価格の妥当性や簿外債務の有無、想定されるシナジーの大きさなどを的確に判断するために、デューデリジェンスを実施します。

②売り手が売り手企業に譲渡承認請求を行う

非公開会社の株式を譲渡するためには、譲渡を希望する株主が、発行企業に対して譲渡を認めてもらうように請求しなければいけません。これを譲渡承認請求と言います。

譲渡承認請求が行われたら、発行企業は株主総会の特別決議(取締役会設置会社の場合は取締役会)を開催し、請求を認めるか認めないかの判断を行います。

③売り手と買い手の間で株式譲渡契約書を締結する

譲渡承認請求が認められたら、売り手と買い手との間で株式譲渡契約書を締結します。以下、主な記載内容です。

  1. 株式譲渡に関する基本事項(譲渡日や株式の種類、数)
  2. 譲渡価格(双方が合意した価格)
  3. 表明保証(取引時に表明した内容を保証する旨)
  4. 善管注意義務
  5. 譲渡日以降の義務
  6. 損害賠償

関連記事:【ひな形つき】株式譲渡契約書の基礎知識まとめ!注意点や記載内容を解説

④買い手が売り手に対価を支払う

買い手が売り手に、株式譲渡契約書に基づき対価を支払います。

⑤売り手と買い手が売り手企業に株主名簿の名義書換請求を行う

株式の保有者が変わったら、株主名簿の名義書換が必要です。売り手・買い手がともに、発行企業に書換の請求を行います。必ずしも④のあとでなくても問題ありません。

なお、株券発行会社の場合は、名義の書換とあわせて株券の引き渡します。株券発行会社であって株券が発行されていない場合は発行が必要です。

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4.株式譲渡の税務 時価と異なる譲渡価格に注意

前項で触れたように、株式譲渡では、実施時に発生した譲渡所得に対して20%の税金が課されます。しかし、それ以外にも売り手が支払わなければいけない税金が発生するケースがあるので注意が必要です。

また、買い手が支払わなければいけないケースもあります。それぞれ、ご紹介します。

①売り手の場合

未上場企業の場合、上場企業のように客観的な株式の時価がありません。株式譲渡時もいくらにしなければならないといった明確な決まりはなく、双方が納得する譲渡価格で行うことが可能です。

しかし、譲渡価格が、時価よりも明らかに低い価格で株式を売却した場合、その差額に対して寄付金課税が生じる可能性があります。

②買い手の場合

買い手の場合、時価より明らかに低い価格で株式譲り受けた場合、受贈益課税が生じる可能性があります。反対に、明らかに高い価格で譲り受けたときは、寄付金課税が生じることがあるので注意が必要です。

以上をまとめた図を掲載します。

売り手の場合買い手の場合
譲渡価格が時価よりも明らかに低いとき寄付金課税が発生する可能性あり受贈益課税が発生する可能性あり
譲渡価格が時価よりも明らかに高いとき寄付金課税が発生する可能性あり
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5.株式譲渡をスムーズに行うためのポイント2つ

最後に、株式譲渡をスムーズに行うためのポイントを2つご紹介します。

①妥当性のある株価算定を行う

株式譲渡では、売り手としては株式を高く売却したい、買い手としては株式を安く購入したいという思惑があります。

一方で、前項で見てきたように、時価から著しく離れた譲渡価格で手続きをしてしまうと、税金が課される可能性があります。

そのため、株式譲渡では、基本合意書を締結するタイミングで、いかに妥当性のある株価算定をできるかが鍵となります。

このとき用いるのが、既存の株価算定方法です。

株価算定方法には、市場価格を元に算定するマーケットアプローチ、将来の収益性から算定するインカム・アプローチ、貸借対照表の数字を使って算定するコスト・アプローチのがあります。

どちらの方法にも良し悪しがあるため、株式譲渡の目的や発行企業の特徴などと照らし合わせつつ、併用しながら用いるのが一般的です。

また、相続税や贈与税の計算時に利用する、国税庁の財産評価基本通達の計算式でを使うときもあります。

なお、KnowHowsには、DCF法・純資産法・競合会社比較法の3つを用いて株価計算が自動でできる「株価算定ツール」がありますので、よろしければご活用ください。

②専門家に相談する

株式譲渡は、事業譲渡や株式交換などのM&Aスキームよりも、比較的手続きが簡単なのがメリットですが、ある程度の専門知識は必要です。

困ったときは自己判断せず、専門家に相談することをおすすめします。

・公認会計士や税理士

公認会計士は会計監査を担当する専門家で、税理士は税務に関して強みを持つ専門家となります。いずれも株価算定のプロフェッショナルです。

株価算定では、3年分の財務諸表や事業計画書のほか、地価情報や金利情報がわかるものが必要になります。依頼前にこちらで可能なかぎり用意しておくとスムーズです。

費用相場は、事務所や具体的な依頼内容によってまちまちですが、20万円以上はかかります。

関連記事:株価算定を公認会計士へ依頼する際のポイント!流れや事前準備まとめ

関連記事:株価算定を依頼する税理士の選び方は?3つのポイントから解説!

関連記事:株価算定の料金相場をケース別に紹介!株価算定が必要となる場面も解説

・弁護士

弁護士は法的な手続きに関してアドバイスやサポートをしてくれる専門家です。株式譲渡を進めるときに交わす各契約書のリーガルチェックや、M&A時のデューデリジェンスの支援などを依頼できます。

費用相場は契約書関連の場合は数万円程度、法務デューデリジェンスの場合は50万円以上です。こちらも事務所や実際にお願いする内容によって異なるので、依頼前に確認されることをおすすめします。

・KnowHows

KnowHowsには、経営上の悩みを掲載できる無料掲示板「みんなの事業相談」があります。こちらに投稿すると、およそ1週間程度で専門家から回答をもらうことが可能です。

もしお急ぎの場合や個別に相談したい場合は、「電話相談」サービスも用意しているので、そちらもあわせてご検討ください。

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まとめ

  • 株式譲渡とは、株主が別の方に保有している株式を渡し、その相手から渡した株式の代わりに同等の金銭を受け取る手続きのこと。売り手には税金が安くなる、買い手には事業拡大に必要なリソースが一度に手に入るといったメリットがある
  • 株式譲渡は、基本合意書の締結から株主名簿の書換までの一連の流れを指す
  • 株式譲渡の最も大きなポイントは妥当な株価算定。専門の知識が必要なのでツールを利用するか専門家に相談しながら進めよう
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おわりに

株式譲渡で用いられる株価算定方法は、M&Aの企業価値算定においても用いられます。理解を深めておくと、M&Aがどういったものなのかも見えてくるでしょう。

本記事で紹介した株価算定方法は、別の記事で詳しく紹介しているので、よければご参考ください。

関連記事:【簡単比較!】株価算定の方法とそれぞれの特徴を解説

関連記事:株価の評価方法とは?上場・非上場企業それぞれの手法を解説

また、KnowHowsでは、DCF法のほか複数の計算方式で株価を算定できる株価算定ツールをご用意しています。

税理士監修のもと、必要な項目を入力するだけで本格的な株価算定が可能です。計算は無料でご利用できますので、本記事とあわせてぜひお役立てください。

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