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この記事でわかること

  • 「フリーキャッシュフロー(FCF)」「会社の営業キャッシュフローから、投資のキャッシュフローを除いたもの」とされ、企業が自由に再配分が可能なキャッシュフローのことをいいます。
  • フリーキャッシュフローは、企業が生み出すキャッシュ(資金)を図る指標であると同時に、株主などに還元されうるキャッシュフローでもあるため、企業価値の評価手法のひとつ「DCF法」では重要な指標のひとつになります。
  • フリーキャッシュフローにはいくつかの考え方がありますが、企業価値評価(バリュエーション)においては、一般的な意味でのFCFではなく、「FCFF(Free Cash Flow for the Firm:株主と債権者に帰属するキャッシュフロー)」と呼ばれる指標が使われます。
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はじめに

「フリーキャッシュフロー」とは、事業が生み出したキャッシュフロー(営業キャッシュフロー)から投資キャッシュフローを除いたものを指します。

キャッシュを生む力の指標とも言えるため、企業価値評価にもよく使われますが、実際にどんな意味があり、企業価値と具体的にどう関わるのか、この記事で解説していきます。

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1.フリーキャッシュフローの意味とその種類

まずは、フリーキャッシュフローの大まかな概念とその種類について、大まかに解説していきましょう。

①フリーキャッシュフロー≒企業が自由に使える資金

フリーキャッシュフローとは、企業が事業活動によって生み出したキャッシュのうち、「債権者(銀行など)と、株主の両方に帰属するもの」を表す概念です。

その簡易的な算出のプロセスは

(営業利益キャッシュフロー)+(投資キャッシュフロー)
※投資キャッシュフローは一般的にマイナスとなることが多い

というものであり、

「事業活動によるキャッシュフローから、投資に関するキャッシュフローを差し引いて残った金額」

と大雑把に表現することもできるでしょう。

ここから借入金の返済や株主への還元などが行われるため、一般的には「フリーキャッシュフローが多いほど経営状態は良好である」とみなされ、企業価値を評価する場合にも重要な指標となります。

②フリーキャッシュフローは3種類。企業価値計算に使われるのは「FCFF」

ただし、企業価値評価を行う際に使われるフリーキャッシュフローは、一般的なものとは少し異なります。

その違いを簡単に表にまとめてみましょう。

名称主に使われるケース
①簡易的なフリーキャッシュフロー企業の経営状態の判断など
②FCFF一般企業の企業価値の算出
③FCFE金融業などの企業価値の算出

一般的に「フリーキャッシュフロー」と呼ばれているものは①ですが、

企業価値の算定には②のFCFFFree Cash Flow for the Firm)が使われます。

冒頭で解説した「債権者(銀行など)と、株主の両方に帰属するキャッシュフロー」とは、正確にはこのFCFFのことを言います。

もうひとつの③FCFEFree Cash Flow for the Equity)は、②のFCFFと異なり、「株主だけ」に帰属するキャッシュフローのことを言います。

こちらも企業価値の計算に使われることはあるものの、金融機関の企業価値を評価する際など、やや特殊なケースに限られます。

そのため、多くの場合は②のFCFFを使って企業価値を計算していくことになります。

次の章では、その具体的な計算方法を解説していきましょう。

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2.企業価値のベースとなる「FCFF」の計算法3ステップ

一般的なフリーキャッシュフローと異なり、FCFFの計算はやや複雑であり、また用いられる指標にも様々なものがありますが、
本記事では一例として、以下のような算定方法をご紹介します。

①経常利益から金利等の損益を調整した合計値(EBIT)を求める

②EBITから税金を引いた残額(NOPLAT)を求める

③NOPLATから設備投資額などを引いてFCFFを求める

計算のシミュレーションにあたり、モデルケースとして以下の企業を仮定してみます。

<A社>

項目数値
経常利益9.1
支払金利1
受取利息0.1
減価償却費2
設備投資額5
前年比運転資本増減△0.5

(単位:億円)

また、実効税率は40%と仮定します。

①経常利益から金利等の損益を控除した合計値(EBIT)を求める

企業価値を決める際に重要となるポイントは、

「その企業が、本業でどのくらい資金(キャッシュ)を生み出すことができるのか?」

というもの。

その金額をはかる指標がEBIT(Earning Before Interest and Taxes)です。

大まかには

・(経常利益)+(支払利息)ー(受取利息)

という計算式で求めることができ、営業利益とほぼ同じものと考えてよいでしょう。

銀行の金利や配当金、あるいは不動産の売却益などの特別損益は、事業それ自体が生み出した利益や損失とは言えません。

そのため、企業価値の計算ではいったん除外して考えていく形となります。

A社の例で考えると、

9.1+1-0.1=10(億円)

が、A社のEBITとなります。

②EBITから税金を引いた残額(NOPLAT)を求める

次に、求めたEBITから税金の支払いを除いた残額(NOPLAT)を計算します。

この場合の大まかな計算式は

・(EBIT)×(1-実効税率)

とあらわせます。

A社の場合は、

10×(1-0.4)=6(億円)

となります。

③NOPLATから投資費用などを引いてFCFFを求める

NOPLATは、売上から仕入れ値や人件費、税金などのさまざまなお金を差し引いたもの。ここからさらに以下の計算をすることで、FCFFが求められます。

FCFF=(NOPLAT)+(減価償却費)-(設備投資) ± (運転資本の増減額)

ひとつひとつ、A社の例を用いて計算してみましょう。

まず、減価償却費は、設備および不動産(土地を除く)等への投資を複数年に分散して計上するものですので、実際に資金が減少したわけではありません。

そのため、この金額をNOPLATに足し戻します。

6+2=8(億円)

次に設備投資額を差し引きます。

8-5=3(億円)

最後に、事業を継続していく際の運転資本に増減がある場合も足し引きが必要となります。

運転資本とは、売り上げのうち実際にまだ回収していない額(売上債権)や、商品の在庫(棚卸資産)、仕入れた材料等のうち未払いの額(仕入債務)などの合計額のことです。

会計上は売上が計上されていても、まだ回収されていない売掛金などがある場合、実際の資金は少なくなります。

そのため、下記のルールに従って足し引きを行います。

  • 運転資本が前期よりも増加している→実際の資金は少なくなるため、その分を差し引く
  • 運転資本が前期よりも減少している→実際の資金は多くなるため、その分を足し戻す

A社の場合は運転資本が前年比-0.5(億円)となっているため、以下のように計算します。

3+0.5=3.5(億円)

こうして算出された金額が、A社のFCFF(フリーキャッシュフロー)となります。

次はこの数値を使って、実際に企業価値の計算を行っていきます。

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3.FCFFをベースとしたDCF法による企業価値評価5ステップ

前章までの解説で、A社のFCFFが計算できました。

これを用いて企業価値を評価・算出する方法は、DCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)と呼ばれ、下記の5ステップで求められます。

事業計画期間内のFCFFを計算する

②FCFFの割引率をもとめる

事業計画期間以降の残存価値(TV)を計算する

④上記すべてを使って事業価値を計算する

⑤事業価値を元に、企業価値、および株主価値(企業価値のうち、株主に帰属する部分)を計算する

先ほどのモデルケースであったA社をベースに、下記の仮定のもと計算を続けていきましょう。

<A社の追加設定①:1年~6年後以降の予測FCFF>

各年度のFCFF数値
1年後FCFF3.5
2年後FCFF4
3年後FCFF6
4年後FCFF8
5年後FCFF10
6年後以降のFCFF12

(単位:億円)

<A社の追加設定②:その他の計算指標>

※詳しい説明は後述します。

加重平均資本コスト(WACC)および継続成長率数値
加重平均資本コスト(WACC)10%
継続成長率(g)2%

(単位:億円)

<A社の追加設定③:A社の有利子負債等および非事業用資産>

有利子負債および非事業用資産数値
有利子負債等2
非事業用資産1

(単位:億円)

では、実際に順を追って、計算をしていきましょう。

①事業計画期間内のFCFFを計算する

前章で説明した計算方法と事業計画を元に、将来のフリーキャッシュフローを予測します。

どのくらい先まで予測するかはケースバイケースですが、おおむね5年~20年となることが多いとされています。

事業計画をもとに「この企業が将来どのくらい資金を生む力(FCFF)を持つようになるか?」を計算していくイメージをもつとよいでしょう。

A社の場合は事業計画の期間を5年と定め、各年の予測FCFFを追加設定①の表のとおりとしています。

②FCFFの割引率を計算する

一方で、①で示したFCFFは、あくまで未来の予測です。

実際に企業価値を評価するには、未来のFCFFが、現在ではどのくらいの価値を持っているのか、割り引いて考えねばなりません。この割合のことを割引率と呼びます。

DCF法では、この割引率に加重平均資本コスト(WACC)と呼ばれる指標を用います。

これは株主や債権者(銀行など)が資金を出す際に参考とする期待収益率をもとにしたもので、

「この企業への投資(融資や株式投資)は、どのくらいの利回りになるのか?」

という期待値の平均と見ることもできます。

加重平均資本コスト(WACC)の具体的な計算式は下記の通りとなります。

WACC=(有利子負債等の時価)/(有利子負債等の時価+株主資本の時価)×(負債コスト)×(1-実効税率)+(株主資本の時価)/(有利子負債等の時価+株主資本の時価)×(株主資本コスト)

WACCの計算はやや煩雑になるため、ここではいったん割愛します。詳細な計算方法を知りたい方は、下記の記事を参考にしてみてください。

企業価値の算出にもちいる「WACC(加重平均資本コスト)」とは?

DCF法では、このWACCの数値を割引率として用います。

WACCの数値は10%ですから、A社の割引率は10%となります。

WACCは株主や債権者から見た期待収益率の平均であると紹介したとおり、

割引率が10%であるということは、A社に投資したお金(負債および株式)の年間期待利回りが10%である(投資金が1年後に1.1倍になる)ことも同時に意味しています。

つまり、株主や債権者から見たとき、A社への投資から得られるリターンは、

一年後には1.1倍
二年後には1.1×1.1=1.21倍
n年後には1.1×1.1×…=(1.1)^n倍

になる「はずだ」と考えられるわけです。

このことから考えると、株主や債権者はA社のn年後のフリーキャッシュフロー(₌株主や債権者に配分されるリターン)の価値について、

FCFn ÷ (1.1)^n
※FCFn ₌ n年後のフリーキャッシュフロー

と、期待収益率で割り引いて判断すると考えられます。これがn年後のフリーキャッシュフローの現在価値です。

DCF法ではこのように、事業計画期間内の予測フリーキャッシュフローを、それぞれ現在から見た価値に置き換えることで評価を行っていきます。

③予測期間後の残存価値(TV)を計算する

企業経営は一般的に、「永遠に続く」ことを前提にしています。

しかし、将来にわたって無限に続くフリーキャッシュフローすべてを予測し計算するのは実質的に不可能です。

そのため、①で設定した事業計画期間より後の事業価値については、別の方法で求める必要があります。この価値を残存価値(ターミナルバリュー、TV)と呼びます。

残存価値の評価方法にはさまざまな方式がありますが、

今回の記事では代表的なものとして、

「予測した期間以降のFCFFは毎年一定の割合で成長する」と仮定して、下記の計算式によって計算を行う形をとります。

(事業計画の最終年度のFCFF)÷(rーg)

※r…割引率。先ほどの説明の通り、本記事ではWACCを割引率として用いています。
※g…継続成長率。企業が成長する割合のこと。0%(成長しない)、あるいは国の経済成長率などをベースとします。また計算上、継続成長率は割引率よりも小さい数字である必要があります。(式中の「rーg」が負の数になってしまうため)

追加設定②の指標から、A社の残存価値は、

12 ÷(10%‐2%)=150(億円)

となります。

この数値は

「A社の6年以降のFCFFすべての総額」

という意味合いになると考えてください。

事業価値を計算するときは、このTVをさらに現在から見た価値に割り戻さなければなりません。一般的には、事業計画期間の最終年度の割引率で割り戻し、現在価値に修正することになります。

つまり、

残存価値(TV)の現在から見た価値=TV/(1+r)^t
※t=事業計画期間の最終年度

となります。

④上記すべてを使って事業価値を計算する

これまで求めてきた、

①事業計画期間内のFCFF
②割引率(r)
③残存価値(TV)の現在価値

を使うことで「現在の」事業価値を算出することができます。

計算式は下記の通りです。

・1年後のFCFF / (1+r)+2年後のFCFF / (1+r)^2+……+n年後のFCFF / (1+r)^n+TV/(1+r)^t

簡単に言えば、

・事業計画期間内の各年度のFCFFを、
・割引率を用いてそれぞれ現在の価格に修正して合算し、
・最後に残存価値(TV)を現在価値に修正した額を足すことにより、

事業価値が算出されることになります。

これまでの数値をもとに、A社の事業価値を算出してみましょう。

年数予測FCFF(1+割引率)^nFCFFの現在価値
1年後3.51.13.18 (A)
2年後4(1.1)^23.30 (B)
3年後6(1.1)^34.50 (C)
4年後8(1.1)^45.46 (D)
5年後10(1.1)^56.20 (E)
残存価値(TV)150(1.1)^593.13 (F)
(A)(F)の合計額=事業価値(EV)115.77

(単位:億円)
※小数点第二位以下切り捨て

となり、A社の事業価値は115.77億円と算出できます。

⑤現在の事業価値から、企業価値、および株主価値を計算する

④で求めた価値は「事業価値」、つまり会社が行っている事業によって生み出される価値となります。

この数字に、遊休不動産や投資用の株式、預貯金といった、事業以外の保有資産の時価評価額を足すことで企業価値が算出されます。

そのためA社の企業価値は、

115.77+1=116.77(億円)

となります。

さらにここから有利子負債等(銀行からの借入等)の金額を差し引くことで、株主から見た株主価値が算出されます。

A社の場合は、

116.77-2=114.77(億円)

となり、株主価値は114.77億円と考えることができます。

A社がもし株式を上場している場合、理論上この数字は株式時価総額と等しくなるはず。そのためこの金額は、A社が非上場企業であった場合の便宜的な時価総額とみなすこともできます。

M&Aの場面においては、ここからさらに、買収にかかる費用、各種リスク、シナジー(相乗効果)などを加味したうえで、買収価格が決定されます。

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まとめ

企業価値を、株主や債権者に還元される収益(₌FCFFなど)をベースに評価する方法はインカムアプローチと呼ばれ、特に本記事で紹介したDCF法は、M&Aの際の企業価値評価で比較的よく使用されます。

この記事内でも説明した通り、膨大な計算が必要になりますが、KnowHowsでは、このDCF法のほか複数の計算方式で株価を算定できる株価算定ツールをご用意しました。

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この記事を書いた人

KnowHows 編集部

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