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0.はじめに

私は、社会保険労務士という資格を活かし、専門的な視点で企業の人事労務職を遂行して参りました。

そのような視点でみてみますと、実は職務のあらゆるところに法的リスクが存在していることが分かります。職務を遂行するにあたり「リスクをどう評価し対処するか?」は、適切な企業経営の為に重要です。

今回はそのようなリスクのひとつとして、何気なく交わされている身元保証契約について考えてみたいと思います。

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1.身元保証契約とは

労働者が企業に採用される際、身元保証契約の締結を求められることがあります。

一般的には、雇い入れが決まった時点で、採用時の提出書類のひとつとして渡される身元保証書へ署名押印することで締結されます。

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2.身元保証契約の本来的意義

身元保証契約の第一義的な目的は、労働者が使用者(雇用する企業)に損害を与えた場合の金銭賠償について、身元保証人の資力(財力)を弁済の担保とする…というものです。

使用者としては、万が一労働者が義務(誠実義務など)を果たさず損害を与えた場合に備えて、その損害を補う手段として労働者の身元保証人と契約を交わすものです。

しかし実際はどうでしょうか。

使用者が身元保証人に対して賠償請求する場合、裁判では使用者側の過失や、身元保証人に対し契約に伴うリスク説明を行っていたかなど様々な事情が考慮され、損害賠償の範囲は大きく制限されます。

金銭賠償契約としての実効性は低い、と言わざるを得ません。

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3.身元保証契約の活用

では、身元保証契約を交わす意義は薄いのでしょうか。

答えはリスク管理に対する価値観によるので一概には言えませんが、私見としては、身元保証という契約関係を通じて得られる付帯要素を今日的な意義として注目すべきと考えます。

身元保証人は親族など労働者とつながりの深い人物であることが多いため、使用者としては、労働者との間で何らかのトラブルが発生し第三者の協力が必要となった際、身元保証人の協力を得てトラブル解決に向けたアクションをとりやすくなります。

これは、身元保証契約を通じて得られるものと言えます。

近時では、メンタル不調により直接対応することが困難となった労働者との窓口・調整役になってもらう、といった形で活用範囲が広がってきています。

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4.身元保証契約に関する注意点

身元保証契約は活用できることが分かりましたが、実際に契約を交わす上で注意しなければならない点があります。それは、身元保証契約は慣習化されている点です。

使用者・身元保証人ともに、身元保証契約の意義やリスクを考えずに身元保証書を交わすことが多く、実際にトラブルが生じた際に身元保証人が対応してくれないことがあります。

特にトラブルを抱えた労働者との窓口・調整役などは厳密には身元保証契約の内容ではなく、法的根拠も曖昧なものですので、より注意深く対応する必要があります。

使用者としては、採用手続上、身元保証契約の位置づけをあらためて見直し、対策を検討する必要があるといえるでしょう。

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この記事を書いた人

今坂 啓

上場企業社員(経営・財務戦略系以外)

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社会保険労務士有資格者として、人事労務の第一線にて実務を担っております。

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