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この記事でわかること

  • WACC(加重平均資本コスト)とは、株主や債権者(金融機関など)から資金を調達する際のコストを平均したものです。
  • WACCは、銀行からの借り入れ利息や社債の金利からなる負債コストと、株主から見た配当金や売買益の期待値からなる株主資本コストの2つから構成されます。
  • WACCは「資金の調達コスト」と「想定される利回り」の2つの側面を持つため、M&Aや経営状態の指標の判断など、さまざまなシーンで使われます。
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はじめに

M&Aにおいて行われる企業価値評価(バリュエーション)で使われる指標のひとつに「WACC(加重平均資本コスト)」というものがあります。

今回は、WACCの基本的な考え方、計算式における利用方法を詳しく解説します。

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1.WACC(加重平均資本コスト)の概要

WACCとは「Weighted Average Cost of Capital」の略称で、訳語では加重平均資本コストとも言われます。

この数字はごく簡単にいうと、「企業が資金を調達する場合にかかるコストの平均値」を指すものです。

そのため、WACCは資金調達の手段に応じて、

①負債コスト(借入や社債などによって資金調達を行う際のコスト)

②株主資本コスト(株式によって資金調達を行う際のコスト)

の2つ(厳密にはこれに加えて実効税率による節税効果)から構成されることになります。

以下それぞれの項目について解説していきます。

①負債コスト≒銀行等からの借り入れ利息

負債コストとは、主に「借入金の支払利息」や「社債の発行費用および支払利息」にかかるコストのことを指す言葉です。

例えば銀行から100円を年間利息3%で借り入れた場合、1年後には103円を返済しなければなりません。

これはつまり、「100円を手にする際に3円(3%)のコストを支払う必要がある」とも言い換えられます。「コスト」という言い方をするのはこうした理由からです。

負債コストは企業の信用力により変動します。

一般的に、事業のリスクが小さいほど負債コストは少なく、事業リスクが大きいほど負債コストは多くなると考えてよいでしょう。リスクの高い事業₌貸したお金を回収できない可能性が高い事業には、貸す側もそれに見合ったハイリターンを求めるからです。

また、金融恐慌などにより資産取引の流動性が低下しているときには、全体的に負債コストは高まる傾向にあります。

②株主資本コスト≒株主の期待収益率

株主資本コストは、株主の「期待収益率」から求められます。平たく言えば、資金提供者である株主に対し、どの程度リターン(配当金や株式の値上がり益)をもたらすことができるのか、という指標が株主資本コストです。

先ほどの銀行の例と同じく、仮に株主資本コストが6%とすると、株主は「株価100円→1年後に株価106円」となることや「6%の配当金が還元されること」を見込んで投資をしているということになります。

つまり企業側からすると、「100円の株を売って資金を調達する際、将来的に6円(または6%の配当金)をコストとして支払う必要がある」と言い換えられるわけです。

株主資本コストの算出にはCAPM(資本資産価格モデル)といったフレームワークが使われますが、銀行の金利と違い、市場の動向など様々な要因で変動するため、厳密に算出することは困難です。

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2.WACCの詳細な計算方法

では実際に、WACCの具体的な計算方法をみていきましょう。

WACCの計算を行う数式は、下記の通りとなります。

WACC₌ D/(D+E) × rD × (1-T) + E/(D+E) × rE

数式内の項目意味
D有利子負債総額
rD負債コスト
T実効税率
E株主資本総額 
rE株主資本コスト

数式だけを見るとイメージしづらいかと思いますので、

この章では実際に計算を行いながら、計算の意味を解説していきましょう。

①モデルケースを使った計算シミュレーション

例として、下記のような企業を仮定してみましょう。

負債の借り入れはひとつの銀行からのみ行い、その他の有利子負債はないものとします。

・モデルケースA社

負債額金利株式時価総額株式期待収益率実効税率
100,0005%400,00010%40%

(単位:千円)

これらの数字をもとに、実際に順を追って計算をしていきます。

まず、借り入れ額は1億円、株式時価総額は4億円ですので、

A社は以下のような比率で資本を調達していることになります。

・資本全体の20% ₌ 100,000/(100,000+400,000) を銀行からの借り入れ
資本全体の80% ₌ 400,000/(100,000+400,000) を株式の発行

この比率に応じて、金利(負債コスト)および株式期待収益率(株主資本コスト)の割合を配分することにより、加重平均を計算することができます。

また加えて、銀行の金利は税法上の損金として扱われ、その金額に応じた節税効果があるため、コストの計算にはそれも加味しなければなりません。

以上を踏まえて計算すると、

WACC ₌ D/(D+E) × rD × (1-T) + E/(D+E) × rE

     100,000/(100,000+400,000)×0.05×(1-0.4)+400,000/(100,000+400,000)×0.1

    ₌ 0.2×0.05×0.6+0.8×0.1

    ₌ 0.006+0.08

    ₌ 0.086

となり、WACCは8.6%と計算できます。

②補足1:有利子負債の定義

有利子負債とは「利息が発生する借入金や社債の総額」です。

理論上は時価を用いますが、時価と簿価に大幅な差が生まれにくいため、簿価を用いた計算が行われることもあります。

また、買掛金や未払金といった利息の発生しない負債は有利子負債には該当しないため、計算には含みません。

③補足2:計算式の税効果について

WACCの計算において、負債コストの算出には節税効果も加味されます。

その理由は先ほど説明した通り、金利の支払いは税法上の損金として認められ、課税所得から減らすことができるからでした。

一方、株主への配当金は税引き後(₌税金を支払った後)の当期純利益から支払われるものであるため、株主資本コストに節税効果は織り込まれません。

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3.WACCが活用されるシーン

こうして計算されるWACCですが、どのような場面で使用されるのでしょうか。

①M&Aにおけるバリュエーション

M&Aの際、買い手(買収元企業)は投資に見合うリターンが得られるかどうかの検証としてバリュエーションを行います。

その代表的な手法として知られるDCF法で、WACCは大きな役割を持っています。

DCF法は大まかにいうと、企業が株主や債権者に還元できる収益(フリーキャッシュフロー・FCFF)を将来にわたって予測し、その合計から企業価値を算出するというもの。

しかし、将来の収益はあくまで予測。さまざまな変化やリスクを見込んだうえで、将来のフリーキャッシュフローが現在の価値になおすとどの程度なのか、割り引いて考えなければなりません。その際の指標として用いられるのがWACCです。

簡単な例として、株主資本コストが10%で現在の株価が100円の場合を考えてみましょう。

株主資本コスト₌期待収益率ですから、このとき将来の収益は下記の通り推移していくと推定することができます。

現在1年後2年後3年後
100110121133.1
100100×(1+0.1)100×(1+0.1)×(1+0.1)100×(1+0.1)×(1+0.1)×(1+0.1)

この推移から逆算すると、以下のように言うこともできるでしょう。

「株主資本コストが10%のとき、2年後に121円となる株式の現在の価値は100円である」

DCF法の場合も同様の考え方が用いられます。

WACCを使って割り引くことにより、企業が将来生み出す価値を、現在から見た価値に換算することができるのです。

②資本投下の判断基準

WACCは同様に、投資家による判断基準や、経営指標としても使われる場合があります。

これまで説明してきた通り、WACCは資金調達のコストであると同時に、株主や金融機関が期待する利回りの平均値としても見ることができます。

つまり、実際の利回りが想定しているWACCを下回っていた場合、その事業には投資をしても期待するリターンが得られない、あるいは想定よりも経営状態が悪くなっているとみなすことができます。

そのためWACCは「投資判断における最低基準」という意味合いで、ハードル・レートと呼ばれることもあります。

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まとめ

WACCという数値は視点によってさまざまな意味合いを持ちます。

企業の経営状態をはかる指標や、資金調達にどのくらいのコストがかかっているのかの把握など、様々に活用できるため、大雑把な仕組みを頭に入れておくとよいでしょう。

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