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この記事でわかること

  • 給与体系の意味と理解することの重要性
  • 給与体系を構成する要素に伴う注意点
  • 給与体系を構築するためのポイント2つ
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はじめに

給与体系は、給与の構成を呼ぶときの名称です。従業員を雇う上で、その理解は不可欠とされています。

この記事では、なぜ理解が大事なのかの理由や、各構成要素にある注意点をまとめています。また、給与体系を構築する際のポイントについてもご紹介しているので、ご参考ください。

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1.給与体系の理解はなぜ重要?その理由や構成要素を概説

早速、給与体系を理解する目的をご説明します。その上で、給与体系を構成する要素をご紹介しましょう。

①給与体系は従業員に納得してもらうためのシステム

給与体系は、給与を構成する要素のまとまりを呼んだものを言います。

給与を構成する要素とは、給与明細書に記載されている基本給や各種手当です。ですので、給与体系はちょうど給与明細書の支給項目の部分にあたる、と思っていただくといいでしょう。

では、なぜこの給与体系の理解が不可欠なのでしょうか。

理由は、従業員に、支給した賃金について納得してもらうためです。

従業員は給与が支給された際、「なぜこの給与なのか」気になります。給与が以前と異なる額であれば、「以前と異なるのはなぜか」といった疑問を持ちます。給与は、多くの従業員にとって生活の基盤となるものだからです。

ところがその際、もし企業が明確に答えられなかったとしたら、従業員は何を持ってお金がもらえるのかわからなくなります。

給与が思ったよりも低かった人なら働く意欲が持てず、職を辞めてしまうかもしれません。

これを防ぐには、「どういった名目で、いくらの賃金を支給しているのか」を明確にすること必要があります。それゆえに、支給項目の詳細を示した給与体系の深い理解が大事なのです。

②給与体系の構成要素「基準内賃金」

続いて、給与体系を構成する要素について見ていきましょう。給与体系を構成する要素は、一般的に基準内賃金基準外賃金に大別されます。

まず基準内賃金ですが、これは所定労働時間(企業が設定した労働時間)内で働いた分に対して支払われる賃金です。

基本給手当の2種類があり、基本給は従業員の業績や能力、勤務態度、年齢、勤務歴などに応じて決まる賃金です。

一方、手当は、基本給以外に支給する賃金を言います。業績手当や役員手当など仕事に直接関連するものもあれば、家族手当や単身赴任手当といった生活をサポートするものなど、さまざまな種類があります。

以下に、代表的なものと、それぞれの概要をまとめました。

基準内賃金に該当する手当概要
業績手当事前に決められた目標の達成度に応じてつく手当
皆勤手当無遅刻・無早退・無欠席のときにつく手当
通勤手当自宅から会社までに要する交通費に対する手当
家族手当扶養家族がいる場合などにつく手当
単身赴任手当遠方の部署などに単身赴任したときにつく手当

③給与体系の構成要素「基準外賃金」

基準外賃金とは、所定労働時間外に働いた分に対して支払われる賃金です。時間外労働手当や深夜労働手当、休日出勤手当などがあります。

基準内賃金とは違い、労働基準法で、どのくらい支給すべきか決まっているものが多いのが特徴です。

以下、代表的な項目と概要です。

基準外賃金に該当する手当概要
時間外労働手当法定労働時間(1日8時間 or 週40時間)を超えて働いたときにつく手当。超過時間×規定の時給×割増率(2割5分以上)で計算される
深夜労働手当深夜帯(22時~翌日5時)に働いたときにつく手当。深夜帯の労働時間×規定の時給×割増率(2割5分以上)で計算される
休日出勤手当法定休日に働いたときにつく手当。法定休日に勤務した時間×規定の時給×割増率(3割5分以上)で計算される
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2.給与体系の構成要素を理解するときの注意点

給与体系は、第1章で見てきたように、多くの要素によって構成されています。続いて、各要素を理解するときの注意点を詳しく解説しましょう。

①基準内賃金における注意点

基準内賃金における注意点は2つあります。

・基準内賃金には最低ラインがある

第一は、基準内賃金の最低ラインが、最低賃金法によって規定されていることです。

基準内賃金は、各従業員の諸要素を元に、企業が金額を決めることになります。労働者の給与は、企業にとってコストとなるわけですから、できれば抑えたいというのが心情でしょう。

しかし、厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」にて最低賃金を確認し、それを上回る金額に設定しないと法律違反となります。

なお、掲載されているのは、最低賃金時間額(時給)です。日給制の企業は1日の所定労働時間に最低賃金時間額を、月給制の企業は1ヶ月の平均所定労働時間に最低賃金時間額を掛けて、最低賃金額を算出しましょう。

・最低ラインを守るだけでは不十分

第二は、最低ラインを守るだけでは不十分なことです。

法律上はOKでも、規定をギリギリ超えるような金額にするのは望ましいとは言えません。類似の企業が高い給与を支給していれば、そちらに人が流れてしまう可能性が高いからです。

そのため、基準内賃金は、公式のデータベースや同業他社から相場を調査し、設計するのが一般的となっています。

なお、厚生労働省では「Ⅲ 賃金」にて、「産業、事業所規模、性、給与内訳別1人平均月間現金給与額」や「都道府県、産業別1人平均月間現金給与額(事業所規模5人以上)」などを公開しているので、活用してみてください。

②基準外賃金における注意点

基準外賃金でも、2つの注意点があります。

・時間外手当や休日出勤手当は支払うだけでOKではない

第一は、時間外手当や休日出勤手当は、支払えばOKではないことです。

従業員を法定労働時間を超えて働かせたり休日労働出勤をさせる場合は、事前に企業と従業員の間で協定を結び、そこで作成した書類を労働基準監督署に出しておく必要があります。

この規定を、労働基準法36条で定められていることから、36協定(サブロク協定)と言います。

もし36協定を違反すると、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されることがあるため、忘れずに手続きするようにしてください。

・割増賃金は上乗せで計算される

第二は、時間外労働手当や深夜労働手当は、上乗せで計算されることです。

たとえば朝9時から18時まで働き、その後23時まで残業をしたとしましょう。

この場合は、まず18時から22時までの割増率は2割5分以上、22時から23時までの割増率は5割以上となります。最後の1時間は、時間外労働に加えて深夜労働にあたり、それぞれの割増率を足した数値(2割5分以上+2割5分以上)で計算するからです。

ただ一方で、法定休日に残業した場合は、法定労働時間を超えても時間外労働手当は加算されない(深夜手当は加算される)といった特殊なルールもあります。

③各種手当における注意点

基準内賃金および基準外賃金の手当には、課税給与に入らないものがあります。課税給与の金額が変わると、企業が支払うべき源泉徴収税も変わるので、あわせて抑えておいてください。

以下に、非課税扱いとなる手当を一部ご紹介します。

  • 通勤手当
  • 旅費手当
  • 宿日直手当
  • 見舞金
  • 結婚祝金

ただし、項目によって上限金額が設定されていたり、項目に当てはまっていても内容によって課税対象となる場合があるので、実際に運用するときは注意しましょう。

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3.給与体系を構築する際のポイントは?

最後に、給与体系を構築するポイントを解説します。給与体系とともにおさえておき、従業員との円満な関係を築けるようにしていきましょう。

①基本給は人事評価と連携させて決定する

給与体系を構築する際、基本給から定めるのが一般的です。このとき、人事評価と連携させながら決定するようにしましょう。

基本給の決定方法はさまざまですが、次のような手順で決められることがしばしばあります。

  1. 業界や類似企業などから相場を調査する
  2. あらかじめ設計しておいた等級ごとに、賃金の支給範囲を決定する
  3. 業績や能力などに応じて、おおよその金額を確定する
  4. 年齢や勤務歴などの諸要素を加味しながら、支給額を決める

相場の調査や等級の設計は、ある程度セオリーがあるものです。

しかし業績や能力などは、人によって異なります。その適切な判断は、人事評価があって初めてなされるものです。

給与の金額を決める際は、各従業員がどのように評価されているのかのチェックも怠らないようにしましょう。

②手当を導入する際は、従業員に何をしたいのか熟考する

企業側で自由に決定できる手当に関しては、「従業員に何をしたいのか」を熟考してください。

たとえば「家族を養っている従業員をサポートしたい」と考えれば、家族手当が自然に思い浮かぶでしょう。

「遠方からわざわざ来てくれる従業員にも長く働いてもらいたい」と考えたら通勤手当を、「仕事柄、急な転勤はあるが、それで入社を躊躇ってほしくない」と思ったら単身赴任手当を用意すべきではないかと検討できます。

また、このように考えれば相場とも比較しやすくなり、妥当な金額設計ができるでしょう。

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まとめ

  • 給与体系は、給与を構成する要素のまとまりを呼んだもの。給与明細書の支給項目の部分にあたるとイメージしよう。
  • 給与体系の構成要素は、基準内賃金と基準外賃金に大別できる。各構成要素には注意点があるので、事前におさえておく。
  • 給与体系を構築するポイントは2つ。基本給は人事評価と連携させて決定すること。手当を導入する際は、従業員に何をしたいのか熟考しておくこと。
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おわりに

給与体系は、企業が従業員に説明責任を果たすためのツールです。

構築では、項目だけをただ並べるのではなく、それぞれの意味を深く理解することがポイントとなります。

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