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企業価値とは?他の価値との関係性や妥当な評価をするための方法2つ
- もっと解説してほしい0
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Index
この記事でわかること
- 企業価値の概要や事業価値(EV)・株主価値との関係性
- 評価の対象となる企業の実態、及び業界の把握の仕方
- 企業価値をするための財務諸表の読み解き方
はじめに
企業価値とは、ある企業の持つ市場価値を示したもの。株価、資産額、キャッシュフローなどといった様々な指標で表されます。
この記事では企業価値の概要や役割をご紹介。加えて、企業価値を算出するために重要となる「企業の実態や業界の把握の仕方」「財務諸表の読み解き方」も、合わせて詳述しています。
また、KnowHowsの「みんなで事業相談」では、専門家に事業の悩みを無料で相談することが可能です。
弁護士や会計士、行政書士、M&Aアドバイザーなど、KnowHowsに登録する専門家があなたの悩みに詳しく回答。
バリュエーション(企業価値評価)も含め、お悩みの際はぜひご活用ください。
1.企業価値とは
まずは「企業価値」について、その概要を解説していきます。
①企業価値=企業が世の中に価値を生み出す力
企業価値とは、企業そのものが持つ経済的な価値のことです。
では、「経済的な価値」とはなんでしょうか。
資本主義では、資本(お金)を通じて事業を行い、元となる資本以上の価値を世に生み出すことが原則とされています。
たとえば、あなたがケーキ屋さんを始めたと考えてみましょう。
あなたは100円で材料を仕入れてケーキを作り、500円で販売したとします。
このケーキが売れたとき、あなたはケーキと材料の差額である400円分の価値を、世の中に新たに生み出したことになります。
(本来であればこの400円からは、あなたの人件費やお店の家賃などが差し引かれることになりますが、ここでは割愛します)
このように、費用以上の利益が残る……つまり黒字になることは、その差額分だけ、新たな価値を世に生み出した結果だと言えます。
企業も同様に、
- 株主や金融機関から提供された資本(お金)をベースに
- 新たな商品、サービスなどを世の中に提供し、
- それによって新たな価値を生んだ結果が、収益として残る
- その収益をベースに、さらに新しい価値を生み出していく
このサイクルを繰り返すことが原則であり、そして企業の経済的な価値とは、このサイクルを通じ、より多くの価値を生むことに他なりません。
つまり「企業価値」とは、「新たな価値=収益(キャッシュフロー)を生み出す力」のことなのです。
②企業価値・事業価値(EV)・株主価値の違い
企業価値とよく似た言葉に、事業価値(EV)と株主価値があります。
これらは良く混同されて使われがちですが、厳密には意味が異なります。
・事業価値
事業価値とは、会社が事業によって生み出す収益の指標です。
企業によっては、本来の事業以外の資産(投資用の不動産や株式、使っていない不動産など)を持っていることがあります。これらはそれ自体、価値を持つものではあるものの、企業が事業を通じて生み出した価値とは言えません。
そのため、企業価値のうち事業と直接関わる部分だけにフォーカスしたものを、事業価値(EV)と呼びます。
・株主価値
株主価値とは、企業価値のうち、特に株主に帰属する価値を指します。
企業は、株主からの出資や、金融機関からの融資を通じて資本を集め、事業を行います。
その結果生み出された価値のうち、株主からの資本が関わった部分はどのくらいなのか……という指標が株主価値です。
株式譲渡によるM&Aなどを行う場合などは、この株主価値をベースに、株式の譲渡額が決まる形となります。
最後に、事業価値(EV)と株主価値の概要と関係をまとめると、下記の通りとなります。
名称 | 概要 |
---|---|
事業価値(EV) | 事業活動に直接関わっている資産・負債から生まれる価値。企業価値から、非事業価値(事業と直接関わらない資産・負債)を引いて算出される。 |
株主価値 | 企業価値のうち、株主に属する部分。企業価値から債権者価値(有利子負債等)を引いて算出される。 |
企業価値、事業価値(EV)、株主価値の関係式 |
---|
企業価値=事業価値(EV)+非事業価値=株主価値+債権者価値(有利子負債等) |
③企業価値評価(バリュエーション)とは
企業価値評価(バリュエーション)は、企業の財務諸表などを元に、前述の企業価値を定めることを言います。
主に必要となるケースには、次のようなものがあります。
役立つ場面 | 詳細 |
---|---|
M&A(買収) | 「売り手に提示する買収額」や「買い手に提示する売却額」などの基準となる |
株主への説明 | 株主や投資家に「企業価値向上のための施策」「投資の回収可能性」などの説明となる |
融資審査 | 融資審査における「格付け」において、企業価値の評価が行われる |
その他 | 係争や非訟事件の対応、会計監査人への説明などにおいて使用する場合がある |
2.企業価値評価のポイント
次に、企業価値を評価する際に重要となる、
①企業の実態や業界の把握の仕方
②財務諸表の読み解き方
について解説していきます。
①企業の実態や業界の把握の仕方
次の項目をチェックしましょう。
・企業の実態
項目 | チェックポイント |
---|---|
事業内容 | どのような事業を行っているか |
ビジネスモデル | ビジネスモデルはどのようなものか |
経営者 | 経営に関する知識やスキルはどの程度か |
規模 | 企業の規模はどのくらいか |
地域 | どの地域で事業を行っているか、中心となる地域はどこか |
技術 | 技術力はどの程度有しているか |
資格・免許など | どのような種類のものがあるか |
・業界の動向
項目 | チェックポイント |
---|---|
今後の見通し | 上向きか、下向きか |
過去の出来事 | 主に半年から1年の間に起きたことを見る |
市場規模 | 市場の規模はどのくらいか |
参入状況 | どのような企業が参入しているか |
海外展開 | 海外にはどのくらい進出しているのか、またその国はどこか |
業界の動向に関しては、下記のような書籍も役立ちます。
タイトル | 出版者 | 刊行ペース |
---|---|---|
『業種別審査事典』 | 金融財政事情研究会 | 不定期刊 |
『TDB report』 | 帝国データバンク | 隔月刊 |
『全国企業あれこれランキング』 | 帝国データバンク | 年刊 |
『業種別業界情報』 | 経営情報出版社 | 年刊 |
『日経業界地図』 | 日本経済新聞社 | 年刊 |
『会社四季報業界地図』 | 東洋経済新報社 | 年刊 |
(参考:国立国会図書館・「リサーチ・ナビ」・業界動向の調べ方)
②財務諸表の読み解き方
財務諸表は、財政や経営の状態を利害関係者に報告する計算表です。中でも賃借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書は財務三表と呼ばれていて、企業価値評価においても重要な書類となっています。
各計算表の読み解き方を、順にご紹介します。
・賃借対照表賃借対照表では、次のような項目を見ることで、評価の検討をつけることが可能です。
現金及び預金 | |
---|---|
総資産に対して比率が高い場合 | 成長のための投資や株主への還元をあまりしていない可能性がある |
総資産に対して比率が低い場合 | 現金が枯渇していて、資金繰りに苦しんでいる可能性がある |
純資産と負債 | |
---|---|
純資産の比率が高い場合 | 経営が安定している |
負債の比率が高い場合 | 経営が不安定のため、場合によっては負債の返済目処なども要分析 |
また、記載された数値を使って次のような項目も算出できます。
株式時価総額 | |
---|---|
概要 | 企業の業績や将来の成長性を示す指標。大きいほどに利益を生み出す力があると評価される。 |
計算式 | 株式時価総額=現在の株価×発行済株式数 |
PBR(Price Book Ratio) | |
---|---|
概要 | 株式時価総額と純資産の比率を示す指標。JPXが発表している平均値より上回っていれば株価が割高、下回っていれば割安と評価される。 |
計算式 | PBR=株式時価総額/純資産額=株価/BPS(Book-value Per Share) |
※BPS=純資産/発行済株式数 |
・損益計算書損益計算書では、主に次のように検討をつけることが可能です。
営業利益 | |
---|---|
売上高に対して比率が高い | 本業の収益性が高い(儲かっている) |
売上高に対して比率が低い | 本業の収益性が低い(儲かっていない) |
営業利益と親会社株主に帰属する当期純利益 | |
---|---|
営業利益が黒字で、親会社株主に帰属する当期純利益が赤字 | 一時的な損失のためであり、後々親会社株主に帰属する当期純利益が黒字に可能性がある |
営業利益が赤字で、親会社株主に帰属する当期純利益が黒字 | 本業の損失を、本業以外の方法(投資有価証券などの売却)で補填している可能性が大。同じ状態が続くと、親会社株主に帰属する当期純利益が赤字になることもある。 |
合わせて、以下のような指標を求めることもできます。
PER(Price Earnings Ratio) | |
---|---|
概要 | 企業の利益と株価の比率を示す指標。JPXが発表している平均値より上回っていれば株価が割高、下回っていれば割安と評価される。 |
計算式 | PER=株式時価総額/当期純利益=株価/EPS |
※EPS(Earnings Per Share)=当期純利益/発行済株式数の期中平均値 |
EBIT(Earnings Before Interest and Taxes:支払利息・税金差引前利益) | |
---|---|
概要 | 経常的な収益性を示す指標。高ければ収益力が高い企業と見られる。 |
計算式 | EBIT=経常利益+支払利息-受取利息 |
EBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization:支払利息・税金・減価償却・その他償却差引前利益) | |
---|---|
概要 | EBIT同様、経常的な収益性を示す指標。高ければ収益力が高い企業と見られる。減価償却が加算されているため、金利水準や会計基準が異なる企業同士の比較が可能。 |
計算式 | EBITDA=EBIT(経常利益+支払利息-受取利息)+減価償却費 |
・キャッシュフロー計算書キャッシュフロー計算書では、以下のような評価の検討材料が得られます。
営業活動によるキャッシュフロー | |
---|---|
増加傾向にある場合 | 本業の収益性が高い(儲かっている) |
減少傾向、もしくは赤字の場合 | 本業の収益性が低い(儲かっていない) |
投資活動によるキャッシュフロー | |
---|---|
マイナスの値が大きい場合 | 投資活動を積極的に行っている(営業活動によるキャッシュフローより大きい状態が続く場合は、資金不足になる可能性がある) |
マイナスの値が小さい場合 | 投資活動をあまり行っていない |
プラスの場合 | 資産リストラを行った可能性あり |
財務活動によるキャッシュフロー | |
---|---|
プラスの場合 | 資金調達を積極的に行っている |
マイナスの場合 | 債務削減を行っているか、配当や自社株買いで株主還元を行っているケースが一般的 |
また、記載された数値でフリーキャッシュフロー(FCF)が算出できます。
フリーキャッシュフロー | |
---|---|
概要 | 企業の収益性を示す。高いほどに多くの価値を生み出している=経営が安定していると評価される。 |
計算式 | フリーキャッシュフロー=営業活動によるキャッシュフロー+投資活動によるキャッシュフロー |
まとめ
- 企業価値は企業が世の中に価値(キャッシュフロー)を生み出す力を評価したものである。
- 企業価値の評価(バリュエーション)は、M&Aや株主への説明、融資といった様々な場面で活用される。
- 財務三表(賃借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)は、企業価値が読み取れる重要な資料である。
おわりに
企業価値は、企業という組織の存在意義を示す重要な指標です。
この概念を理解しておくと、投資家や金融機関がどのような視点で企業を評価しているのかがつかみやすくなるでしょう。
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