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企業価値を高める「人材育成」要点まとめ。成功までの4ステップとは
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この記事でわかること
- 「企業価値」を高める要素のひとつである人材の育成。戦略の見直しや効率化も、それを行う従業員の育成も同時に行わなければ、限定的な効果しか得られません。
- 人材育成でつまづく企業の多くは、「①求める人材を明確化できていない」、「②リーダー育成のタイミングが遅い」、「③長期目線での育成環境が整っていない」、「④外部人材を活用できていない」といった問題を抱えがちです。
- 効果的な人材育成のために、「①目的を明確化する」「②スキルマップを作成する」「③育成手段を決定する」「④プランを実行し、効果を検証する」という4ステップをおさえましょう。
はじめに
資産や負債、ブランドなど企業が持つ価値を金額になおした企業価値。
この価値が高いほど、市場から優良とみなされる傾向にあり、融資の金額や金利、M&A(買収)の金額など、さまざまな状況に影響をおよぼします。
昨今の後継者不足で一般化しつつある、M&Aによる事業承継においても、企業価値は重要な役割を持っていると言えるでしょう。
企業価値を高めていく際、重要になるのは「人材」です。
売り上げも、マーケティング戦略も、開発技術や生産体制も、それらの仕事を行う「人」あってのもの。小手先の施策で終わらず、事業の基盤となる「人材」の育成が大切です。
この記事では、企業価値を向上させるための人材育成について、解説をしていきます。
また、KnowHowsの「みんなで事業相談」では、専門家に事業の悩みを無料で相談することが可能です。
人材育成も含め、お悩みの際はぜひご活用ください。
1.「人材が不足している」企業に共通する4つの問題
「ほしい人材が集まらない…」
「定着してくれる人材が少ない…」
そのような悩みを抱える経営者はきっと多いかと思います。
人材確保に多額のリソースを割いたにも関わらず、思ったような効果が得られなかったという企業も多いかもしれません。
販売同様、人材の確保・育成にも、しっかりとした戦略が必要。ここでは人材育成に失敗する企業にありがちなポイントを取り上げ、その対策を解説します。
①求める人材を明確化できていない
まずよくあるパターンとして、求める人材像を明確化できていないというパターンが挙げられます。
「ITに強い人材」「リーダーとなれる人」「次世代の中核を担う若手」……といった、漠然としたイメージだけでは、求める人材像が広くなりすぎてしまい、ぼんやりとした採用計画・育成計画しか立てることができません。
まずは自社の状況を分析し、足りない部分はなんなのか、明確にしていく必要があります。
・競合他社と比べた自社の強み・弱みはどこにあるのか?
・今後より注力していく事業はなんなのか?
・収益効率のボトルネックになっている部分はどこなのか?
といった部分を吟味し、そこから逆算して必要な人材像を絞っていきましょう。
また、もうひとつよくあるパターンとして「欲張りすぎる」というものもあります。現在の企業に必要なスキルをすべて盛り込んだ人材像をイメージしてしまい、結果として、非現実な高いスキルを人材に求めてしまうパターンです。
一人にすべてのスキルを求めるのではなく、部署ごと、ポジションごとに求めるスキルを配分していき、立場にあった採用・教育体制を整理することが大切です。
②リーダー育成のタイミングが遅い
国内の企業では社員にさまざまな仕事を担当させて、全体的に能力の高いジェネラリストを育成する方針が多くあります。30代までは社内の仕事を担当させて、40代からマネジメント教育するのが一般的です。
こうした流れで教育したときの問題は、実務を通じたリーダー人材の育成が遅くなり、経営層にふさわしい人材が少なくなることです。以下の統計を見ると10年,20年先の経営人材はあまり見通しが立っていない状況が分かります。
出所:経済産業省「企業価値向上に向けた経営リーダー人材の戦略的育成についてのガイドライン」
海外では早くて20代からマネジメント経験を積ませるのに対し、日本では経営人材の育成が遅い現状があります。経営人材の育成が部長クラスに集中しており、教育自体が遅い傾向にあるのです。
出所:経済産業省「企業価値向上に向けた経営リーダー人材の戦略的育成についてのガイドライン」
ジェネラリストの育成にこだわると、大多数がその水準を満たせないために経営人材が不足したり、マネジメントに意欲的な若手を逃すことにつながります。
もちろん、すべての若手に対してそのような育成をする必要はありませんが、年功序列にとらわれない組織マネジメントの場を用意していくことが、多くの企業が抱えている管理職層の枯渇を防ぐことに繋がると言えるでしょう。
実際に、最近では若手社員を子会社の取締役として出向させたり、社内ベンチャーという形で若手向けのプロジェクトの場を用意したり、若手社員の独立に対し、子会社化という形で出資するなど、様々な形でマネジメント経験を積ませるケースが増えてきています。
③長期目線での育成環境が整っていない
管理職が部下の育成に意欲的でない、というケースもよく見られるもののひとつです。
多くの場合、問題の根底にあるのは評価制度。
部署単位での売り上げといった短期的な指標のみが評価の指標となっている場合、管理職が人材育成に割くリソースはどうしても後回しになります。育成の成否は、管理職の評価に影響を及ぼさないためです。
結果として、部下には今できる仕事を担当させることが多くなり、いわゆる「与えられた仕事だけをこなす」という環境ができあがってしまいます。
人材本人だけでなく、その管理者にも「人材育成による評価」を加えることで、モチベーションを持たせることが大切です。
また同時に、「失敗によるコストをある程度目標に組み込んでおく」、「挑戦できるラインをきちんと線引きしておく」といった体制により、挑戦のリスクを下げることも有効な手法と言えます。
さまざまな方向から「どんどん挑戦できる環境」をデザインすることで、長期的に企業価値を高めることのできる人材を育成しましょう。
④外部人材を活用できていない
社歴の長い企業では特に、仕事の内容や成果ではなく、その職場で何年働いたのか=年功序列の考え方が根強く残っています。
こうした企業は「マネジメントの地位につく人間は、自社で教育した人材でなければいけない」という価値観にとらわれ、優秀な外部人材の採用に消極的な傾向にあります。
経済産業省によると、外部人材を獲得するための待遇を用意できず、人材の獲得が難しい現状が報告されています。そもそも外部人材を採用したことがない場合も多くみられます。
出所:経済産業省「企業価値向上に向けた経営リーダー人材の戦略的育成についてのガイドライン」
しかし、大幅な事業転換や新規事業の実施などの場においては、外部から優秀な人材を取り入れることで、スピーディな動きが可能となります。
さらに、外部からの知識を吸収し、自社の制度に反映していくことで、企業価値を高める結果にもつながるでしょう。
外部人材の採用にはコスト面や定着率といった問題もありますが、現状を見据えたうえで上手に活用していくことで、より企業価値を高める結果につながります。
2.企業価値を高めるための人材育成4ステップ
前章では、人材の採用・育成において抱えがちな問題について解説してきました。
この章では、企業価値を高める人材を獲得するプランについて、
①目的を明確化する
②スキルマップを作成する
③育成手段を決定する
④プランを実行し、効果を検証する
の4つのステップに分けて、順番に解説していきます。
①目的を明確化する
まずは、「なぜ人材が必要なのか?」を明確にしましょう。
「企業価値を高める」という目標が、自社によって何を指すのかをしっかりと分析・検討し、目標のどの部分を人材によって解決したいのかを洗い出していきます。
たとえば、「財務状況を見直すことで経営状態を改善したい」というような場合、人材育成による解決策の比率はどちらかといえば低くなるかと思います。
一方で「事業転換をすることで収益を増やしたい」「業務効率化によって収益性を向上させたい」といった場合には人材に関する比重が多くなるでしょう。
そのうえでさらに、「Webでの販売力を強化したい」「生産効率をもっと上げたい」「仕入れのコストを減らしたい」といった目的を細分化していき、それぞれの目標について、どんな部署でどのような人材が必要となるのか、明確にしていきましょう。
②スキルマップを作成する
スキルマップとは、人材に求められる能力を習得させるまでの計画表です。人材育成に関する大まかな目標設定とも言えるでしょう。
スキルマップは、人材に求める能力別に、たとえば以下のように記載していきます。
<例:営業のスキルマップ>
期間に合わせて育成内容を決めるため、体系的に人材を育成しやすくなるのがスキルマップのメリット。育成課題をあらかじめ共有しておくことで、人事評価項目としても機能します。
人事部だけでなく、対応する部署を巻き込んでスキルの洗い出しを行い、求める人材像に合わせたスキルセットと、その習得までのスケジュールを具体的に決めていくようにしてください。スキルの内容は具体的であったほうが、指針として意識しやすくなります。
③育成手段を決定する
育成課題をスキルマップにより把握したら、実際に社員を育成するために手法を決めましょう。企業が活用できる主な教育手法には、たとえば下記のようなものがあります。
- OJT:現場で働きながら知識やスキルを身につける実践的な育成方法
- 自己啓発:自由時間に社員が独学するよう促すことでレベルアップを期待する
- 研修:多人数でのロールプレイを通じて実践を想定した教育ができる
- eラーニング:時間を問わず社員に教育できるため育成効率が優れている
OJTは多くの企業で一般的に行われている教育手段ですが、これまで説明してきたとおり、評価制度や教育者の性格によって、教育効果には大きなバラつきがあります。
社員どうしの教育にすべてを託すのではなく、予定している教育予算に応じて、さまざまな研修やeラーニングといった方針も検討していくのがベターです。
ベンチャー企業などでは、社員が自分の意思で参加するセミナーの費用や、購入した書籍の費用を福利厚生の一環として会社持ちにする制度も比較的多く採用されています。
成長意欲の高い社員がいる場合は検討してみるのもよいでしょう。
④プランを実行し、効果を検証する
育成の目標と手段が決定したら、スケジュールに合わせて人材を育成しましょう。
その際、プランの効果を適宜きちんと検証していくことも大切です。育成対象となる社員ひとりひとりを対象とし、プランによる効果が出ているかどうか、出ていない社員がいる場合はよりフィットする方法はないか、トライ・アンド・エラーを繰り返してください。
また、人材育成の評価基準を定めておくことも重要。
成長を可視化し、評価することにより、社員が成長に対して前向きになるような環境づくりを整えましょう。
また前章でも解説したとおり、OJTの場において、管理職が育成に割くリソースは低くなりがちです。人材育成への貢献を評価対象に組み入れることにより、教育へのモチベーションを維持するような工夫をしておくと良いかもしれません。
まとめ
グローバル化による海外資本の流入にともない、優秀な人材の確保は今後もハードルが高くなってゆくでしょう。
そんな中だからこそ、企業価値を高める人材の育成がますます重要となってきます。
企業における現状の課題点や将来を考慮し、長い目で見た人材育成を行っていきましょう。
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