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Index
この記事でわかること
- 株価算定が求められるシーンや、公認会計士に依頼したときの流れ
- 株価倍率法、DCF法、修正純資産法の特徴と計算式
- 国税庁が定める原則的評価方式・特例的評価方式の詳細と選び方
はじめに
第三者割当増資や事業承継、M&Aなどで重要となるのが、株価算定です。
この記事では、株価算定の必要性を踏まえた上で、一般的な3つの株価算定方式についてご紹介しています。また、国税庁の財産評価基本通達が定める算定方式も解説しています。
事前に知っておけば、公認会計士といった専門家に依頼する際もスムーズとなるでしょう。
またKnowHowsでは、従来は専門家に依頼していた株価計算を無料で行える「株価算定ツール」もご用意しています。
DCF法・純資産法・競合会社比較法の3つの代表手法を用いて、自社の株価を本格計算。
従来は数十万円のコストが必要だった株価算定を、手軽にご利用でき、税理士監修の株価算定書を出力することも可能です。
株価算定をご検討の際はぜひ、ご活用ください。
1.株価算定の必要性
株価算定とは、客観的な株価を知るために計算することです。
とりわけ、未上場企業では、よく用いられます。上場企業の株式と異なり、株式が投資家によって客観的に評価される機会がないからです。
しかし、なぜ客観的な株価が必要なのでしょうか。理由はさまざまですが、やはりステークホルダーとのトラブルを避けるため、というのが大きいでしょう。
たとえば、ある未上場企業では、すでにいくつか株式を発行していて、株主が何人かいました。このとき、より会社を大きくしたいと考えて、新たな投資家に向けて募集株式を1株500円で発行したとします。
ところが、よくよく調べてみると、本当は1株1000円の価値があった。
となれば、既存株主は黙っていません。
そもそも新しい株主が増えると、それだけ各既存株主の持株比率が下がります(既存株主に割り当てなかった場合)。なのに明らかに適正価格で売られていないとなれば、たまったものではないからです。
①株価算定が求められるシーン
株価算定は、今見てきたようなトラブルを避けるために不可欠な手続きです。
ここで、具体的なシーンをいくつかあげましょう。
株価算定が求められるシーン |
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株主割当増資や第三者割当増資で資金調達をしたいとき |
魅力的なストック・オプションの発行したいとき |
少数株主からスムーズに株式を回収したいとき |
円滑なM&A取引を実現したいとき |
親族に株式を譲渡して事業承継をとき |
②株価算定の主な流れ
株価算定は、後述するように、多くの方式があります。
それらの計算方式を理解すれば、理論上は自力で客観的な株価の算定が可能です。
しかし、計算式に当てはめる数値を用意するのに専門知識が必要なので、実際には公認会計士といった専門家に依頼するか、専門のツールを用いるのが一般的です。
以下は、公認会計士に依頼した場合の主な流れです。
- なぜ株価算定が必要なのか、理由を明確にしておく
- 知り合いづてやウェブサイトを見て、公認会計士を選定する
- 公認会計士と意見交換をして、株価算定までの流れを共有する
- 公認会計士に商業登記簿謄本や3年分の事業計画書などの必要書類を提出する
- 公認会計士が作成してくれた株価算定書を受け取る
なお、公認会計士へ依頼するときのポイントについては、下記で詳述しています。
株価算定を公認会計士へ依頼する際のポイント!流れや事前準備まとめ
2.一般的な株価算定方式
前章では、株価算定では、公認会計士に依頼するのが一般的だとお伝えしました。
ただ、ある程度、どのような種類があるのか、どういった計算式が用いられるのか知っておくことも大切です。事前に知ることで、公認会計士との打ち合わせもスムーズになります。
株価を算定するとき、一般的に、3つのアプローチがあります。
市場の評価から求めるマーケット・アプローチ、収益から求めるインカム・アプローチ、純資産から求めるコスト・アプローチです。
各アプローチの中でも、さまざまな算定方法があるのですが、この記事では、それぞれから特に用いられる以下の手法をご紹介します。
アプローチ | 代表的な算定方法 |
---|---|
マーケット・アプローチ | 株価倍率法 |
インカム・アプローチ | DCF法 |
コスト・アプローチ | 修正純資産法 |
①株価倍率法
評価対象企業に類似する上場企業の数値を元に、算定する方法です。類似企業を選定する際は、業界や業種だけでなく、規模や地域、将来性などを加味して行うことがポイントとなります。次の計算式で求めることができます。
計算式:
A=類似上場企業の時価総額
B=経常利益(or当期純利益 or純資産額)
C=評価対象企業の経常利益(or当期純利益 or純資産額)
D=評価対象企業の発行済株式数
②DCF法
将来のFCF(フリーキャッシュフロー)を一定の割引率で割り引き、現在価値に計算し直して算定する方法です。
DCF法には、運営している事業の価値を示す事業価値を求めるエンタープライズDCF法と、株主に基づく部分の価値を示す株式価値を求めるエクイティDCF法の2種類があります。
ただ、DCF法と言うと、エンタープライズDCF法がしばしば紹介されます。そのため、本記事では、この方法から株価を算定するための計算式をご紹介します。
計算式:
A=将来獲得するFCFの現在価値の合計
B=非事業価値
C=有利子負債
D=発行済株式数
DCF法の詳しい手順については、下記で紹介しているのでご参照ください。
DCF法による株価算定手順8ステップ。特徴やメリット・デメリットも解説
③修正純資産法
貸借対照表の主要な項目を、再調達原価や正味売却価額などの時価に修正して、計算する方法です。手続きは容易ですが、収益性や成長性が反映されない点に注意する必要があります。
計算式:
A=時価に修正して算定した純資産価額
B=発行済株式数
3.国税庁が定める株価算定方式
株価算定方式には、前章でご紹介した以外にも、国税庁の財産評価基本通達が定めているものもあります。
こちらは、株式の相続・贈与が行われるときに用いられます。
たとえば、現社長が息子に株式を譲渡して事業承継する、亡くなった夫が保有していた株式を妻が相続する、といった場合です。
相続税や贈与税については、譲り受ける財産の相続税評価額(相続税・贈与税の基準となる課税金額)で計算しなければいけません。株式も同様です。
国税庁が示す算定方式は、正しく相続税評価額としての株価が出せるように、あらかじめ作られているものです。
株価算定方式には、類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元方式の3種類があります。各方式の概要と算定方式をご紹介しましょう。
①各方式の概要と計算式
各方式の概要と算定の仕方をご紹介します。
②算定方式選択と計算の手順
国税庁が定める各方式は、通常、次のような手順に従って選択するようになっています。
※フローチャート⑦の「比準要素」に関する補足
比準要素とは、「1株あたり配当金」「1株あたり利益」「1株あたりの簿価純資産価額」の3要素によって定められる数値です。
比準要素0とは、直前期においてこれら3要素がすべて0円である状態をいいます。
比準要素1とは、直前期においてこれら3要素のうち2つが0円、かつ、各要素の直前前々期末からの平均額(簿価純資産価額については直前期末の金額)の2つ以上が0円である状態を指します。
いずれも株式の価値が著しく低い状態であるため、類似業種の株価をもとにする類似業種比準法ではなく、純資産価額に重点をおいた算定が用いられます。
以下、該当する手順ごとの計算方法を解説していきましょう。
・フローチャート⑧に該当した際の手順
国税庁が定める原則的評価方式に従って、算定を行います。手順は次のとおりです。
(1)評価対象企業が、国税庁の定める大会社・中会社(大・中・小)・小会社のいずれかに該当するか確認する
・従業員数が70人以上の会社→大会社
・従業員数が70人未満の会社→下表に従う
(2)次にあげる算定方式に従って株価を算定
・大会社…類似業種比準価額
・中会社の大…類似業種比準価額×0.9+純資産価額×0.1
・中会社の中…類似業種比準価額×0.75+純資産価額×0.25
・中会社の小…類似業種比準価額×0.6+純資産価額0.4
・小会社…純資産価額
※いずれも純資産価額で計算した場合に、そちらのほうが低ければ純資産価額で評価する
・清算分配見込金額(フローチャート①に該当した際の手順)
次のように計算すると定められています。
計算式:清算分配見込金額=A×B
A=清算の結果生じる分配の見込金額(or 2回以上生じる場合は、それぞれの金額)
B=n期間に応ずる基準年利率による複利現価率
※n期間=見込金額の課税時期から実際に分配されるまでの期間|
・S1+S2方式(フローチャート⑥に該当した際の手順)
S1とS2をそれぞれ次のように求め、足し合わせることによって計算します。
まとめ
- 株価算定は、特に株式市場による客観的な評価がない未上場企業にとって重要。増資、M&A、ストック・オプションの発行、相続・贈与など、さまざまな場面で求められる。
- 株価算定方式には、株価倍率法、DCF法、修正純資産法などがある。それぞれの留意点を抑えながら、算定するようにしよう。
- 株式の相続や贈与があった場合は、国税庁が定める株価算定方式(原則的評価方式か特例的評価方式)で求める。ただし企業によって採用できる方式が異なるので注意が必要。
おわりに
株価算定では、複数の方式を利用するのが一般的です。
この記事を足がかりに、自社に相応しい方法をいくつか見つけて、算定するようにしましょう。
KnowHowsの「株価算定ツール」を使えば、必要な項目を入力することで株価の試算が可能です。合わせてお役立てください。
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