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この記事でわかること

・企業価値は「株式時価総額+有利子負債等」という数式で表され、銀行からの借り入れといった負債も価値の一部と見なされます。

「企業は金利の支払いという形で貸し手である債権者に利益を分配している」と考えた時、負債額は「債権者がその企業から得られる収益を期待して提供している金額」とも見なせるためです。

・負債を活用することで収益の効率を高める財務レバレッジ効果や、利息の支払いによる節税効果など、負債を上手に使うことで、企業価値を向上させることができます。

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はじめに

負債と聞くと、「借金」「返済しなければならないもの」といったマイナスのイメージを持つことが多いのではないでしょうか。

しかし、M&A(買収)における企業価値評価(バリュエーション)において、負債は企業価値の一部とみなされます。

この記事では、その理由と、企業価値と負債の関係性について解説をしていきます。

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1.負債と企業価値の関係性

上記の図のとおり、「企業価値」は以下の二通りの方法で表すことができます。

・企業価値=有利子負債等+株式時価総額

・企業価値=事業価値+非事業用資産

こうして見る通り、企業価値には株式の時価総額だけでなく、金融機関などからの有利子負債も含まれることがわかります。なぜでしょうか?

①有利子負債≒「債権者から見た企業価値」

企業は金融機関や株主から資本を調達して事業活動を行い、そこで得た最終的な利益(当期純利益)から、利息配当金といった形で利益の還元を行います。

逆に株主や金融機関からすれば「その企業からリターンが得られると見越しているからこそ、企業に資金を提供している」とも言えるでしょう。

つまり企業価値とは、金融機関などの債権者、および株主のそれぞれが、その企業からの収益を期待して提供している資金の総額であると見ることができます

そのため、負債は株式時価総額と同様、企業価値の一部であると考えられるのです。

②負債から見た「企業価値」と「事業価値(EV)」の関係

事業価値(EV)とは、ある企業の事業活動の価値を示すものです。

企業価値と混同されやすいのですが、計算式に含まれる負債に着目すると両者が異なるものだと理解できます。

実際に見てみましょう。

事業価値=株式時価総額+純有利子負債(ネット・デット)

純有利子負債とは、有利子負債から非事業用の資産などを差し引いたもの。

つまりこの数式は、

事業価値=株式時価総額+有利子負債等ー非事業用資産

であることを示しており、図で示すと下記のようになります。

このように、事業価値は企業価値の一部であることがわかるでしょう。

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2.有利子負債が企業価値を高める?「財務の最適化」とは

このように、有利子負債は株式の時価総額と同く、企業価値の一部とみなされることがわかりました。

「それでも、借金はないほうが良いのでは?」

そう疑問に思った方もいるかもしれません。

しかし、有利子負債は上手に活用すれば、利益をより大きくし、企業価値を高めることに繋がります。

この章では有利子負債を利用することで企業価値を高める「財務の最適化」というプロセスについて、下図の2つの効果を紹介していきます。

①財務レバレッジ効果

財務レバレッジ効果とは、金融機関などからの借り入れをてこ(レバレッジ)にして収益を増やすことで、企業の自己資本に対する利益率(自己資本利益率、ROE)が高められるという効果を言います。

この効果が見込まれるのは、企業の総資産に対する利益の割合(総資産利益率、ROA)が負債の金利と比べて高いと見込まれる場合。

つまり大雑把に言えば、

「金利以上に儲かると分かっている場合、借り入れをしてより大きな資金を事業に投下した方が、最終的に得られる利益を大きくできる」

ということを意味します。

たとえば、自己資本が70億円のA社と、50億円のB社を考えてみましょう。両企業とも、総資産に対する営業利益の割合(ROA)は10%とします。

ROAが同じならば、元出となる資産の多いA社のほうが、当然より多くの利益を挙げられるはず。

しかし、ここでB社が銀行から50億円を借り入れた場合はどうなるでしょうか。

借入金の利息を4%、法人税率を40%として、A社とB社の利益、およびROEを比較してみましょう。

A社B社B社(借入なし)
①純資産(自己資本)705050
②借入(負債)0500
③総資産(①+②)7010050
④自己資本比率(①÷③)100%50%100%
⑤ROA10%10%10%
⑥営業利益(③×⑤)7105
⑦支払利息(②×4%)020
⑧経常利益(⑥-⑦)785
⑨税引後当期純利益{⑦−(⑦×40%)}4.24.83
⑩ROE(⑨÷①)6%9.6%6%

(単位:億円)

表の通り、B社が50億円を借り入れたケースが、最終的な利益が最も多くなります。

自己資本に対する利益の割合であるROEにおいても、B社が借り入れをした場合が最も高くなっていることがわかるでしょう。

このように、負債を利用することにより、少ない元手で効率よく利益を得られることが財務レバレッジ効果です。

ただし、財務レバレッジ効果にはデメリットもあります。景気の変動などで事業の収益力が低下し、ROAが金利以下となった場合、逆に利息が利益を圧迫してしまう点です。

A社とB社、双方のROAが共に3%にまで落ち込んだ場合を考えてみましょう。

A社B社B社(借入なし)
①純資産(自己資本)705050
②借入(負債)0500
③総資産(①+②)7010050
④自己資本比率(①÷③)100%50%100%
⑤ROA3%3%3%
⑥営業利益(③×⑤)2.131.5
⑦支払利息(②×4%)020
⑧経常利益(⑥-⑦)2.111.5
⑨税引後当期純利益{⑧−(⑧×40%)}1.260.60.9
⑩ROE(⑨÷①)1.8%1.2%1.8%

(単位:億円)

今度は、利益・ROEともにB社が借り入れをしたケースが最も低くなることがわかります。投下する資産を増やすことで増える収益よりも、金利のほうが高くなるからです。

財務レバレッジ効果は収益の増減幅を大きくするものである点に気を付けましょう。

②負債の節税効果

負債を増やすもうひとつの効果は、節税効果です。

債権者へと支払う利息は、会計上の損金として営業利益から差し引かれます。

つまり、差し引かれた利息分だけ課税所得が減少するという見方ができ、結果的に支払う税金が少なくて済むことになります。これが節税効果です。

今度はC社を事例にとり、総資本額が同じで、「借り入れをしている場合」「借り入れをしていなかった場合」のケースを比較してみましょう。

税率は40%と仮定します。

C社(借入なし)C社(借入あり)
①純資産(自己資本)10050
②借入(負債)050
③総資産(①+②)100100
④自己資本比率(①÷③)100%50%
⑤ROA10%10%
⑥営業利益1010
⑦支払利息(②×4%)02
⑧経常利益(⑥-⑦)108
⑨税金(⑧×40%)43.2
⑩税引後当期純利益(⑧−⑨)64.8
⑪ROE(⑩÷①)6%9.6%

(単位:億円)

両者を比較したとき、総資産と営業利益が共に同額であるにも関わらず、支払う税金は借り入れを行った場合の方が、4-3.2₌0.8億円少ないことがわかります。

利息分の税金である2×0.4₌0.8億円を支払わなくて良くなったためです。

一方で、⑩の税引き後当期純利益を見ると、借り入れをしなかった場合が6億円、借り入れをした場合は4.8億円となり、一見すると利益が少なくなったように見えます。

しかし利益ではなく、「債権者(金融機関など)や株主に利益を還元した金額」という立場に立ってみると、どうでしょうか。比較してみましょう。

なお、税引後当期純利益はすべて株主へ還元されるものと仮定します。

C社(借入なし)C社(借入あり)
①支払利息(=債権者への還元額)02
②税引後当期純利益(=株主への還元額)64.8
③還元額の合計66.8

(単位:億円)

このように、利益から資金提供者への還元額、という見方をしたとき、借り入れをした場合の方が、トータルで見てより多い金額を還元していることになります。

また両者の差額は6.8-6₌0.8億円となっており、節税した金額と同じであることがわかるでしょう。

このように、節税効果は税金の支払を債権者への還元に移し替え、結果としてより多くの利益を資金提供者に還元する方法、とみなすこともできます。

それはつまり、資金提供者から見てより多くの収益が期待できるということでもあり、企業価値の向上に繋がるという見方ができるでしょう。

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まとめ

有利子負債は、企業価値の一部とみなされます。

また「財務の最適化」による諸効果を活用することで、収益を効率よく増やし、また株主や債権者へ還元する利益を多くすることができます。

リスクについても十分に把握しつつ、上手に利用していきましょう。

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