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- DCF法
- フリーキャッシュフロー
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- 事業価値
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- 非流動性ディスカウント
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Index
この記事でわかること
- DCF法を使った株価算定の基本的な流れ
- DCF法のメリット・デメリット
- DCF法におけるコントロールプレミアムや非流動性ディスカウントの考え方
はじめに
DCF(Discounted Cash Flow)法は、メジャーな企業評価方法のひとつです。
この記事では、株価算定に必要な手順や計算式を解説しています。DCF法のメリット・デメリット、コントロールプレミアムや非流動性ディスカウントの考え方についても述べているので、基本的な知識獲得に役立てていただければ幸いです。
またKnowHowsの「株価算定ツール」では、DCFを含む複数の算定方式で計算を行うことができます。
従来は数十万円のコストが必要だった株価算定を、手軽にご利用でき、税理士監修の株価算定書を出力することも可能です。
株価算定をご検討の際はぜひ、ご活用ください。
1.DCF法とは
DCF法とは、Discounted Cash Flow法の略で、事業計画などから企業の将来のキャッシュフロー(フリーキャッシュフロー)を算出し、それを現在から見た価値に修正することで株価を算定する手法です。
①DCF法の特徴とメリット・デメリット
前述の通り事業計画をベースにしているため、事業そのものの将来性や、経営戦略などを評価に盛り込めることが特徴となります。
そのため、起業から年数の浅いベンチャー企業やスタートアップなどの株価算定によく用いられます。
一方、将来の予測がベースとなるため、不確定要素が入り込みやすく、わずかな見立ての差によって算定結果に大きな差が出てしまう点がデメリット。
事業計画そのものの妥当性、実現性についても詳細に検討する必要があります。
②DCF法の計算で使われる指標
DCF法の計算には、多くの指標が用いられます。
そのうち代表的なものについて紹介します。
・事業価値(EV)
EVとはEnterprise Valueの略称で、会社の保有する非事業資産(事業と無関係な有価証券や不動産など)を除いた、事業そのものが持つ価値のことを言います。
日本語では事業価値とも企業価値とも呼ばれる場合がありまちまちですが、本記事では事業価値で統一します。
・フリーキャッシュフロー(FCF)
一般的な定義としては、営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを差し引いたものですが、DCF法においては、「株主や債権者に帰属するキャッシュフロー」という考え方をします。
このキャッシュフローはFCFF(Free Cash Flow for the Firm)と呼ばれる場合もあります。
本記事ではこのFCFFを「フリーキャッシュフロー」または「FCF」と表記します。
FCFFについてより詳しく知りたい方は、下記の記事もご参考ください。
「企業価値」「フリーキャッシュフロー」の関係と計算方法3ステップ
・割引率
割引率は、事業計画にもとづき算出された未来のフリーキャッシュフローを、現在から見た価値に直すための指標です。
DCF法の計算では、割引率には後述のWACCが多く用いられます。
・WACC
WACC(Weighted average cost of capital)は加重平均資本コストとも呼ばれ、対象となる会社の株主が期待する収益率と、債権者の金利を求め、資本構成に従って加重平均することで求められます。
詳しい計算は後述しますが、ざっくりと
株主、または債権者から資金を調達する際に支払うコスト(株主への利益還元や、支払う金利)の平均値
とざっくりイメージするとよいでしょう。
その他にもさまざまな用語が登場しますが、以下の計算手順で随時解説します。
2.DCF法による株価算定の手順
DCF法で株価算定をするとき、将来のフリーキャッシュフロー(FCF)を元に事業価値(EV)を求め、それから株価計算と進むのが一般的です。具体的には、以下のような手順をとる形となります。
では、以下で詳しく解説していきましょう。
①予測期間を決定する
将来のフリーキャッシュフロー(FCF)を算定するためには、まずどの期間までのそれを予測するのか、決定しなければいけません。規定はありませんが、5年や10年に設定するケースが多く見られます。また、11年以上の予測数値は妥当性に欠けると見られることがあります。
②予測期間内の損益計算書と貸借対照表を作成する
設定した予測期間中の損益計算書と貸借対照表を作成します。以下、一般的な手順です。
手順 | |
---|---|
1 | 有価証券報告書や決算短信、年次報告書、統合報告書、株主通信などのディスクロージャー資料などを集める |
2 | 各情報と過去の実績を比較し、整合性や連動性を確認する |
3 | 流動資産や固定資産、流動負債などの回転率(回転期間)を設定し、各数値の予想を行う |
4 | 売上高や各種コストを予想して、予測期間内の損益計算書を作成 |
5 | 余剰現金預金を算出して、予測期間内の貸借対照表を作成 |
③予測期間内のFCFを算定する
次の計算式を使って、予測期間内のフリーキャッシュフローを求めます。
FCFの計算方法 | |
---|---|
計算式 | FCF=NOPLAT+減価償却費-設備投資額±運転資本増減額 |
補足1 | NOPLAT=EBIT×(1-実効税率) |
補足2 | EBIT=税引前当期純利益+支払利息-受取利息 |
④割引率を求める
将来のフリーキャッシュフローを算定したら、次にそれ以外の必要な数値を求めていきます。まずは、フリーキャッシュフローの現在価値算定に用いる割引率、WACC(Weighted Average Cost of Capital:加重平均資本コスト)です。次のような手順で算定します。
手順 | |
---|---|
1 | 株主資本コストを算定する |
2 | 有利子負債コストを算定する |
3 | 1と2を使ってWACCを算定する |
順に解説しましょう。
・株主資本コストを算定する
株主資本コストとは、株主が評価対象企業に対して求めるリターン(期待収益率)であり、インカムゲイン(配当)やキャピタルゲイン(値上がり益)があたります。
CAPM(Capital Asset Pricing Model:資産評価モデル)というものを用いて、下記のように計算されます。
株主資本コストの計算方法 | |
---|---|
計算式 | 株主資本コスト=安全資産の利子率+β×マーケットリスクプレミアム |
補足1 | 安全資産の利子率は、国債の10年ものがよく利用される |
補足2 | β値の算出方法 |
【上場企業の場合】:次のいずれかを用いることが多い | |
Ⅰ:日経電子版やREUTERS(ロイター)で入手する | |
Ⅱ:株価とTOPIX指数などを使って算定する | |
【未上場企業の場合】以下の手順で算定する。 | |
Ⅰ:複数の類似上場企業のβを算定 | |
Ⅱ:算定したベータから、それぞれのアンレバードベータを算定 | |
Ⅲ:アンレバードベータの平均値を算定 | |
Ⅳ:Ⅲを元にリレバードベータを算定 | |
補足3 | マーケットリスクプレミアムは、3~6%でよく評価される |
・有利子負債コストを算定する
有利子負債コストとは、債権者が評価対象企業に対して求めるリターン(期待収益率)です。金利や社債利息などがあげられます。株主には減配や元本割れのリスクがある一方、債権者は優先的に返済してもらえる(利息が受け取れる)ため、基本的に有利子負債コスト<株主資本コストとなります。
有利子負債コストの計算方法 | |
---|---|
計算式 | 有利子負債コスト=支払利息/有利子負債の期中平均 |
補足 | 日本証券業協会が発行している格付マトリクスから推定する場合もある |
・WACCを算定する
株主資本コストと有利子負債コストを算定したら、以下の計算式を使ってWACCを算定します。
WACCの計算方法 | |
---|---|
計算式 | |
補足1 | 株主資本は類似上場企業の株式時価総額を利用 |
補足2 | 有利子負債は基本時価だが、場合によっては簿価も可 |
⑤残存価値(ターミナルバリュー、TV)を求める
次に、残存価値(予測期間より後に獲得するフリーキャッシュフローの総和)を、次の計算式で算定します。
残存価値の計算方法 | |
---|---|
計算式 | |
補足1 | 予測期間終了時点のFCFは、予測期間最終年のFCF(予測期間が5年の場合は、5年目のFCF) |
補足2 | 継続成長率は0~1%で設定されることが多い |
⑥事業価値(EV)を算定する
将来のフリーキャッシュフロー、割引率、残存価値が揃ったら、事業価値(EV、事業に直接関わる資産や負債が持つ価値)を算定します。計算式は、以下の通りです。
事業価値(EV) | |
---|---|
計算式 | |
補足 | nは予測期間の年数 |
⑦企業価値、株式価値を算定する
事業価値(EV)から株価を算定する場合は、企業価値(企業の本源的な価値)経由で、一度株式価値(特定の株主が保有している株式の価値)を算定します。
企業価値 | |
---|---|
計算式 | 企業価値=事業価値(EV)+非事業価値 |
株式価値 | |
---|---|
計算式 | 株式価値=企業価値-有利子負債 |
⑧株価を算定する
最後に、以下の計算式に当てはめれば株価が算定できます。
株価 | |
---|---|
計算式 | 株価=株式価値/発行済株式数 |
補足 | 発行済株式数は、自己株式数を除く |
2.DCF法利用に役立つ事前知識
次に、DCF法を利用して株価を算定する際に、知っておくと便利なポイントをご紹介します。
①メリット・デメリット
以下のようなメリット、デメリットがあります。
・メリット
- 評価対象企業の収益性や成長性を考慮した価値を算定できる
- ステークホルダー(特に投資家)に合理的な説明をすることが可能
- M&A(買収)との親和性が高い
- 会計処理時や各資産の価格設定など、株価算定以外の場面でも使える
・デメリット
- 評価対象企業の情報開示の度合いによって結果が左右される
- 算定時に恣意性が入りやすく、客観性に乏しくなる可能性がある
- 相続や贈与時の株価算定には向いていない
②エンタープライズDCF法とエクイティDCF法
DCF法には、第1章でご紹介したような事業価値(EV)を算定する方式以外に、株式価値を算定する方式があります。前者をエンタープライズDCF法、後者をエクイティDCF法と言います。
エクイティDCF法は、エンタープライズDCF法では不向きとされる金融機関の価値算定に適しているのが特徴です。
このほか、両者には次のような違いがあります。
エンタープライズDCF法 | エクイティDCF法 | |
---|---|---|
計算の元となる値 | FCF | FCFE(※) |
利用する割引率 | WACC | 株主資本コスト |
(※)FCFE(Free Cash Flow for Equity)…株主に分配できるフリーキャッシュフローのこと。FCF-支払利息×(1-実効税率)±有利子負債増減で算定できる
③コントロール・プレミアムと非流動性ディスカウント
コントロール・プレミアムとは、企業の支配権に対する価値です。
たとえば株式の過半数を持つ株主(支配株主)は、自分が持つ株式によって会社の支配権を得ていると言えます。その支配権の分だけ、同じ株式でも価値が高いとみなされます。これがコントロール・プレミアムです。
逆に、支配株主にとって、会社の支配権を持たない人の株式は割安であるという言い方もできます。このことをマイノリティ・ディスカウントと呼びます。
そのほか、未上場企業など、株式の流動性が低い(売買の成立が難しい)場合は、その分だけ株式の価値は低くなるという考え方をします。これを非流動性ディスカウントと呼びます。
未上場企業のM&Aなどにおいては、こうした要素も勘案したうえで株価の算定が行われます。
まとめ
- DCF法は、評価対象企業が将来生み出すフリーキャッシュフローを元に株価を算定する方法。株価を算定する過程で、事業価値(EV)・企業価値・株式価値などを求めることができる。
- 算定時に重要なのは、予測期間内の損益計算書や貸借対照表の作成。できるかぎりいくつかのシナリオから複数用意し、客観性を高めるのがベター。
- DCF法により算定された株価から、さらにコントロール・プレミアムや非流動性ディスカウントなども勘案したうえで株価が算定される。
おわりに
DCF法は、算定上の特徴から多くのメリットがあります。しかしあらゆるシーンに使える万能薬ではないので、別の算定方法も抑えておくのがベターです。
最初にご紹介したように、KnowHowsでは、DCF法のほか複数の計算方式で株価を算定できる「株価算定ツール」をご用意しました。
税理士監修のもと、必要な項目を入力するだけで本格的な株価算定が可能です。
計算は無料でご利用できますので、本記事とあわせてぜひお役立てください。
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